山を駈ける風になれ’99年12月号

'99 11月29日
島田一志様

お元気ですか、先日インターネットを使用する機会があり、島田さんのHPを拝見させて
頂きました。相変わらず充実した内容でそのエネルギーには驚くばかりです。また「雑記の
部屋」の中に、私のコーナーまで作って頂き恐縮しています。更にHPを通して小著を宣伝
して頂き、「こりゃあ島田さんへの手数料代わりにレポートの内容をもう少し充実させなけ
ればいかんな」なんて家内と冗談を言っています。
 1月3日の新春ツーリング、お誘いありがとうございます。残念ながら例のY2Kの関係で
年末年始は出勤です。来年までと言わずに年内中に北摂、丹波方面の山を登られる予定があれば
連絡下さい。是非一緒に走りましょう。
 今月は子供の小学校の日曜参観、社内旅行、前任部署時代の部下の結婚式に加え、市内一斉
清掃の日なんぞがありまして、走りに制約が多い月となりましたが、それでもしっかりと「走り」、
「登って」きました。

 それと・・・とうとうやってしまいました。事故ったかって?いえいえ、遭遇したのです。
山頂で首吊り死体に。よく家族や友人からは冗談半分に「そんな誰も入らないような山に行って
死体でも見つけたらどうするんだ」と言われることはありましたが、まさか本当に自分が第一
発見者になるとは・・・。110番通報し、近くの交番で詳細説明を行い、現地(途中まで)
へ案内。また、交番に戻って「死体発見の顛末書」を作成。署名、捺印して帰ってきました。
どんないきさつがあったのか知りませんが、亡くなった方のご冥福を祈ると共に、一日も
早く安否を気遣っておられる家族の元へ連絡がつくことを願うばかりです。

 さて、近況報告です。

11月6日(土) 山南/天狗山〜恵日寺(2.5万図 谷川)
 今年はまだ本格的な霧の中を走ったことがない。今日は、と覚悟したが、夜明け前の空は
どんよりとしている。―――遭わずに済むかもしれない―――半ば期待しながら自宅を出発。
6時05分。目指すは山南町の天狗山。高山に登る度に気になっていた山だ。高山林道終点まで
レーサーで登り、けやき峠経由で頂上をピストンすることに。篠山盆地で深い霧に遭ったが、
丹波大山から川代渓谷に入る頃には青空に。8時25分谷川着。水分補給の後、高山林道分岐へ。
7月に来た時工事中だった林道も舗装完了し、地蔵の森公園として小綺麗に整備されている。
9時10分けやき峠に着く。ここからは私にとって未知のルートだ。初め植林帯の中を行くが、
2つめのコブを越す頃には雑木林の中の稜線漫歩に変わる。所々〔辰〕マークの石標が埋め込ま
れている稜線は、全般にしっかりとした切り開きが続いている。けやき峠から30分弱で山頂すぐ
南のCa.540mピークに着く。西側に大きく開けたビューポイントがあり、千が峰から笠形山
までよく見える。同ピークを越えると最後の登り。突然東斜面に眺望が開け、ススキのヤブで道が
判然としなくなる。強引にヤブをかきわけて登り切ればそこは三等三角点のある頂上(9時42分)。
横には高さ1m少しの岩がある。西側に雑木が迫るせまい頂上だが展望はいい。篠山の町はまだ
雲海の底に眠っている。岩の上から下界を見下ろせばまさに天狗の気分。ゆっくり休んだ後、
慧日寺へ。写真を撮ろうとカメラを引っぱり出したところで山頂でフィルムを摂りきってしまった
ことを思い出した。(本日の走行距離138km)

天狗山
天狗山 山頂南Ca.540m峰から
万松山方面の展望

11月14日(日) 大ケ谷(2.5万図 宮田)  12日〜13日と社内旅行だった為まだ体が重い。しかし、天気予報は快晴、紅葉真っ盛りと来れば、 走りださずにはいられない。というわけで9月に途中断念した大ケ谷を下板井から最短コースで登り、 市内の紅葉の名所、洞光寺へのんびりツーリングをすることに。6時20分出発。R176を北上、 篠山盆地は今朝も深い霧だ。宮田から下板井に入り、舞鶴道の下をくぐって8時34分興法寺谷池をいう 小さなため池に到着。青空に紅葉が映え美しい。池の北側にある登山口には「丹波森の径 大ケ谷⇒」 の標識があるが、いきなり木橋がこわれて散らばり、そこへ杉の木が倒れているという凄まじい状況で どこを辿ったらいいのかわかりにくいが、深くえぐれた谷沿いに歩き、谷が浅くなったところで反対側に 登り返せば踏み跡が現れる。この道を見つけるのに5分ばかりかかったが、あとは歩き慣れた人なら 簡単に踏み跡を辿れる。15分ほどで丹南西紀町界に。そこから尾根沿いに10分ほど登れば4等 三角点のある山頂に着く。西側に展望が開け、紅葉の黒頭峰、夏栗山が美しい。東側も雑木越しに 雲海が白く光っている。  ここまではよかった。三角点のある場所は狭いので2,3歩戻った小広いところでサンドイッチを 食べようと振り向いた瞬間、首吊死体を発見。あまりに見事に白骨化しているので、一瞬悪い悪戯かと 思ったが、こんな誰も来ないような山の上に骸骨を吊す人間もいないだろう。とすれば本物?・・・ 詳しく書くと生々しくなるので書きませんが、とにかくサンドイッチをウエストバッグの中に戻して 下山することに。一番近い交番はどこだっけ、こんな低山の遺体は「おロクさん」とは呼ばないのだ ろうな等と考えながら尾根筋のヤブを下っていて2回ほどコースアウト。本当に迷いやすい山だ。 20分ほどで下山、池で魚をすくっていた人に携帯電話を借りて110番通報し、宮田にある交番へ。 待つこと40分、鑑識、写真班を含め5人の警官到着。挨拶もそこそこに地形図と照らし合わせながら 大ケ谷への道を説明するが、途中まででいいから案内してくれという。そこでハッキリとした踏み跡 のあるところまで案内することに。警察の車に同乗し池まで戻り、現場確認役の3人を案内して山に 入る。前述の凄まじい登り口に早くも不安そうな3人。200mも進んでいないのに振り返ると3人 は遙か後ろだ。無事下りてこれるでしょうかと弱気な3人にルート概略を説明して別れ、池のところで 待っていた2人と交番に戻る。ここで「死体発見の顛末書」を作成して約時間ぶりに解放される。 とはいえもう12時前、すっかり予定が狂いそのまま家路に。交番で顛末書を作成している間に 現場到着の連絡は入ってこなかった。思わずヤブの中でもがいている3人の姿を想像してしまった。 (本日の走行距離103km)
大ケ谷
大ケ谷山頂より東南方面
宮田付近の雲海

11月20日(土) 氷上/向山連山 (2.5万図 柏原)  先週の「事件」があっただけに今日は山へ行かないだろうと家族は思っていたらしいが、山は非日常 の世界、何が起こっても事実を受け止めるだけだ。6時20分、かねて予定の氷上の向山に向けて出発。 今日は山頂でサンドイッチを食べたい。夜間放射冷却が強かったことから、道場あたりで早くも霧、 8時54分水分れ公園の駐車場に着く。向山連山ハイキングコースの案内板が立っている。登山道は 整備されていそうだ。8時57分、観音堂登山口にレーサーを停め歩き始める。イノシシ除けの柵の 扉を開けて登る道は明るい雑木の中を行く落ち葉の絨毯コース、今日はいい山歩きができそうだ。 15分ほどで滝山古墳のある二ノ山、更に10分ほど登ると「岩座展望所」と書かれた露岩に出る。 「ウワーツ」思わず声が・・・。見事な雲海が眼下に広がっている。「対岸」の島影は白山、篠が峰。 繊細な白い海・・・。自身、これまでに見た雲海の中で最高の眺めだ。カメラに収めようとするが、 景色が大きすぎる。存分に堪能したところでコースに戻る。三ノ山、四ノ山を越えるといよいよ 向山連山の核心部。稜線漫歩も南向きに変わる。深坂北峰手前の登りで、春日町方面のビューポイント に出る。こちらは北アなどでよく見かける積雲状の雲海が広がっている。右も左も雲海が広がる ここはまさに雲上の散策路、低山歩きの醍醐味ここに極まれり、だ。10時05分、突然目の前に 三等三角点が現れる。地形図で事前にわかっていたとはいえ、本当に中途半端なところにある三角点だ。 1枚写真を撮って「通過」。平坦なためグングン歩ける。ドウダンツツジの林の中を行く。10時16分、 五ノ山到着。連山の最高地点、591mと記されている。木漏れ日の中に陽だまりができている。 弁当タイムだ。途中で買ったミルクティーとサンドイッチで心豊かなひとときを楽しむ。小憩の後 更に南に歩を進める。ちょっとした岩峰を登り返せば蛙子尾根をいうヤセ尾根に。何と読むのだろうと 思っていたらこんもりとしたコブの上に「蛙子峯」の名が。「カエルゴ」とカナが振ってある。 植林も現れだし、ルートも西へ振り始める。清水山、譲葉山への分岐をそれぞれ見送り直進すれば 珪石山。鉱山跡がある。見所の多い山だ。10時50分、あとは水分れ公園目指して一気の下りが 続く。逆ルートをとらなくてよかった。25分ほど駆け下ると水分れ公園。先週の分を補って余りある 充実した山行に満足しながら観音堂へ戻ってみれば、お堂にたてかけたレーサーの回りに手押し車が 所狭しと「駐車」。おばあさん達のインタビュー?攻めに遭いながら向山連山を後にした。 (本日の走行距離139km) 11月28日(日) 南山 (2.5万図 宝塚)  朝、いつもの休日のように起きて朝食を摂ったが今一つ気合が入らない。急に寒くなったからか? イヤイヤ昨日4時間にも及ぶ結婚披露宴(式からだと5時間)に出席した疲れが残っているようだ。 最近人の多いところに行くとよく疲れる。100km、200km走っても何ともないのに・・・。 というわけで急遽、六甲の南山に行き先を変更することに。南山は赤松滋氏の『北摂の山々』にその名が 見える山で、蓬莱峡を谷を挟んで北側に対峙する山である(大阪低山跋渉会では点名「阪山」の名で 97年1月に登っている)。登路は名塩南台の南奥の造成地から。工事用フェンスの破損部から入り、 間近に見える鉄塔めがけて造成地の土手を登れば巡視路と思われる踏跡がついている。南山山頂に向けて ジグザグに高度を稼ぐ道だが、登るほどに明快な道になる。bQ7,28の火の用心の標識に従って 行けば、シダの繁る雑木林からアカマツを中心とした林の中を行く道に。傾斜もゆるくなってきたところで、 bQ9の鉄塔に出る。大峰山、中山連山の眺めがいい。ここからの道は西へ。ハイキングコースのように 整備された道で、西宮高原ゴルフ場のほうへ続いている。その最高地点あたりで左(南)に折れる。 よく見ると踏跡がついている。50mほど進めば三等三角点に着く。登り口から約25分ほどだ。 南側に切り開きがあり、蓬莱峡を眼下に臨むことができる。暫し展望を楽しんだあと、元来た道を 戻って下山。名塩南台の北端にある187.4mの四等三角点に立ち寄った後宝塚に戻り、自宅周辺を のんびりとサイクリングした。(本日の走行距離46km) と、以上のようなところです。 1999.11.29


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