山を駈ける風になれ2000年5月号

2000 4月 1日
島田一志様

お元気ですか。今月はいいMTB山行きができましたか?

 カヤマチ山行って来ました。葛野峠経由で山頂へ行くコースの難易度は大したことない、
とおっしゃっていましたが、どうしてどうして・・・・峠手前の急坂はカベのようでした。
宝塚からだと達心寺まで片道約80km、私の力では日帰り縦走は無理のようです。

ヤマケイ5月号の読者アンケート集計で「好きな登山家」の3位に加藤文太郎、「好きな
山の本」の2位に『孤高の人』、3位に『単独行』が入っていましたが、改めて加藤文太郎
の根強い人気に驚いた次第。そんなわけで今行き帰りの電車の中で『孤高の人』を読んでいます。
そして、これを読み終えたところで昔読んだ『単独行』をもう一度読んでみようかと思っています。

 ところで、今月はハードな月になりました(仕事が)。おかげで、充実したMTB山行きと
まではいきませんでしたが、それなりに走ることができたと思っています。いくら疲れていても、
自転車で一汗かけば、気分スッキリです。

 さて、近況報告です。

4月2日(日) 氷上・青垣/カヤマチ山(2.5万図 大名草)
 4月です。サイクリングの季節到来です。ロードも走りたいし、新緑の山も駆け回りたい。
休みが足りなく感じる季節がやってきました。まず第1弾は氷上・青垣町界のカヤマチ山。
走り応え、登り応え共にありそう。午前6時にレーサーで出発、R176を一路北上する。
期末の仕事疲れか序盤若干重かった身体も徐々にほぐれ、8時25分に柏原を通過、市辺
(氷上町)のローソンでおにぎりを買って9時05分に達心寺に到着。ここで若干時間に余裕が
あったので三方の大桂を見物に寄り道。想像していたほど大きくなくてちょっと拍子抜け。

三方の大桂
三方の大桂

暫く休んだ後にまた元来た道を戻り、9時30分清住谷川沿いの林道起点にレーサーをデポして 歩き始める。何やら機械の音が騒々しい。大きなトラックが2台入って切り出した木の積み込み 作業をやっている。「寺の坊跡」と書かれた新しい石標を右手に、砂防ダムを左手に、巨大な カエルのように見える高座石を右手に見ながら歩を進める。今日はヒキガエルの姿は無い。 清住谷川は水量が多く、清冽な流れだ。小さいが姿のいい滝もある。10時林道分岐、同10分 林道終点に着く。確かに左右に踏み跡があるが、昨日島田さんから頂いた縦走レポートのお陰で ノー・プロブレム。植林帯の中に続く道はやがて消え、葛野峠への急な斜面登りに変わる。 地形図に破線はついているが、道など無い。峠直前は壁のようだ。3週間前、この急斜面を MTB担いで登った3人は尋常じゃない。10時28分、喘ぎながら葛野峠(585m)に到着。 反対側も急激に下っており、「峠」というよりも吊尾根の乢といったほうがふさわしいように 思える。南の方須張山の方にも踏み跡が続いている。カヤマチ山は北だ。
葛野峠
葛野峠

 小憩の後、再び急斜面の登りと格闘する。ただ山頂まであと僅かなのと、右手には雑木林が 広がっているのと、振り返れば方須張山が見えるのとで、幾分救われる思いがする。 ちょっとした岩場を越え、平坦な道に変わればもう山頂。10時50分、二等三角点の埋まる 山頂に到着する。748.3m。登頂標の付けられた山頂は、あいにく展望には恵まれないが、 シャクナゲの木々に囲まれており、シーズン期にはさぞかし見事だろうと思わせるものがある。 大柿さんのプレートもしっかり掛かっている。私が山頂に着くのを待っていたかのように、 薄日が差してきた。静かな山頂で弁当タイムにする。木々の匂いがブレンドされるからなのか、 いつもながらおいしい。本当ならば、ここから安全山目指して縦走を試みたいが、私の体力では 縦走を終えて、家まで走って帰るまでに夜になってしまう。20分ほど休み、下山の途に着く。 激下りなので、以外と早い。葛野峠の急斜面も軽やかに駆け下る。途中立ち止まっていろいろ 写真を撮りながらも山頂から50分少々で林道起点まで下りきってしまった。  カヤマチ山から下る道すがら、この山の縦走は日帰りでは無理だが、達心寺近くの町営の 宿泊施設を利用すればノー・プロブレムであることを思い当たった。 (本日の走行距離163km) 4月8日(土) 園部・篠山/岩坂山(2.5万図 埴生)  岩坂山は園部と篠山を分ける天引峠の北に位置する標高446mの山。地形図上は無名峰だが、 寛政11年「丹波国図」には、その名前がしっかりと記されている。今は何の変哲もない 雑木林であることは、慶佐次氏の『兵庫丹波の山』を読んで知ってはいたが、峠から北に 標高400m前後で続く尾根筋に夢の小径を求めて試走することに。  朝から強い北風が吹き荒れる中を向かい風に押し戻されそうになりながら、岩坂山より 標高の高い峠を2つ(泉郷峠、天王峠)越えて8地37分天王峠に着く。頭上を南北に 高圧線が走っている。関電の巡視路を示す「火の用心」の目印はないが、植林帯の中に 分け入り、少し篠山側に戻ったところに擬木階段を見つけ登る。アカマツを中心とした雑木の 中を5分ほど登ると尾根筋に出る。予想通り快適なシングルトラックだ。Ca.420ピークを過ぎ、 次のCa440ピークの鉄塔あたりにかけては多紀連山が眺められるビューポイントも現れる。 一旦下って登り返せば、左に岩坂山の分岐、9時04分山頂に着く。本当に何もない山頂で 展望はない。人が登った痕跡をさがしていると木の幹に「赤シャツ探検隊」と消えかかった 文字を発見。先ほどの分岐に戻れば更に小径は北に続いている。今日は、春の丹波路をゆっくり 走るつもりだったので、一旦展望のある稜線まで戻り、春霞に煙る山々を眺めながら、 おにぎりをほお張り至福の時間を過ごした。 (本日の走行距離110km)
岩坂山
岩坂山山頂

4月16日(日) 山南/常勝寺お花見(2.5万図 谷川)  連日深夜に及ぶ残業に加え、昨日も休日返上で出勤、帰宅は午後11時30分とクタクタ。 しかし、自転車に乗らないと余計にストレスがたまりそうで、テンロク縦走の予定を変更して、 表題のコースを走ることに。従って今日もロードだ。  ハイな状態が続いているからか、5時40分に目が覚め、いつもと変わらぬ5時06分に スタート。本当に谷川まで走れるだろうか。その時はその時、と気持ちゆっくり目に走り出せば、 意外に早いタイムで赤坂峠をクリア。三田を過ぎた頃から吹き始めた向かい風にも、何とかペースを 維持しながら走る。篠山盆地に入るとポツポツ雨が・・・晴れの予報だったから雨対策の準備なし。 その内上がるだろうと走り続けるが、川代渓谷に入った辺りから本格的な降りに。水しぶきを浴び ながら8時25分谷川に着く。駅舎で暫く雨宿り。少し小降りになってきたところで常勝寺まで走る。  大阪市内では桜は殆ど散ってしまっているが、さすがに丹波の山里は春の訪れが遅い。常勝寺の 桜も今が盛りだ。ここの桜は高坐神社に向かう途中の道から遠望するのがよい。緑濃い竹林山の山裾を ピンク色に染め上げ、実際の本数よりも豪華に見える。山門をくぐり、一直線に続く石段をゆっくり 上る。巨杉の根元の石垣にはショウジョウバカマが咲いている。春だ。その内、雨も上がり青空が 広がってきた。今日のテーマは桜。高坐神社に寄り、慧日寺、川代公園と回る。丹波大山からは、 前半悩まされた風に乗り、帰ってみれば今年一番の快走を記録した。(本日の走行距離125km)
竹林山、常勝寺 山門
竹林山 常勝寺桜満開の常勝寺山門

4月22日(土) 三田・篠山/柏野山 (2.5万図 篠山)  先週のオンロード・ツーリングのテーマは桜であったが、今週のMTBツーリングのテーマは 「ツツジ」、正確に言うと「コバノミツバツツジ」である。個人的な好みで言うと、人為的な匂いの するサクラより数段好きだ。新緑に彩られ始めた雑木林を紫色に染め上げる様は、まさに里山の芸術 作品である。今日目指す柏野山から海見山周辺はこのツツジが多い。昨年は花の時季が終わった直後に 残念な思いをした記憶がある。  相変わらず、連日深夜に及ぶ残業は続いている。先週はハイな状態で快走できたが、2週間も続けば そうはいかない。6時ジャストに出発。やはり体は重い。が、それなりに快走、7時35分に旧丹南町 古森に着く。ここから、村の中を抜け、地形図の破線の道を辿って行くことになるが、実際はかなり 奥まで巾のある林道が続いている。狙っていた通りコバノミツバツツジのトンネルが私を出迎えてくれる。  海見山への分岐を見送り10分ほど登ると、道はいよいよ荒れ出す。沢沿いに付いていた道は、その うち沢筋そのものを登るルートに変わる。昨日の雨で水量も多く、ぬかるんでいる上にガレており、 足を乗せるとガラガラと崩れていく。Ca400m地点を過ぎると、更に傾斜は急になり、倒木と雑木ヤブと ガレ場の沢登りで悪戦苦闘が続く。ルート上にはごていねいににも白いビニールヒモが5〜10m間隔で ぶら下がっているが、そんなことしてもらわなくても他に進むべき箇所はない。滑ったり転んだりしながら、 500m地点を通過、あと標高差にして20m少々といったところで、谷の源頭部に付く。ヤブと急斜面で「押し」 ても「担いで」も登れない。先に自分だけが登り、MTBを引っ張り上げることに。と、つかんでいた木が 根っこから抜けて、あわや真っ逆さまに....。苦労の末にMTB引っ張り上げ作戦は成功したが、足場が 悪い上にヤブに阻まれて進退極まってしまう。あとわずかだというのに...。残念だが断念せざるを得ない ようだ。MTBをその場に残してヤブの急斜面をよじ登ればCa.550ピークの南端にひょっこり出た。 (8時52分)。今までの急斜面がうそのような穏やかな地形に変わる。地形図にはないが、南に向かって 小径が続いている。どうやら海見山鞍部につながる道らしい。当初計画では地形図の破線を辿って付近を 周回する予定であったが、MTBを残して来たため、元来た道を戻らざるを得ない。取り敢えず柏野山に 行くことに。Ca550ピークを過ぎて道が東にカーブする所で大柿さんのプレートを発見。どこまでも凄い 人だ。大柿さんはどこから登ってきたのだろう。あの源頭部を登ったのだろうか。9時01分、高低差も 殆どなく難なく柏野山山頂に着く。赤い境界杭と石の界標が埋まっている。展望はない。北に向かって 道が続いている。北麓を通る舞鶴道を行く車の音が聞こえてくる。この周辺は面白い道がたくさんありそうだ。 その為にも次回は海見山鞍部から登ってみることにしよう。小憩の後、再びCa550ピーク南端まで戻り、 ひどい急斜面を下り、MTBを拾って、何度も滑り落ちながら9時55分古森に下り着く。もうすっかり エネルギーを使い果たし、ドロドロのヘロヘロ状態で帰宅の途についた。(本日の走行距離77km) 4月29日(土) 山南/大岩山、立石山 (2.5万図 柏原)  「大岩の目立つ山」として、多田繁次氏の著書に紹介されている山南町の立石山と大岩山を目指す。 多田氏の本では301.0mの三角点がある山を大岩山と呼んでいるが、慶佐次氏の『兵庫丹波の山』には 三角点のあるのが立石山、鞍部を隔てて北東側にあるのが大岩山と記されている。MTBで走れそうな 山ではないので、ロードで春の氷上を周回しながら行くことに。  朝から快晴、夜間冷え込んだのだろう、道場と篠山盆地で霧に遭う。この時期にしては珍しい。鐘ヶ坂 トンネルを越えて柏原に入り、萱刈峠を越えて石戸山山系をグルっと周りこむようにして8時35分、 南中の集落に着く。植林が成長したからか、大岩は見えない。南麓の一宮神社にロードをデポして 南中林道を歩く。「植林帯の切れ目から鞍部に抜ける」ルートを探すが見つからない。行き過ぎたよう なので逆戻りしながら歩いているとそれらしき踏み跡発見。植林帯の中を鞍部の方に向けてカーブしながら 踏み跡は続いている。5分ほど登ったところで木の枝に茶色のリボンが下がっているところに着いた。 ここで道は二手に分かれているように見える。右はヤブの中に消えてしまいそうな道、左はガケ崩れで できた倒木の道。「道」ではないが、歩き易そうなので左のルートを登ることに。その内、密生する シダの下部がパックリ開いた崩落場所に着く。かなり南に回り込んでしまったようだ。あとは強引に 雑木ヤブをかきわけてよじのぼれば、立石山山頂のすぐ東側の尾根に出た。尾根筋には今までの苦労が ウソのような小径が続いている。9時35分、小径を辿って難なくピークに立つ。立石山の最高部には 3〜4個の巨岩が屹立している。巨岩の上に立てば、360度の大展望。東には巨大な石戸山山系、西には 篠が峰、岩屋山、北にかけては白山、弘浪山、南には石金山に妙見山までハッキリと見える。三等三角点が あるはずと周囲を見回すが見つからない。いずれにしてもここが本当のピークだ。展望は申し分ないが、 狭くて落ちそうなので、少し東に寄ったところにある大きな岩の上で軽食休憩。ごろんと横になる。  小憩の後、鞍部を下って大岩山へ登り返す。立石山からは約10分の距離だ。背の低いマツが岩山の 上に生えている。ここも展望は抜群で、新緑の立石山がきれいに見える。山中に突き出ている大岩は眼下に 見える。ゴミひとつない心おどるような美しさだ。ここでも岩の上に寝そべって暫し休憩、再び鞍部に戻り 雑木ヤブの中を強引に下って行く。途中から運良く倒木の谷に合流、あっさりと南中林道に降り立った。 結局鞍部に登る道は無いようであるが、大岩山から尾根通しには踏み跡が続いており、未知の巨岩を巡り ながら林道の最奥部に出られるかも知れない。帰路は谷川から川代渓谷回りで丹波大山へ。今年序盤の 鈍足ペースは何だったのだろうというような記録的な快走で、向かい風を突っ切って自宅に帰り着いた。 (本日の走行距離104km)
大岩 大岩
立石山頂上直下のヤブ越しに立石山頂上から見た大岩

と、以上のようなところです。 さて、4月9日『ぶんぶん』編集部と宝塚ホテルで打ち合わせを行いました。記者の方は活発な若いミセスで、 カメラマン役のご主人共々、マウンテンバイクに乗って来られ、取材が終わり次第、私のおすすめするコースを 試走するつもりとの由(お二人とも昨年本を出した時に取材を受けたので顔なじみ)。かなり気合いが入っていて 充実した打ち合わせができました。また、島田さんのHPに私のツーレポを紹介して頂いているのもご存じで、 島田さんの精力的な活躍ぶりにも感心していらっしゃいました。どんな形になるのか、どんなコースが採用される のか、楽しみです。5月上旬に発行予定です。手元に届き次第、1部お送りします。 また、石金山の三角点等級の件ですが、慶佐次先生に連絡したところ、偶然にもヤマケイの取材の関係で同山を 訪れる予定があるので確認してきます、とのことでした。 それでは。 2000.5.1

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