山を駈ける風になれ2007年11月号
2007年10月6日(土)滝野/光明寺~五峰山(2.5万図 西脇)
播磨高野の別名を持つ滝野(現加東市)の光明寺から山号にもなっている五峰山を訪ねる。もう数年前から
温めていたプランである。近くの角尾山、引尾山と組み合わせれば充実した山歩きが出来そうだが、時間と
体力に余裕が無いので簡単山歩きに留めたい。
午前5時39分、薄暗い中をロードで出発する。秋晴れの絶好のツーリング日和が期待できそうな気配がす
る。出発していきなり越える赤坂峠は気温15℃、半袖ジャージでは少し肌寒く感じるが、2週間前まで2
4℃あったことを考えると、体力の消耗度合いが少なく快適である。
調子に乗ってスピードアップ、天上橋の交差点を50km/hで通過すると、R176を一路北上する。ダ
イレクトに向かえば片道50km弱の距離である。それではせっかくの秋晴れの下のツーリングを楽しめな
い。丹波大山から谷川周りで大回りして滝野へ南下するルートをとる。
谷川方面に向かう県道は長い間通行止めだったが、最近ようやく走れるようになった。随分風景が変わった
な、ときょろきょろしながら川代渓谷沿いの道を下り谷川駅へ(7時50分)。
駅前の自販機で水分調達、喉を潤してサドルにまたがる。出発してすぐに前を通過するパルプ工場から吐き
出される煙の臭いがいつもより鼻を刺激する。この刺激臭から逃れると、あとは加古川線沿いを南下する快
適なサイクリング。北東の強い風にも押されラクちん走行のうちに西脇市内へ。
国道沿いのコンビニで食料補給、いつも適当に走って市内を迷走するので、今日は地形図でしっかり目的地
を確認、播磨中央公園に到着する(9時05分)。来週の土日はサイクルロード・レースが開催されるよう
だ。鉢合わせせずによかった。
さて目的地はすぐそこである。公園の真中を通る道を右折し、光明寺に向かう。いきなり急坂と向い風の試
練、クリアしたと思ったら駐車場への本格的な上りが始まる。辛い上りも10分の辛抱で駐車場に着く
(9時15分)。
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駐車場 | 大慈院 |
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境内へ入る石門の横にある案内板を読み、参道を歩き始める。地蔵堂、毘沙門堂、大慈院、二重塔・・・播
磨高野の名に違わぬ堂々たる佇まいである。ここもまた播州、丹波の各地に名を残す法道仙人が開いたとい
う。
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仁王門 | 本堂 |
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仁王門をくぐり文殊堂、鎮守社を右手に見て、朝の勤行の声が聞こえる常行堂の横を通り、本堂に着く。裏
手に回って山の中を踏み分けていくと光明寺合戦(この光明寺を中心とする一帯で足利尊氏と弟直義が戦っ
た)を模したものか、本陣址にものものしい戦構えがしつらえてある。
どうも変なところを歩いている。地形図では尾根の上を破線が通っているが、実際は少し南側に下がったと
ころに遊歩道が付いている。軌道修正して遊歩道に戻り、まっすぐ西に向かう。ほとんどアップダウンの無
い極楽MTB道である。
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MTB向きの極楽道やね | 五峰山山頂 |
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すぐに分岐が現れる(9時37分)。左手「三角点へ」と書かれている方向へ。何も考えなくても三角点の
埋まる五峰山山頂だ(9時40分)。標高258.4m。2等三角点の埋まる山頂は雑木に囲まれて展望は
無い。五峰山は正確には宿尾、明星が辻、経の尾、大岩、弥木場の5つの峰の総称。特定の山を指すもので
はない。
分岐に戻り、高倉から奥ノ谷コースの分岐まで歩く。時間があれば角尾山まで歩きたいところだが、ここで
ターンして見晴台に立ち寄り駐車場へ戻る(10時23分)。
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見晴らし展望台からの眺め |
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帰路は殆ど向い風。おまけに気温が28℃まで上がり、手強い50km弱の道のりとなった。
(本日の走行距離 135km)
2007年10月21日(日)三木/三木鉄道沿線を走る(2.5万図 三木)
秋晴れの1日、東播の水田地帯を静かに走る三木鉄道沿線を訪ねてツーリングに出る。来春廃止が決まり、全
国から鉄道ファンが惜しんで訪れているという。私自身は鉄道ファンでもなく、三木鉄道のレールバスには一
度も乗ったことはない。
しかし、旧国鉄三木線には子供の頃の思い出が沢山詰まっている。懐かしい駅舎や線路が無くなってしまう前
にこの目に焼き付けておきたい。
午前5時55分自宅をロードで出発する。この秋一番の冷え込みとかで、赤坂峠の気温は摂氏6℃。1ヶ月前
熱帯夜明けのうだるような空気の中を汗流しながら坂道を上ったことが、まるで遠い昔のように感じられる。
おまけに西寄りの風が強く、最近では記録的に遅い速度で赤坂峠を越え、そのままペースが上がらぬまま向い
風に抗って八田、淡河と通過、三木市内でちょっと道を間違えるハプニングなどがあって7時37分、三木鉄
道の起点、三木駅に着く。
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三木駅舎 | 三木駅ホームから別所方面 |
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駅前はすっかり変わり、40年前の記憶を引き出すものはないが、駅舎は確かに記憶の中にある駅舎である。
大正6年に建てられたもので駅の入口の張り出した屋根などに大正ロマンを感じる。駅舎の中に入ると昔と変
わらぬ待合室。一眼レフを携えた鉄道マニアと思しき男性がレールバスの発車を待っていた。
私事で恐縮だが、祖父母の家はこの旧国鉄三木線沿線にある(もしくはあった)。そんなわけで子供の頃は夏
休みになると祖父母の家へ遊びに行き、1両だけのディーゼルカーに乗って三木の街へ連れていってもらった
ものである。
当時、1杯30円だったか40円だったかのカキ氷を、食べに連れていってもらうのが楽しみだった。田舎に
帰ると「町」は三木に出るか、加古川に出るかしないと無かったのである。
さて、ここでばかり時間を費やすわけにもいかない。次に旧三木線の沿線を一望できるところを求めて沿線の
最高峰、正法寺山に向かう。
少し戻って福有橋を渡り、神戸電鉄三木駅の前をとおり、別所町和田方面へ向かう。小和田神社にもついでに
寄ってみることにする。手持ちの地形図は山陽自動車道が走る前のものなので、随分違っている。地形図には
載っていないが、簡易舗装路が山の北側を巻くようにして通っており、難無く小和田神社の本殿の横に出るこ
とができる(8時07分)。
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神戸電鉄三木駅 | 小和田神社 |
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南側から石段が上がってきている。こちらが正規ルートなのだろう。朝の空気が清清しい静寂に包まれた本殿
を後に、正法寺山に向かう。
山陽道の下を抜けて一旦小野市側に降り、美嚢川橋の手前を左折、アンテナの林立する山頂に至る簡易舗装路
を上ること1.3kmで正法寺山山頂に着く(8時32分)。
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正法寺山山頂 |
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アンテナ施設のフェンスの脇に赤く塗られた三
角点が埋まっている。僅かに標高152.2mだが、この沿線の最高峰であることには間違いはない。
ただ、残念なことに樹幹越しに麓の風景は見えるものの、期待した眺望は得られず、早々に山を下りてもう一
方の起点である厄神駅に向かう。
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厄神駅 |
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厄神駅のある船町はかつて加古川水運の拠点の一つであり、木材の集散場であったところである。その関係で
隣り村の国包(くにかね)には建具屋が多い。国包、更に隣り村の宗佐(そうさ)には家業が建具屋、木工店
を営んでいた同級生がいた。
蛇足ながら厄神駅は開業当初は国包という名前であったそうだ。今の国包駅が出来るに及び、名前を厄神駅に
改めたと聞いたことがある。厄神駅は新しい駅舎に変わっており、昔三木線の列車に乗り換えるためにギシギ
シ音のする木製の跨線橋を歩いたあの面影はない。早々に国包駅に向かう。自転車でわずか2分で国包に着く
(8時57分)。
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国包駅 |
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このコンクリートで出来た駅舎は、昭和50年代に建替えられたものと記憶している。公衆便所のような形を
した駅舎は当時から町の風景とミスマッチだったが、30年経った今もなお中途半端な印象である。駅の南側
に広がるのどかな風景は昔と変わらない。
次に石野駅に向かう。三木鉄道沿線を訪ねるツーリングだが、私の訪ねたいのはあくまでも旧国鉄三木線当時
の面影。国包の次は石野、そして別所、終点三木である。
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石野駅駅舎 |
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石野駅は昔のままの風情を残している(9時07分)。このホームから何度ディーゼルカーに乗ったことだろ
う。ホームから線路を挟んで向こう側に島式ホームの跡が残っている。まだSLが走っていた当時は貨物の引
き込み線があった名残である。
屋根が瓦からスレートに変わった他は、外観は40年前と変わっていない。そもそもこの駅舎がいつ建てられ
たものかは知らないが恐らく戦後であろう。
違っているのは、切符を売っていた窓口が無くなり、駅員が立っていた鉄製の改札スペースが無くなったこと、
そして駅長室が封鎖されていることである。ある冬の寒い日に駅長室に入れてもらい、ダルマストーブにあた
りながら祖母と列車の到着を待った記憶がある。
次に別所駅に向かう。子どもの頃の記憶では石野駅と別所駅の間が一番長かったと記憶している。確かこの辺
りだったが、と細い道を覗き込めば、どんぴしゃ正解、別所駅の駅舎の前に着く(9時15分)。線路と並行
に走る県道の走行距離は2.7km。確かに一番長い。
子供の頃、この線路の上を三木まで歩いて行ったことがある。なにしろ昭和50年代には、3時間に1本しか
列車がない時間帯があった。当然やってはいけないことだが、今のように横を走る県道も無く、みんなふつう
に線路の上を歩いていたものである。どこまでも見渡せる水田地帯だから、列車が近づいてくるのはよく見え
ていた。
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別所駅9:17発厄神行き列車が出る | 別所駅舎 |
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駅舎をカメラに収めているとちょうど9時17分発厄神行きのレールバスがやってきた。発車するレールバス
カメラに収める。見送った後、線路の上に降りてホームの写真を撮る。何か鉄道少年みたいだな。何年ぶりだ
ろう、線路の上に下りたのは。
ここだから出来る。40年前と同じである。でも、あと半年経てば線路を走るレールバスの姿は消え、やがて
線路も無くなってしまう。
さてもう一度三木駅に寄ってから帰ろう。
(本日の走行距離 111km)
織田(おりた)さんへのメールはbabrx800@jttk.zaq.ne.jpまで・・・。
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