山を駈ける風になれ2008年 9月号

 
2008年8月2日(土)氷上/御油神野神社折り返し(2.5万図 黒井)
夏休み中に1泊ツーリングを計画中。計画もいいが足慣らしも必要。最近は暑さにかまけて100km程度の軽
い走りしかしていなかったので、久しぶりにやや長めのコースでトレーニングをする。

午前5時20分ロードで出発。幸いなことに曇。曇っている間にどれだけ距離が稼げるかというところだが、蒸
し暑い。赤坂峠を越えるところで既に汗だくである。いつもは涼しい筈の三田盆地も気温24℃と夜間の冷え込
みはなかったようで、それでもやや追い風が幸いし、7時29分柏原駅前に着く。
いつも軽食補給をしていた駅前のコンビニが潰れて違う店に変わっている。譲葉山には重たい雲がかかっていて
暫くはカン照りにはならない様子。足も軽やかに回っていることだし、伊佐の方にあった店内で食事ができるコ
ンビニまで走ることに決める。

稲継の交差点から県道7号を北上する。ますます雲が厚くなってくる。暑さ慣らしのトレーニングにならないが、
湿度の高さには辟易する。“浅山一伝斎 兵法修行の地 独鈷の滝”の標識に思わず滝を浴びたくなるも、冷房
の効いた店内での軽食を楽しみに走り続けると・・・無い。
これまた潰れている。場所的にはあまりよくなかったが、結構ショック。こうなると当面の課題は自販機を探す
ことだが、こういう時に限って現れない。本日の折り返し点、県道109号合流ポイントが現れ、御油の集落に
入って1台だけあった自販機で喉を潤す(8時01分)。
そろそろこの辺で折り返すか(南御油)

せっかくここまで来たのだからと集落の奥にある神野神社を訪ねる。小さな本殿しかないが、なかなかの風趣溢 れる神社である。寛平年間(890年代)に創建された神社で、元は今の円通寺があった山中にあったらしい。 杮(こけら)葺の一間社流造で、室町末期のものという。
なかなかいい雰囲気の神野神社

杉木立に囲まれた境内で一息ついたところで復路にかかる。県道109号を山南町の和田まで南下する。向い風 が強く、時々太陽も顔を出す始末。ガツーンと晴れてくれれば湿度も下がるのだろうが中途半端。たまらず村森 (山南町)の店内で食事ができるコンビニに飛び込む(9時20分)。 ようやく腹にしっかり収めたところで再び走り出す。川代渓谷沿いで100kmを超える。篠山、三田と戻る道 中はただただ暑いだけ。それもそのはず赤坂峠の上で31℃。下り終えれば33℃。正午までに家に帰り着いて この気温。1泊ツーリングは少しでも最高気温の低い日にしよう。            (本日の走行距離154km) 2008年8月20日(水)~21日(木)豊岡/郷路岳~出石(5万図 大江山、出石他) 世間より1週遅れで夏休みを取得、予て計画の気ままな1泊ツーリングを行なう。今回は以前から考えていた夏場 でも半袖ジャージ&レーパンで山頂に立てる旧但東町の郷路岳(620m)に登り、下山後は近くにある観光地、 出石で皿蕎麦を食ってこようという去年に続く「走り+グルメ」企画。 いつもなら1泊ツーリングをするとなると、地形図やロードマップを買ったり、ガイドブックで立ち寄り場所やお 食事場所をチェックしたりするものだが、今回は総て手持ちの地形図他資料で賄えるという“お財布に優しい”企 画でもある。 8月20日午前5時12分、まだ薄暗い中をロードにまたがりスタートする。少しでも暑くなる前に距離を稼いで おこうといういつもの作戦だが、熱帯夜で気温が下がっておらず、赤坂峠の頂上でも24℃という温度は、日が昇 っていなくても暑い。 それでも幸いなことにやや雲が厚く、気温が上がってくる前に栗柄峠(7時20分)、鼓峠(7時25分)を通過、 豪快に下って兎原(7時47分)、日差しは強くなってきたが快調に飛ばして8時23分福知山の中心部への入口、 東堀の交差点に着く。 ここで予定どおり1回目の食料補給、R9沿いにある店内で食事が出来るコンビニに入る。それほど腹は減ってい ないが、これから上りが続くのでしっかり補給を摂って、再び出発する(8時45分)。 R9を牧まで北上、野花の先で右折、R426に入る。ここから登尾峠まで長いダラダラ上りが続く。「里の駅み たけ」という案内板が目に付く。ここは三岳山の麓なのである。 山間の道なのに意外と日陰が少なく暑い。集落が途切れてしまうと自販機も無くなるので、早めに自販機で水分を 調達する。夏場は多少ぬるくなっても喉に刺激のある炭酸系のものが“気付け薬”的効果を果たしてくれる。 緩い勾配の長い上りに疲れた頃、斜度6%の標識が現れて上り坂らしくなる。これまでの緩い上りがボディーブロ ーのように効いて、わずか6%の上りがとても堪える。ようやく前方に登尾トンネルが見えた時は暑さから解放さ れる思いとで地獄で仏に会った気分になる。
意外ときつかった登尾トンネルへの上り

登尾トンネルは長さ1,777m、自転車で走るととてつもなく長く感じる。涼しいのはありがたいが、トンネル 内の照明は暗く、対向車がすれ違っていったあと、瞬間的に真っ暗になり、結構怖い。トンネルも水平ではなく、 中央部に向かってゆるく上っているようである。 トンネルを出ると兵庫県に入る。旧但東町。「豊岡市」の標識が現れるが、ここが豊岡と言われてもまだピンと来 ない。快適な下り区間は短く、県道63号方面へ右折、更に薬王寺で左折し県道251号をぐぐっと上り始める (9時48分)。 農家の倉庫の軒先に自転車を停め、しっかり水分補給を摂って気合を入れて上り始める。すぐにギアはインナー× ローに1枚残しの状態となる。つづら折りの道が大きく南に反転し、更に再び北に向かうあたりから緩斜面に変わ る。 江笠山登山道を右手に見送り、展望が開けた西側の風景を楽しみながら上る。突然前方の視界が開けガードレール の向こうに青空が広がる。10時17分、何とか薬王寺峠に着く。
ガードレールの向こうに丹後の山々が・・・薬王寺峠

麓の上り始めから3km少しの距離に30分近くもかかる。暑さでバテバテもいいところである。標高がある分、 風が涼しいのが唯一の救いである。 さて、郷路林道である。ここから郷路岳の頂上付近を越えて、全長約9.4kmの林道が続いている。ここを通ろ うと決めたのは最近全線舗装されたとの情報を得たからである。林道の真ん中に山頂があるとすれば、あと5km 走れば本日の走りの最高点、その先にもう上りはない。
郷路林道へ

喉を潤して林道を走り始める。小刻みにカーブを繰り返しながら徐々に上っていく。南側斜面を切り開いて作った 道は、未舗装との違いこそあれ北摂の高岳の林道を連想させる。こんな山道をわざわざ全線舗装にする意味がある のか首をかしげるところだが、ロードにとってはこの上なくありがたい。
郷路岳を横目に上りは続く

林道は一旦標高560mくらいまで上がったところで徐々に下りに入り、475mの鞍部まで下がると、今度こそ 郷路岳山頂への最後の上りとなる。いきなり『斜度14%(上り)』の標識が現れる。今まで一つも無かったので 唐突な感を抱く。車やバイクで走る人に注意を促すためのものだろうが、斜度がきついことくらい見たらわかる。 無理をせずに「押し」て歩く。幸いなことにこの急坂は一番のビューポイントでもある。江笠山の山裾越しに大江 山連峰が見える。谷から吹き上げてくる風が気持ちいい。
大江山連峰の眺め

急坂を上りきったところにも『斜度14%(下り)』の標識がある。ま、当然といえば当然・・・。緩斜面に戻っ たところで再びペダルを回す。緩く下って上り返す途中、左手にピンクの蛍光テープが見える。いかにもここから 頂上へ登れますよと言わんばかりの山道が付いている。わずかなことだから林道の最高部まで上り、他に登山路が 無いことを確認してからターン、せっかくだからロードも担いで郷路岳の山頂に立つ(11時02分)。
郷路岳山頂

林道から山道を歩くこと2分で三角点のある山頂に立つことができる。どっしりとした三角点は3等である。残念 ながら展望は無い。すぐ脇を林道が走ってはいるが、交通量がゼロなのでミンミンゼミの声だけがこだます静かな 山頂である。
林道の頂上は木陰の少ない広場

あまり長居をしていると蚊に喰われるので林道まで戻り、林道開通記念碑の立つ展望スペースに移動する。大気中 の水蒸気の関係でくっきりとは見えないが、幾重にも連なる丹後方面の山々が印象的である。 木陰に移動して残っていた炭酸飲料を飲み干すと、いっきの下りを楽しむ。下りは快調、10分ほどでR426ま で下ってしまうとあとは平坦路、あれだけ回らなかった足も嘘のように調子を戻し、途中寄り道をしながらも、正 午前には出石の城下町に到着する。
誰が何といったって出石です名物に舌鼓を打つ

ツーリングでひと汗かいた後はグルメである。平日なのに観光客が多い。辰鼓楼近くの蕎麦屋で皿蕎麦を食べる。 4人部屋の個室に通され、1人ゆったりと名物皿蕎麦を頂く。通路を挟んだ反対側の部屋では、家族連れのお父さ んが「10分50皿に挑戦します」と宣言している。顛末を見届けたい気もしたが、そういうわけにもいかず、最 後に熱い蕎麦湯を頂いて店を出る。 ワイヤーロックを外して出発の準備をしていると隣りの饅頭屋のおばちゃんに店先の人形の置物を店内に動かすの を手伝ってくれと頼まれる。手伝いを終えるとおばちゃんからお礼にと蕎麦饅頭を頂く。 ありがたいが夏場のこの暑い時季、頬張ると喉が詰まる。1個頂いたところで、もう1つと勧められるが丁重に辞 退、代わりに何かの割引券をもらう。自転車ツーリングのいいところは、饅頭がただで食べられることではなく、 土地の人と同じ目線で話が出来ることである。 せっかくの饅頭ではあるが、蕎麦湯ですっきりしていた喉がもちゃついてしまったので、抹茶アイスとアイスコー ヒーを飲んで小1時間ほどを出石で過ごす。 予定よりかなり早く出石まで来てしまったので時間に余裕はあるが、観光客がうようよしているところに長居は無 用、本日のゴール地点である和田山に向かって走り出す。出石で蕎麦を食っている間に北寄りの風が強くなってい る。 R426を北に走り、ぐるっと回り込んで円山川沿いを南下して和田山に向かう計画だったが、強い向い風ほど走 っていて楽しくないものはない。浅間峠越えで八鹿にショートカットするコ-スに変更する。 今回の走りはよくよく峠越えをする。しかし、選択した道(県道2号宮津八鹿線)は道幅も広く勾配も緩やかで淡 々と走るうちに浅間隋道、いっきに下れば本日の最高速で伊佐の集落に着く。道路脇の空き地に自転車を停め、地 形図で現在地を確認、再び走り出して伊佐橋を渡り、円山川左岸へ。すぐに上小田橋を渡り返して、円山川右岸の リバーサイドラインを南下する。 この道は対岸のR312よりも交通量が少なく、無駄なアップダウンも無いので快適に走れる。3年前にこの道を 走った時は、35℃の猛暑で、呼吸をするのも辛いほどだったが、今日は31℃ながら強い追い風ということもあ り、時間調整をしながらゆっくり走ればいいのに、結局更に予定時間よりも早くに「道の駅 養父」に着く (13時30分)。 もう和田山までは10kmもない。ゆっくり休んで流して走っても追い風で自然にペースは上がってしまう。余裕 で14時過ぎに和田山の中心部に到着、地蔵祭りの提灯が飾られた市内を流しながら周回する。 和田山駅前のロータリーにあるバス停で大阪・神戸行きの特急バスに大きな荷物を下げて乗り込む乗客、見送る家 族の姿を見ながらのんびり時間を潰す。ここから大阪に出るにはやっぱり旅行なのかも知れない。今朝宝塚を自転 車で発ってきた人間が昼過ぎにこんなところで寛いでいるなんて信じられないかも知れないだろうな。でも私のよ うなふつーのおじさんでも1日あれば簡単に200kmは走れてしまうほど移動能力が大きいのが自転車なのでで ある。 1時間ほど時間調整をしたところで宿泊予定のホテルに向かう。3年前に作った会員カードがまだ生きていたとい うことでラッキーなことに割引を受ける。本当に今回は財布に優しいツーリングである。和田山を宿泊場所に選ん だのは、一度泊ったことがあり土地感がある事と、遠阪峠を越えればもうそこはホームグラウンドの兵庫丹波だと いう事。 こうして前半快調、中盤ヘトヘトだった走りも後半はラクに走って初日を終える。 (本日の走行距離:172km) 明けて翌21日(木)、夜明け前からホテル前の路上の水溜りを叩く雨が街灯に照らされて踊っている。雨雲は南 下しているようだが、出発時間を少し遅らせれば雨が上がるというものでもなさそうなので、予定通り5時半にホ テルを出発、自転車で3分ほどのところにある24時間営業のファミレスでモーニングを摂り、午前6時“リアル ・スタート”をきる。 更に雨脚が強くなっている。相当雨雲が厚いのか、まだ夜明け前のような暗さである。国道の轍は長い水溜りが出 来、街灯に反射してきれいに舗装された道のように見える。道路脇の気温表示は20℃、体感温度は10℃代前半 といったところ。3年前は朝から28℃と蒸し暑くヘロヘロになりながら遠阪峠を越えた記憶があるが、今日はス ピードを出して走らないと「寒い」。 兵庫南部は晴との予報に、丹波に入れば雨が上がるかも、と期待を抱いてスタートしたが、矢名瀬の集落あたりで 更に強まる雨脚に期待を捨てる。ゴーグルでもかけて走らないとよく前が見えないくらいの降りなので自然とスピ ードは落ちる。でも、まだ目が痛いだけなので時間雨量にすれば10ミリ程度といったところだろう。20ミリに なれば顔に当る雨粒が痛くなり、30ミリになれば走っていられなくなるというのが、これまでの走りから得た経 験則。 横を抜いていくダンプが跳ね上げた水しぶきが頭の上から降ってくる。水中を走ってるような気分だ。30分ほど かけてようやく遠阪峠を越えると待望の下り、と言いたいところだが、視界は真っ白、リムとブレーキシューの間 に水の膜ができ、ブレーキはいつもの半分も効かない状態になっているので、コーナーもお上品に回らざるを得な い。 それでもつづら折りを終え、直線路に入ると雨中の爆走が楽しめる。榎峠方向を見やると雨雲が切れてきたが、進 行方向の氷上方面は重い雨雲が垂れ込めている。 6時50分小倉(佐治)を通過、3週間前向い風に悩まされながら走った県道109号を追い風に乗ってあっとい う間に走りきり、7時55分谷川駅前に着く。天気がよければ途中で寄り道も計画していたが、雨とあってノンス トップで走りきり、昨日に続いて予定より大幅に早い進行となる。 駅前のバス停でフレームを拭いていると雨雲が切れてきた。もう雨の中を走らなくてもいいようである。涼しい間 にラスト60kmを走りきる。帰宅すればまだ10時半にもなっていない。さあ、一息ついたらロードの掃除でも しよう。            (今回の走行距離合計 280km) 織田(おりた)さんへのメールはbabrx800@jttk.zaq.ne.jpまで・・・。

表紙にもどる

『山であそぼっ』にもどる