山を駈ける風になれ2010年 2月号
2010年1月3日(日)北摂/羽束山(2.5万図 武田尾)
2010年が明けて3日は恒例の新春走り初め。今年はここ数年続いていたMTBからロードでの走り初めに
変更、行き先も地元では初日の出登山が行われている三田の羽束山と決め、山頂にある観音堂と神社に初
詣をすることに。
昨夜のうちに雨が降ったのだろうか。濡れた路面がまだ光る中、初走りスタート(6時52分)。放射冷却
が無かったお蔭か、それほど寒くない。それでも川西能勢口を過ぎ、県道川西篠山線を北上するに従い、
顔に当たる空気は徐々に張りつめたものに変わっていく。
杉生新田までくると温泉施設の駐車場から4-5台のクルマが猟犬を積んで泉郷峠に向かっていくのを見
る。今日はどの辺の山に入るのだろう。最近はこの付近によくハンターが入っているので高岳から北はの
んびり冬枯れ歩きもままならない。
泉郷峠を越えると気温は更に下がり、路面も半凍結、下りなのに徐行となるが、籠坊、後川と下るにつれ、
徐々に日差しも暖かくなり、ちょうど身体も温まったところで羽束山の麓、香下寺に着く(9時50分)。
羽束山に登るのは17年ぶりである。17年前はMTBを担いで山頂から木器方面へロープを伝って下りた記
憶がある。今日はウエストバッグ一つである。登山口に竹の杖が沢山用意されているのは17年前と同じ。
山頂まで「十二丁」の丁石の前を歩いてさあ山登り開始である。すぐ後ろから50代くらいのご夫婦が続い
て登って来られる。相変わらず不揃いの石段に足を取られながらの登りが続く。登り始めて10分もしない
うちに中間ポイントの六丁峠に着くが石段の登りが続いただけにもっと歩いているような気がする。
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六丁峠 |
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17年前はそのまま羽束山山頂を目指したが、今日は南にある甚五郎山(432m)に立ち寄る。峠から5分
ほどの距離である。しっかりとした踏跡が続いている。山頂は南に展望が開けており、素晴らしい高度感が
得られる。ここで持参のチョコを頬張りエネルギー補給をして六丁峠に戻る。さきほどのご夫婦がまさに峠
にあと数歩で到着というところであった。
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甚五郎山山頂 |
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峠から少し平坦な道があり、続いて最後の急登、お参りを済ませ下山の紳士と新年の挨拶を交わしたりしな
がら登るうちに観音堂の立つ山頂に到着する(10時23分)。
観音堂にお参りを済ませ、南西側にある羽束神社にも立ち寄り、その先にある展望台に移動する。生憎もや
っていて明石から播磨灘方面は見えないが、有馬富士、加茂金毘羅山など、これまで登ったことのある山々
を見下ろす光景は格別である。
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羽束神社 | 三田富士方面の眺め |
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羽束山は「秋はつる 羽束の山のさびしさに 有明の月を 誰と見るらん」(新古今集)と詠まれるいにしえ
の昔から知られた山である。今の石段がいつ頃作られたものか知らないが、1000年の昔から人々が信仰
の対象として登り継がれていたのではないかと思うと感慨深いものがある。
山頂でしばらく展望を楽しみ下山にかかる。頂上まであと100mというところで三度例のご夫婦に出会う。
下っていくほどに続けて3組のハイカーとすれ違う。やはりここは今でも信仰の山なのであろう。また標高
524mというハイキングにはほどよい高さもいいのかも知れない。
そんなことを思いながら下山、すっかり暖かくなった新春の西谷路をのんびりペダルを回して初走りを楽し
んだ。
(本日の走行距離100km)
2010年1月9日(土)六甲/畑山~有馬~六甲最高峰~宝塚(2.5万図 宝塚)
今年のツーリング企画第1弾、六甲で“サイクル三角点遊び”を行う。”サイクル三角点遊び”とは聞き慣
れない言葉だろう。私が勝手に命名した言葉で、その定義は「1回の日帰りツーリングで1等三角点から4
等三角点まで総てを訪問する」というもの。簡単に言えば野球のサイクルヒットの三角点ハント版というと
ころ。
ご存知のとおり三角点は全国に1等から4等まで(5等というのもあるらしいが)設けられている。1等三角
点は1000余り。4等三角点になるとそれこそ10万近くあるが、それがどうしてなかなか1回の日帰り
ツーリングで1等から4等まで巡るとなるとこれが結構難しい。
当然1等三角点を基準にコースを組み立てることになるが、ここで難しいのが2等三角点のコースへの組み
込み方。2等三角点は約8km毎に1か所設置されているが、これは1等三角点からも最低8km離れたと
ころにあるということを意味しており、同一山系の尾根の延長線上にはまず無いということなのである。
1等三角点を本塁打、4等三角点を単打とすれば、野球でも3塁打を打つのが難しいのに似ているといえよ
う。そこがこの遊びの面白いところ。
MTBに乗り始めてから20年目にあたる今年の新企画遊び、まずは地元六甲山系で記念すべき第1回目を
取り行うことにする。
6時50分、外が白んできたところで出発する。今日の相棒は勿論MTB。夜の間に霙でも降ったのだろうか
路面は濡れているが、明け方の放射冷却が効いて気温はマイナス2℃、コーナリングも慎重に赤坂峠を越え、
金仙寺湖を渡り、赤い欄干の橋を目印に船坂川を渡り、畑山への林道に取り付く。
畑山は頂上直下にNTTの中継所施設が立っている山で林道さえ間違えなければ簡単に山頂まで辿りつくこと
ができる山である。但しこの林道が長い。11年前に登った時の記憶では4.3km、傾斜はきつくないも
ののほとんど未舗装路でドロドロになったことを覚えている。
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今年初めての雪道走り |
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が、意外にもきれいに簡易舗装がなされており、何と登り口から1.6km付近まで続いている。その後も
部分的に舗装している箇所もあるなど総じて上りやすく、うっすら雪化粧した景色を楽しみながらペダルを
回すうちに中継施設前に到着する(8時10分)。
気温マイナス4℃ながら身体は汗だく状態、風も無いので寒さは感じない。11年前に来た時は中継所の背
後の山頂付近は高い木など無く、どこからでも簡単に登れた記憶があるが、今ではうっそうと藪が茂ってお
り、どこからでも、というわけにはいかない。
施設の南側に回りこんだところに山道を見つけ、最後はイバラ藪をかき分けて三角点の横にMTBを置く(8時
17分)。まず2等三角点「東久保」(点名)528.65m到達である。一番難しい3塁打を第1打席で放っ
た、というところであろうか。
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畑山2等三角点 | 畑山から六甲の眺め |
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有馬の石標(大正年間に造られたもの) |
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次の三角点に移動開始する。林道を下り、県道を盤滝トンネル方面へ。舟坂で有馬方面に右折、いつもの魚
屋道ルートで六甲最高峰を目指す。魚屋道手前で4人組の中高年ハイカーをパスして先に上り始める(9時
12分)。驚いたことに登り口が舗装されている。おまけに要らぬ階段や転落防止の柵が至るところに設け
られている。山歩きは自己責任。ここまでしないと行政は責任追及されるのか。ハイカーもレベルが落ちて
モンスター・ペアレント化しているのか。そのうち槍ケ岳の山頂にも転落防止の柵を作ってくれと言いだす
のではないか。などと思いながら登っていたら48分で一軒茶屋に着いてしまった。多分自己最速かも知れ
ない。
最後のひと登りで六甲最高峰に到着する(10時05分)。殆ど埋まっている1等三角点にタッチする。点名
「六甲山」931.25mである。第2打席本塁打というところか。MTBを停め、汗を拭いながら景色を眺
めていると、次々とハイカーが登ってきては「六甲最高峰」と書かれた標柱にタッチしたり拝んだりして引
き返していく。なかなかせわしないなあ。
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六甲山1等三角点 | 樹氷と北摂方向の眺め |
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10分ほど休んで下の道路まで下り、東へ。カーブNo.113のポイントから東六甲縦走路に入る。ここか
ら水無山まで極上のシングルトラックが断続的に現れる。快調に走っていると前輪に違和感を覚える。見る
とパンクしている。どうやらスローパンクのようである。
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極上のシングルトラック |
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ここから宝塚までまだ山道を10kmも走らねばならない。取りあえず空気を入れれば走れないこともない。
途中2回空気を入れながら大平山はパスして、大谷乗越から岩倉山の山頂まで走る。3等三角点「小林」4
88.38mには11時51分到着。不動明王が祀ってある岩室の横にあるため三角点の上にお賽銭が乗っ
ている珍しい三角点である。第3打席大平山を見送ったので第4打席2塁打としておこう。
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岩倉山3等三角点 | ゴールは六甲全山縦走と同じ湯本台(4等三角点) |
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あとはひどく抉れた山道を下って塩尾寺へ(12時01分)。舗装路を下って紅葉谷から昔の温泉街の中心地
だった湯本台広場へ。広場の隅っこに4等三角点がある。その名もずばり「湯本台広場」52.28m(12
時16分)。最寄駅までいつも通勤に使っている道の横にある。第5打席単打でサイクルヒットならぬ「サイ
クル三角点」達成。六甲東縦走路、宝塚側起点のコンビニ横の自販機でスポーツドリンクを買い、一人達成
の祝杯をあげた。
(本日の走行距離 46km)
2010年1月16日(土)北摂/杉生新田冬景色(2.5万図 木津他)
寒気が抜けて今日から暖かくなるという。明日は仕事なので今週は今日しか走れない。予て計画していたルー
トを走ろうと朝玄関を開ければ庭が白い。霜か。よくみたら雪。家の前の道路もうっすらと積もっているでは
ないか。
とはいえ、乗って下れない状態ではないのでとにかく行けるところまでいってみることに(6時56分)。い
きなり予定変更である。昔ならこんな時は南へ走って、鳴尾からフェリーで津名に渡り淡路島を走る、という
手があったのだが今はそういうこともできない。結局便利になったのか不便になったのか・・・。
旧道のR176を東へ走る。道路上に残っていた雪の跡は山本を通過する頃にはすっかりなくなり雪が降った
形跡すら無い状態。意外と走れるかも知れない。川西能勢口で県道を北上する。さすがに紫合を過ぎるとそう
はいかなくなる。
ダンプが追い越して行く。雪煙が蛇のようにうねりながら路面を低く這って移動する。猪名川が凍っている。
屏風岩の辺りでは凍った川面に積もった雪の白と、暗い淵を流れる黒とで巨大な鯱が眠っているように見える。
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猪名川、凍る(屏風岩にて) |
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栃原あたりから雪が舞いだす。荷台におじさんを乗せた軽トラが融雪剤を撒きながら追い抜いていく。滑らな
いので助かるが、前輪が巻き上げた融けた水がダウンチューブに当たって飛び散り、足を氷水に浸けているよ
うな状態になる。
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杉生 | もうそろそろ引き返そかな・・・ |
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8時18分、どうにか杉生に到着。自販機で温かい缶コーヒーを補給する。雪は止みそうにない。こんな風景
をみるのは久しぶりである。
ついでに杉生新田まで足を延ばす。雪景色を堪能する。濡れたつま先の感覚が無くなってきた。Uターンを決
める。これもまたよし。
(本日の走行距離 74km)
2010年1月23日(土)播州/御嶽山周辺を走る(2.5万図 谷川、比延他)
播州御嶽山は西国25番札所清水寺がある山。やまあそさんのレポ-トを読んで、そういえば自分もまだ一度
も登ったことがないことに思い当たる。とは言えディープなしんどい山歩きは彼に任せてお手軽にヒルクライ
ムで山頂を目指すことにする。
午前6時50分、ロードで出発する。昨日あたりからまた真冬の寒さが戻ってきた。とはいえ、先週に比べる
と大したことはない。まずまずのペースで気温0℃の赤坂峠を越えると後は氷点下の中の走りが延々続く。
古市で水分補給を摂り、不来坂、下小野原と走って今田新田分岐の交差点に着く。何気に右手を見ると「愛宕
山健康登山道」の文字が目に入る。続いて「70m 5分で登れます」の言葉が・・・。
これまでいくつか愛宕山を訪れてきた身としては、是非登っておかねばならない。おまけにたったの5分で登
れるとあっては尚更だ。ちょっと寄り道をすることに。登山口はすぐに現れる。よく整備された山道を辿ると
すぐに着く(8時43分)。
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愛宕山の祠の台座 | 愛宕山から御嶽山方面の眺め |
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ベンチが置かれ周囲を豆球の付いたコードが張り巡らされている。こんな砦のようなところでルミナリエでも
やるのか? 残念ながら祠は無く、祠が建っていたと推測される石組だけが残っている。南に眺めがいい。北
山や御嶽山がよく見える。
再び国道まで戻り本庄の交差点を左折、平木で右折しダラダラ坂を上って清水寺登山口から料金所へ。いきな
り「ここは自転車では登れません」と言われる。入山料を払っても駄目か、と聞けばカーブが多く、クルマが
来るので危ないから駄目だという。
クルマ同士がすれ違うよりもリスクは少ないと思うのだが・・・。自転車は下の駐車場に停めて登山道を歩い
て登れという。自転車でやってきた意味がないじゃないか。このお寺はクルマに乗ってラクにお参りすること
はできても、しんどい目をして自転車でやってきてもお参りすることはできないのですね、と一言皮肉を言っ
て登り口に戻る。
まあ、この山全体が清水寺の所有地のようなので文句は言えないが、この有料道路はお寺が自費で作った云々
の文章は噴飯ものである。山の上の施設に集客しようと思えば、自分の金で道を作るのは当たり前の話だし、
そもそも税金もロクに納めていないくせにと思うから尚更腹が立つ。
結局、次はどこへ行こうかと地形図を広げて見ている間に1台のクルマの通行もなく、行き先を決めて平木ま
で戻る。この播磨・丹波・摂津の三国が接している辺りは同じくらいのサイズの独立峰が密集する面白い地形
が展開する地域である。その中で山頂までの距離が一番短そうな内山(370.3m)に向かうことにする。
平木を南下し梅木峠を越える。峠を越えると地道の林道のような簡易舗装の農道が1kmばかり続く。道が広
くなったところで三叉路となり南へ折れる。地形図で見る以上に斜度のある坂が続く。やっと上りきったかな
と思えばまだまだ上りは続き、やがて分譲別荘地の中へ入り込む。
バブルの負の遺産か。殆どが山林のまま手つかずで、建っている家も住んでいるのは僅かのようである。かな
り大規模な開発計画だったと見え(「うぐいすの里」というらしい)ニュータウンの中央部には大きな池と住
民の憩いの公園が作られ、テニスコートなどもあって、計画通りにいっていればリゾート地のような様相を呈
していたであろうと推測される作りになっている。
感心しながら進むうちに、内山の真南約1kmの住宅地の最高点に着く。取り付きを探すがそれらしいところ
はなさそうである。諦めて西側の347標高点に続く道を上ることにする。
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別荘地の奥から登ろう |
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激坂が続く。亀岡の湯谷ケ岳に登った時のことを思い出す。これまた住んでいるのかいないのかわからない住
宅地の間を上がっていくと配水場の施設がある。地形図の道路が切れる手前の曲がり角に踏跡らしきものを見
つけ、自転車をデポして東へ雑木林の中を入っていく(10時05分)。
意外なことに木の幹に赤ペンキが塗られ、蛍光ピンクのテープがぶら下げられ、どう見てもこのまま三角点の
ある山頂部まで誘ってくれそうな感じである。小さなコブを上り返しせば赤ペンキとピンクテープは北に方向
を変える。途中から右手に針金が現れる。手入れをしたらいいMTBコースになりそうなところもある。シダ
藪を過ぎて平坦な頂上部を一番奥まで進むと3等三角点のある山頂に到着(10時15分)。点名「内山」で
ある。
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途中にはいい山道も現れます/TH> | 内山山頂 |
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周囲は雑木に囲まれて展望はないが、登頂標など無い静かな山頂である。赤ペンキとピンクテープの目印のお
蔭で簡単に辿りつくことができた。無粋な目印ではあるがこれが無ければこうも簡単には辿りつけなかっただ
ろう。
来た道を折り返しデポ地に戻る。冬枯れの日だまりは汗ばむほどに暖かい。配水場の下でチョコを頬張りエネ
ルギー補給をする。それにしても今日はよく激坂を上ったのでかなり足にきている。ちょっと足を休めながら
走りたい。
うぐいすの里をいっきに下ると地道と合流して大川瀬ダムの下へ。なるべく西風を追い風に使えるルートを考
えながら帰路についた。
(本日の走行距離 94km)
織田(おりた)さんへのメールはbabrx800@jttk.zaq.ne.jpまで・・・。
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