山を駈ける風になれ2010年 4月号
2010年3月20日(土)西宮自転車散歩/上ヶ原用水(2.5万図 宝塚)
第8回西宮自転車散歩シリーズ。3連休の初日、天気はいいが昼前から強風が予想されるためポタリングを
決め込む。今回は16年間住んだ仁川百合野地区を中心に上ヶ原用水を紹介したい。
甲山の東に広がる上ヶ原台地は仁川が作りだした標高40~80mの扇状地である。温暖なこの地には古く
から人が住みついていたことは関学の構内古墳や阪神浄水場内古墳などでも明らかである。
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関学構内古墳 |
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しかしながら稲作が始まるようになると、人々は低地に下り、水の便の悪い上ヶ原台地は荒れ地となってい
たようである。上ヶ原台地に開発の手が入るのは江戸初期。仁川の上流から岩を削って水を通す難工事。そ
れでも上ヶ原には十分に水が引けず江戸中期の1768年、更に高い位置から岩盤をくりぬいて作った水路
が上ヶ原用水である。
34年の歳月をかけて125mの岩盤をくりぬいて通した用水は仁川百合野町から仁川渓谷に入れば今も見
ることができる。
仁川は長い年月の間に何度か流路を変えたようで、上ヶ原台地の北端から現在の仁川の流路にかけて2-3
段の河岸段丘を形成しており、百合野地区にはこのような河岸段丘をショートカットする階段があちこちに
見られる。
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河岸段丘をいっきに登る70段階段 |
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階段をあがり用水に沿って地滑り資料館に至る。更に西に進むと仁川渓谷に入る。地滑り資料館のあたりは
阪神大震災で斜面が崩れ、30人以上の方が無くなったところである。
百合野地区の「ゆりの」の語源を「ユリ」の同義語の「ユルギ」(揺るぎ)に由来するものと解釈し、祖先
が後世に地滑りの危険性を伝えようとした地名ではないかという説もあるが、戦後すぐからこの地に住む方
に話を伺うと、地滑りを起こした個所はもともと谷地形であったが、すぐ上に浄水場を作る際に盛り土をし
て作ったところだという。
その言葉が証明するように岩盤をくりぬいて作った上ヶ原用水の上流部は震度7にもびくともせず今も当時
の農民たちの手掘りの跡を見ることができる。
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岩盤と石段の間に用水路が掘られています | ここから125mの手堀りのトンネルが始まります
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この光景を見ただけでいかに難工事であったか容易に推測がつくというもの。私は子供の頃、この石段を渡
って奥にある岩場でよく遊んだものである。初めての人ならこの石段を渡るだけで足がすくむかも知れない。
石段の右手10mほど下には段上、上大市、下大市へ流す水路もある。
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仁川百合野地区を流れる用水 | 各村に配分する分水樋 |
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こうやって岩をくりぬいて通した用水は仁川百合野地区を流れ、関学の裏手にある分水樋で上ヶ原、門戸、
神呪地区にそれぞれ決められた比率で水が分配されている。
写真でご覧になってわかるようにかなり配分比率が違うのがおわかり頂けると思う。今以上に水が生命線を
決していた時代を知ることができる。勿論この分水樋は今も現役であることを付け加えておこう。
(本日の走行距離 44km)
2010年3月22日(月)亀岡/牛松山(2.5万図 亀岡)
3連休の最終日は風もおさまり穏やかな好天が期待できそうということで、予て登ってみたいと思っていた
亀岡の牛松山へ行くことに決める。昨年何度か桂川を渡って亀岡盆地を東へツーリングしたが、その時に見
たどっしりとした山容に春になったら登ってみたいと思っていたのである。
6時06分、ロードで出発する。ここ2-3日の陽気でいっきに開花したサクラを愛でながら北上、杉生で
水分補給を摂った後、中山峠、逢坂峠、柊峠と越え、宮川から神前回りで亀岡盆地に下り、月読橋を渡って
三日市の交差点を右折、ちょっと行きすぎたりしながら、どうにか目的地の愛宕神社に着く(9時15分)。
ここは全国の愛宕神社の総本宮である。ムササビもいるらしい。鬱蒼とした社叢林をゆっくり見て回りたい
ところだが、いい加減足にきているのでさっさと支度を済ませ、山歩きにかかる。
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愛宕神社が本日の出発点 | ハイキングコースを行きます |
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神社の北側に山に向かう簡易舗装の林道を数分歩くと、右手に「牛松山へ」と書かれた案内板が現れ山道に
入る。もうこれで後はハイキングコースを行くだけである。事前に地形図でチェックしていたので山頂まで
休みなく登りが続くことは承知していたが、いざ歩きだしてみると結構辛いものがある。
最近ハイキングらしいハイキングもしていないから尚更である。登り始めて20分ほどで尾根筋に出、ほぼ
一直線に登っていくとやがて亀岡テレビのアンテナ施設が現れ、右手にいきなり「牛松山山頂」と書かれた
案内板が目に飛び込んでくる(9時56分)。ここは629.2m三角点のある場所である。植林囲まれ展望
はない。
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牛松山三角点 | ここが最高点です |
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この山の本当の最高点は更に東北東に2分ばかり歩いたところにある(9時58分)。NHKのアンテナ施
設が建っている。愛宕山方面のみ眺めることができる。日陰には雪が残っている。一直線の登りで汗だくに
なったが、じっとしていると寒い。10分ほど休んでから下山にかかる。
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最高点から愛宕山方面の眺め | サクラ咲く一庫ダム |
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登りとは違うルートをとろうかと思ったが、足にそこまで余裕がなく結局ピストンを決め込む。下りは早い。
25分ほどで下ってくる。ここは千歳町というらしい。牛松山は「石松」から転化したもののようだが、「
千歳」が「三千歳」で「牛松」が「丑松」なら「天保六歌撰」みたいだな等とどうでもいいようなことを考
えながらデポ地に帰りついた。
愛宕神社に戻り再びロードにまたがると風が強くなってきた中を帰路についた。
(本日の走行距離123km)
2010年3月27日(土)北摂/弥十郎ケ嶽~火ともし山(2.5万図 福住)
月曜日の牛松山で久しぶりに山歩きの感触が足にインプットされたところで、今度は静かな雑木藪の尾根歩
きを楽しもうと標記のルートをチョイスする。弥十郎ケ嶽は何度か登っているが、今日は初めて四十九院コ
ースから頂上を目指すことに。
6時03分、ロードで出発する。真冬に戻ったような寒さである。筋肉が温まらないのでスピードが出ない。
サクラも暫くは氷温保存といったところか。どうにかこうにか杉生まで来ると、『この先全面通行止め』に
なっている。
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サクラを愛でながら北上 |
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とはいいながら杉生新田方面の車線は開けてある。警備のおじさんに尋ねると峠から先はわからないという
。西峠は越えられないということらしい。ノー・プロブレムだ。杉生新田まで行くと泉郷峠方面に迂回する
よう案内が出ている。2か所凍結している泉郷峠を越え、後川上から城東トンネルを越えて四十九院コース
の登山口に着く(8時18分)。
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四十九院ルートから登ります |
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ここから東に向かって林道東山線が暫く続いている。適当なところにロードをデポし、支度を整えて歩きに
かかる(8時25分)。平坦な林道歩きでスタートする。5分ほど歩いたところで、『弥十郎ケ嶽山頂まで9
0分』の標識が現れるが驚くことはない。更に5分ほど歩けば『山頂まで80分』の標識が現れるので実際
はそんなにかからないということがわかる。
朽ちかけた木橋を渡る。吊り橋ではないのに歩くと揺れる。祖谷のかずら橋をスタスタ歩いた私も、この橋
は慎重に歩く。橋の下は結構な水量の流れがあるので緊張感満点である。
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結構スリリングなルートです | 吹越峠 |
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橋を渡ると広い谷の登りになり、すぐに辻に着く(8時42分)。吹越峠である。北に下れば畑市、東に向か
えば弥十郎ケ嶽方面となる。西にも行けるようである。地形図で現在地を確認して東へ向かう。ほぼ平坦の
素晴らしい山道である。
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椿のトンネル地帯 | 洞穴 |
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やがて登りにかかる。椿のトンネルをくぐり、右手に滝を見ながら岩場を登る。ここはハイキングコースな
ので標識が整備されており初心者でも迷う心配はない。弥十郎の名前の由来?となった洞穴を過ぎれば尾根
に出、南に登りきったところが山頂である(9時24分)。
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15年ぶりの弥十郎ケ嶽山頂 |
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15年ぶりの弥十郎ケ嶽山頂である。御嶽方面があんなによく見えたっけ、と感じる以外は15年前のまま
の山頂で安心する。それにしても寒い。日陰には雪が残っているし、霜柱は凍り付いて踏んでも崩れない状
態である。
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弥十郎北峰 |
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一息ついて来た道を戻り北峰へ向かう。ここからはハイキングコースを離れ踏跡に変わる。北峰にはすぐに
着く(9時33分)。意外と展望がある。木の間隠れに篠山盆地が見える。北峰からは西に向かう。
雑木藪の気持ちのいい尾根道歩きが続く。ゆったりとしたヤブ山歩きを楽しみながら小さなコブを登り返し
て火ともし山に着く(9時47分)。平内丸とも呼ばれる山城の跡で小さな平坦地となっている。
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麗しの雑木尾根を歩きます | 火ともし山山頂 |
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更に西に向かう。ここからは踏跡も判然としなくなり、要所要所でコンパスを取り出し確認しながら下る。
落ち葉ふかふかの急斜面の下りはよく滑る。これもまた楽しい。植林帯に下り着くと山道に突き当る。3分
ほど山道を登れば吹越峠である(10時12分)。
久しぶりに楽しい周回路歩きができた。またあのスリリングな木橋を渡ってデポ地に戻ると、向い風と闘い
ながら篠山城址まで走り、のんびりしたあと帰路についた。
(本日の走行距離105km)
織田(おりた)さんへのメールはbabrx800@jttk.zaq.ne.jpまで・・・。
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