山を駈ける風になれ2010年 9月号

 
2010年8月21日(土)―23日(月)但馬/妙見蘇武林道(2.5万図 神鍋山、栃本他)
夏休み特別企画ツーリング。今年は例年に1泊プラスして2泊3日で神鍋高原の西に連なる蘇武岳から但馬
妙見山をつなぐ妙見蘇武林道を走るのをメインにプランを立てる。
この林道は県下で唯一の標高1,000mを超えるところを通る舗装路。ご機嫌な高原サイクリングが出来
るかも知れない。また郷土の大冒険家植村直巳が愛した蘇武岳山頂の直下を通ってもいるので是非記念に訪
れてみたいところである。

8月21日(土)、午前5時夜明け前の薄暗い中をロードで出発する。今日は出石経由神鍋高原までの16
0km。涼しいうちに少しでも距離を稼いでおきたい。それにしても今年の暑さは異常である。連日36℃
~37℃が続いている。この猛暑の中どこまで走れるか、というサブ・テーマが出来そうなくらい。冬の生
まれのせいか暑さは大の苦手だ。

まずはR176を一路北上する。三田あたりまでは薄曇り、篠山盆地では霧に恵まれ、スタートから2時間
ほどは真夏の日差しを浴びずに走れるも、栗柄峠手前から太陽が顔を出し始めるのは毎年のパターン。
それでもなんとか途中1回の水分補給だけで福知山に辿り着き(8時28分)、店内で食事が出来るコンビ
ニで“ブランチ”タイム。(といっても私の場合、朝食と昼食の間に摂る食事をブランチと呼ぶのだが・・・)

しっかり水分補給とエネルギー補給を行ったところで再スタートを切る。だんだん暑くなってきた。R9を
野花まで走ったあと右折してR426に入る。山間の道なので涼しいかと思いきや日陰になるところは少な
くて道路上に滴る汗を残しながらの上りが続く。
9時10分、時間調整を兼ねて「里の駅みたけ」で休憩&水分補給を摂る。10分ほど休んで登り尾トンネ
ルに向かう。わずか4kmほどの距離なのに15分もかかってトンネルに。涼しいトンネルの中で“生き返
り”、抜ければ風を切って長い下りを楽しみ、本日のお目当て「但熊」に到着する(9時50分)。
名物のたまごかけご飯です

“山の中に行列が出来るお店”として知られる「但熊」はたまごかけご飯専門のお店。時間調整をしながら 走っていたというのはこのお店の開店時間である10時に到着するように合わせて走っていたということ。 予約の順番を取ろうと中に入るともう先客がいてもう食べている。結局取れた順番は「5番」。暑い外で並 ぶこともなくたまごかけご飯定食にありつく。う~ん、これは昼食か?2度目のブランチか? 10時10分、店を出る。暑い。しかしここまで113km走ってきている。残り50km弱の行程と言い 聞かせて17km先の出石に向かって走りだす。 旧但東町出合市場を通過。道路脇の気温表示が35℃をさしている。 「ついにきたか35℃。」まだ10時半にもなっていないのに。早くも“空冷効果”が期待出来なくなった。 当初計画では通過と決めていた出石の城下町へ立ち寄り(10時43分)水分補給を摂りがてら土産物屋の 中をうろついて冷房で身体を休める作戦に切り替える。 出石で20分ほど休み再び走りだす。出石川沿いを北上する。途中までは去年走った道だったので問題はな かったのだが、あまりの暑さで頭がボケたかR426とR482を勘違いし、豊岡市街まであと数キロとい うところまで走ってしまい慌ててR312を南下するも、どの辺を走っているのかわからなくなる(持参の 地形図から外れたところを走っていた)。 「国府駅0.1km」の標識が現れる。国府は江原の北だっけどっちだっけ・・・。 とにかく駅舎の待合室で冷房に当たりながら考えようと駅に行くと何とそこは無人駅・・・。カンカン照り のホームに申し訳程度の日除けの待合スペースがあるだけ。待合スペースの出入り口でアブラゼミが転がっ ている。 とにかく日差しが避けられるところでスポーツドリンクを飲みほし、江原へは南へ走らないといけないこと を確認し,再びR312を南に走りだす(11時35分)。 幸いなことに道路は江原の中心部を走ることなくショートカットで神鍋高原方面に続くR482に続いてお り一安心。20mほどしか離れていないところを悠然と舞うコウノトリを見ながら走っていると今度は突風 と大粒の雨が打ちつけてくる。たまらず事前にチェックしていたコンビニの中に避難する。 蘇武岳の方から湧いてきた雨雲が夕立をもたらしたのである。店内でアイスキャンデーを食べながら夕立が あがるのを待つ(12時03分)。雨雲の移動と方向がずれていたためすぐに雨は上がる。 気温は一気に30℃まで下がる。神鍋高原まであと12km。道中には植村直巳記念館や溶岩流が作った天 然の名所が至るところにあるが、濡れた路面から立ち上る水蒸気で蒸し風呂状態となった中での走りに見物 の余裕はなく、12時57分どうにかこうにか休憩ポイントに決めていた道の駅神鍋高原に到着する。 冷房の利いた休憩スペースで1時間ほど休んでいたが、せっかくここまで来たのだからと道の駅のすぐ背後 にある神鍋山に登ることに決める。
時間があったので神鍋山に登りました

登るとはいっても標高差120m程度、山頂まで1.5m幅の簡易舗装路を付いており20分ほどのお散歩 である。山頂中央部には深さ40mの噴火口の跡がある。傍にある説明板によるとここは2万年前にスコリ ア・火山弾・火山岩塊などの放出物で出来た噴石丘だそうだ。
本日のお宿に到着

お散歩を終えて道の駅に戻ると予約していたペンションのチェックインにちょうどいい時間、風穴の前で涼 風を浴びたりしながら15時過ぎペンションに到着。1日目の行程を終える。 (本日の走行距離165.1km) 8月22日(日)、今日は今回のツーリングの“メイン・ディッシュ”。山登りをされるというペンション のご主人のご理解もあって午前6時に朝食を準備して頂き、6時半出発、道の駅まで戻ってスポーツドリン クを5本調達し、6時45分リアル・スタートを切る。 蘇武トンネルを左手に見送り稲葉から細い林道に入っていく。路面に砂利の浮いた林道はやがて未舗装路と なり、自転車を降りる。尾根を通る妙見蘇武林道合流ポイントまでは未舗装路であることは事前に情報を得 ていたので、「押し」で標高を稼ぐ体力温存区間と解釈、林道脇にときおり現れるブナの巨木に感嘆の声を 上げながら登っていく。 途中1回水分補給の休憩を入れながら7時56分、林道合流ポイントに到着、日陰となっている舗装路の上 にどっかと腰を下ろす。標高750mを超すとさすがに涼しい。
ようやく妙見蘇武林道合流ポイントに着きました

汗をぬぐっていると三川山方面から4駆が一台やってきて蘇武岳方面へ走り去っていく。さて待望の標高1, 000mの舗装路走りのスタートである。ここが24.7kmある林道の起点である。これまで1,000 mを超える高原舗装路走りといえば、9年前のビーナスライン、6年前のやまなみハイウェイなど快走に次 ぐ快走が楽しめたが、今日の林道は結構ハードである。 7.5km先にある蘇武岳までアップダウンを繰り返しながら標高差300mを上っていくのである。こん なに暑い季節でなければどうということもない斜度の坂も、上りでは“グルペットからも切れかかったリタ イヤ寸前の選手”状態。しかし下りに入ると涼しさも相まって別人のような走りが戻る。
下りになると生き返る思いです蘇武岳まであと少しです

蘇武岳の先にある金山峠までは基本的に山稜の西側を林道が通っているので直射日光にさらされることは少 なくて済む。林道合流ポイント到着から1時間後展望台がある蘇武岳登山口に到着する(8時57分)。
蘇武岳山頂

登山口という標識は無いがすぐにそれとわかる山道がついている。南側から北に向かう恰好で10分も歩け ば蘇武岳の頂上に立つことができる(9時08分)。残念ながらこの季節なので視程はきかないが、それで も胸のすくような景色が広がっている。 遮るものがない山頂は暑く、東屋が建つ展望台に戻る。下る途中4人組の中高年ハイカーとすれ違う。どう やらさっき三川山方面からやってきた4駆に乗っていた人達のようである。
蘇武岳山頂

展望台でペットボトルのスポーツドリンクを飲み干す。3本目を空けた。さて金山峠に向かう。ほぼ下り一 本の快走路である。無茶苦茶楽しい下りは10分ほど。あっという間に未舗装路が現れたかと思うと金山峠 である(9時45分)。 ここから地道と舗装路が交互に現れながらほぼずっと登りっ放しの道となる。おまけに林道が山稜の東側に 変わって日陰が無くなり、さきほどの元気が嘘のように消えうせる。余力があれば登ろうと考えていた東鉢 伏山(点名「日影」)への林道分岐を見送り、ただひたすら道が下りに転じてくれることを願いながら「押 し」で歩く。 10時19分、1078mピークから北に伸びる枝尾根を巻くポイントを通過する。標高980m地点、ひ たすら登っていく地道の「押し」もここで終わりである。100mほど下ったところから待望の舗装路が現 れる。 ロードにまたがって下ろうとしているとまたしてもさきほどの中高年4人組を乗せた4駆がやってくる。こ れから但馬妙見山に登るのだという。一緒に登らないかと誘われたが遠慮する。そもそも計画に無いので昼 食用の食糧を持ってきていない。 それに林道をクルマで走っておいしいところだけをつまみ食いするような山登りには共感できない。山は麓 から自分の足でその大きさを確かめながら登ってこそ価値がある(と思う)。山頂直下を通る林道を利用し て次々とピークをピストンして巡って何が面白い。合理的だが心に残らない山旅を繰り返しても空疎なだけ である。
下りになると生き返る思いです蘇武岳まであと少しです

舗装路の下りに変わるとさっきまでの辛さが嘘のように消えうせ、わずか10分ほどで名草神社に着く。4 人組が支度をして登っていくのを見送る。5年前予定外のハプニングで登ることが叶わなかった但馬妙見山 までは1時間ほどの距離だが予定どおり登らずに林道を進み、キャンプ場分岐から石原の集落めがけて一気 に下っていく。 標高が下がるにつれ風がぬるんでくる。30分ほどかけて日光院まで下ってくると、もう下界の暑さそのも のである。4本目のスポーツドリンクを空ける。残りは1本となったのでボトルケージに挿し、背負ってい たデイパックを小さく折りたたんでウェストバッグに詰め、足を休めながら八鹿の街まで下ると今回の“メ イン・ディッシュ”は終了。最初に現れたコンビニに飛び込みランチ・タイムとする(11時30分)。
今日の宿泊地、和田山に着きました今回の旅のお供は初日にGETしたこれ・・・

今日の宿泊場所は毎年お世話になっている和田山のビジネス・ホテル。距離もそう無いのでチェック・イン の時間調整をしながらゆっくりと和田山の中心部に入れば、今日は「和田山地蔵まつり」が開催されるとか で家々の軒先を万国旗がつなぎ華やかな装いをみせている。但馬3大祭の一つという。京阪神とは地蔵盆の 日がちょっと違うようであるが、日が落ちれば賑やかになるのだろう。 (本日の走行距離63km) 8月23日(月)、今年の夏休みツーリングもいよいよ今日で終わり。自宅までの108kmを走るだけで ある。午前5時44分霧に包まれた和田山の街をスタートする。霧とはいっても放射冷却で発生した霧では なく、昨日の午後の雷雨の影響で出来た霧である。 一昨年は土砂降りで気温21℃の中をふるえながらの遠阪峠越え。昨年は28℃で蒸し暑い中。今年は25 ℃で霧の中、と3者3様の天気。今年が一番ラクなのはいうまでもない。霧が出ているうちに距離を稼いで おきたい。 結局霧が晴れたのは谷川駅手前。急激に気温が上がり始める。今日も猛暑日との戦いになるが残る距離はも う半分。走りなれたホームコ-スの感触を確かめながら家路についた。   (今回の総走行距離 336km)      織田(おりた)さんへのメールはbabrx800@jttk.zaq.ne.jpまで・・・。

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