山を駈ける風になれ2001年7月号

2001年6月2日(土)能勢・園部・篠山/深山〜舩谷山(2.5万図 福住、埴生)
前回に続いて北摂最高峰深山周辺を巡る。今日は深山山頂から北尾根を舩谷山経由で西の鞍部に下り、
妻恋地蔵さんの著書に「大正古道」と記された道を通って天王へ戻るミニ周回コースを行くことに。
従って今日は久しぶりにMTBだ。MTBに乗り始めた頃はよく通っていた深山だが、ここ5年ほど
はご無沙汰している。さて以前のままの深山だろうか。
5時27分自宅を出発。朝の涼しいうちに距離を稼いでおこうという作戦。最近足がだるいので自重
気味に走っていたが、予想外にいいタイムで川西能勢口を通過すると、南西からの弱い追い風にも助
けられ杉生新田へのダラダラ上りもなんとかこなし、7時32分天王に着く。深山は目の前に見えて
いるが、いったんR173をはらがたわトンネル方面に走り、瑠璃渓方面へ折れ、上り始めてすぐの
簡易舗装路を左に入る。
軽トラ一台分の幅の林道でいきなりの急坂にギアチェンジが遅れ、「押し」て進む。農作業をしてい
たおじいさんに挨拶。「深山へ行くならあっちに道が通ってるで」と親切に声をかけて頂いたが、そ
っちの道は何度も登っているからと返事すると、「そうかいな。ま、この道もユンボが先までいって
るから・・」と笑顔で送りだしてくれる。
さて、「岡牧場温泉」と書かれたお手製の露天風呂(機会があれば入りたい)を横目に見ながら、ユ
ンボの横を通り、作業現場行き止まりからMTBを担いで、途切れた道の続きを行く。荒れた道だが、
地形図のような破線の道ではなく、しっかりとした幅の道、ただ車の通れる道ではない。10分ほど
で岡牧場横からの舗装路に合流、雨量レーダードームへ続くゲートに着く。以前はゲートの横の隙間
から入れたのに、今はハイカー向けに横に専用入口が設けられている。
8時15分、深山山頂に到着。北摂最高峰、ゾクゾクするようなパノラマは以前のままだが、ここで
も変化が。まず雨量レーダードーム手前に柵。扉を開けて入らないといけない。次に奥の深山宮、「忠」
、「孝」と彫られた巨石が正面両脇に立っている。うわさの三角点も以前に比べて見やすくなってい
る(5年前と位置が変わったわけではない)。

深山宮

この山頂からの眺望はいつまでも見飽きることがない。とにかく列挙するのが大変なくらい多くの山 が臨めるのだ。15分ほど休んで本日のメインコースに入る。まずは、深山宮の後ろに回りこんで北 西方向に続くクマザサの海にダイブする。クマザサを刈り取って2m幅の切り開きが作られているの で何とか歩けるが、強烈な切り株が気になってMTBに乗れない。 乗れないまま青いビニールひもに導かれ雑木林の森に入るが、林床はやっぱり手ごわいクマザサの切 り株が続き、乗ったり押したりを繰り返しながら舩谷山(Ca730m)に到着(8時45分)。深 山は大阪府、京都府、兵庫県の2府1県にまたがる北摂最奥部の山である、とよく紹介されているが、 厳密にいうとこの舩谷山山頂が3府県の境界がクロスするところだ。全国に3都府県の県境が一点で 交わっているところは何ヶ所あるか知らないが、府が大阪と京都しかない以上、2府1県が一点で交 わるポイントは全国で、ここと反対側の奈良県との境界の2ヶ所だけなのだ。おまけに奈良県側の境 界は300mに満たない里山と水田が複雑に入り組んだところにある稜線からもはずれた場所(偶然 だが、奈良県側の境界も麓の京田辺市側に天王という集落がある)、この山頂で大の字になれば3府 県にまたがって寝転がれると思ってきたのだが、展望の利かない雑木の疎林、イノシシの匂いが染み 付いた森で大の字はちょっと無理。
舩谷山山頂

ただ、赤い境界杭の横に生えている木に色とりどりのテープが巻かれている。ここで径は北と西に分 岐する。あまりにあっさりと着いてしまったので、確認のため北のルートも歩いてみる。シカが一頭 駆け抜けていった。元に戻って境界杭沿いに下る。青いビニールひもが付けられている為迷うことな く西側鞍部に到着(9時12分)。 確かに南側から鞍部を越えて北側に下っていく道が残っている。今日は南へ。気がつけばいつものよ うにルートをはずれて獣道をMTB担いで進んでいる。軌道修正、ようやくMTBに乗れたと思った らもう林道手前。林道に出てからは鬱憤晴らしに天王まで爆走した。         (本日の走行距離 109km) 2001年6月3日(日)宝塚北部/検見山〜古宝山〜馳渡山(2.5万図 武田尾) 勤務先の女性達とのヤブ山歩きも早や5回目、表記の低山をつないで歩く。本日の参加メンバーは毎 回出場で成長著しいコンパス姫、“元気一発”トレックF代の2人。朝から快晴、暑くなりそうだし、 ヤブ山歩きは早めに終えて、宝塚に戻って焼肉でも食べに行こうというお気楽山行のはずだったのだ が… 8:30発の阪急田園バスで十万辻に向かう。MTBで走ると死にそうな上りもラクちんのうちに到 着、同じバス停でハイカーが一人下車する。すでに標高350m、本日の最高点、検見山との高低差 わずかに100m少々という今までにないラクラクルートだ。9:00十万トンネルの上で本日のコ ースを改めて説明、検見山登山口に向かう。と何を勘違いしたか、いきなり手前の登り口から入って しまい、ゴルフ場の中へ。Jスカイスポーツで2時30分までジロ・ディ・イタリアのプロローグを 見ていたせいか、まだぼけているようだ。 立合新田への道を少し下りかけたところにある正規のルートから登りなおす。樹林帯の中を歩くこの コースはクモの巣さえ気にしなければ涼しくて気持ちのいい山道だ。おまけにウグイスをはじめとす る野鳥の声があたりにこだまし、快適森林浴コースといったところ。9:30山頂西肩の鉄塔でドリ ンク休憩、切畑に向けて北尾根コースを行く。登りが少なくて下りが多いこのルートは2人には物足 りないか。眺めのいい鉄塔も何ヶ所か現れるが、日当たりのいいところはとにかく暑いので早々に先 を急ぎ、10時過ぎには県道へ出、切畑に向かう。 一つ目の検見山を軽くこなしたところで次は古宝山だ。8年前に北東側の工事現場のようなところか らMTBを押して登ったことはあるが、今日は地形図に忠実に集落の中の道から西に向かう林道幅の 道を辿ることにする。中年のサイクリストがやってきて「古宝山に登るのですか」と訊きながら追い 越していく。道を左に折れ、林道終点の谷地形の入口までやってくるとさきほどのサイクリストが待 っている。話を聞くと彼も古宝山に登ってきたらしいのだが、それは8年前に私が登ったコースのよ うで、今から我々が登ろうとしている地形図コースの入口を確認しようとしているようなのだ。 農家の前を横切り、畑の中を登っていくあぜ道なのだが、どう考えてもこの道しかない。自転車を担 いでない気楽さも手伝い、「ま、行ってみますわ」とサイクリストに声をかけ登り出す。ところが谷 はすぐにどん詰まりとなり、踏跡すらない状態に。小さな溝を右に渡る踏跡を見つけたコンパス姫、 その道に期待を託して進むとなななんと・・・目の前に突如現れた古代遺跡の城壁か、と思わず叫ん でしまうような巨大な岩が6〜7段積み重なった「壁」に行く手を阻まれる。 先を行くにはこの「城壁」を登るしかない。さいわい今日のメンバーはサバイバル向き、覚悟を決め たか、彼女達も登り始める。「ファイト一発の宍戸開みたいやわ」とトレックF代、「そしたら私が ケイン・コスギ?」とコンパス姫、「うわあ、何でええ方とられるんやろ」とわいわい言っている。 どうやら足がかりを見つけて移動するのは「ケイン・コンパス姫」の方が上手なようで、「宍戸F代」 は手を差しのべて引っ張り上げてもらうほうだ。
古宝山取り付きにて
ファイト一発コンビ 岩を登る

「宍戸F代」を引っ張り上げてヤブの中を歩き出すと、またしても「城壁」出現。さっきのよりは高 さも低く4mくらいだが、岩にイバラが絡みついており、結構やっかいな状態になっている。イバラ の比較的少ない場所に移動、トントンと登って後続に手懸かりを教える。ここでもスイスイと登って きたのは「ケイン・コンパス姫」。「宍戸F代」は途中で立ち往生の場面も。 こうして2段構えの巨石の壁を登り切る。10mも行かない内に砕石で固められた林道に飛び出す (10時40分)。結局、工事現場からの道に合流してしまったわけだが、破線の通りトレースでき たところで、最後は激坂登りが待っているわけだし、早めに岩を伝ってエスケープしたのは正解だっ たかも知れない。 さて、ここからは歩行も捗り、10分ほどで古宝山東肩のNo191の鉄塔に、さらにNo190の 鉄塔を過ぎ、分岐を西北西に取り11時08分古宝山山頂に到着。せっかく苦労して登った古宝山、 記念に山頂の3等三角点にタッチするように促せば、三角点の横に立っている『基本測量  三角点 を大切にしましょう』と書いた白い標識を撫でるコンパス姫。「三角点はそれとちゃうやろ。今まで に何べん三角点見てんねん」と思わず突っ込まざるを得ないボケをかましてくれる。 どっと疲れが出たところで昼食タイム。祠の前でゆっくり休息を取る。古宝山は西麓の玉瀬からこの 祠までしっかりとした道がついている。今は荒れるにまかせた祠だが、昔は麓の人達からの信仰を集 めていたものと推測される。 11時45分、十分休んだところで行動開始、下山に入る。中腹にお堂のあるこの道は下るにつれて はっきりとするが、最後だけ他人の家の軒先をかすめながら県道に出るようになっている(12時0 1分)。 2つ目の山もクリア。再び県道を歩き、玉瀬のバス停に(12時10分)。さて、ここから武田尾ま での山道はコンパス姫とトレックF代に先頭をお願いする。アップダウンは少なく、道はしっかりし ているが枝道が多く、コンパス片手に地図読みのお勉強をするには面白いコースだ。人の後をついて いくのはラクだが、おまかせになってしまって面白くないのも事実。おまけにクモの巣を払う手間も 省けるという個人的な思惑も。 まず最初は「お姉さん」のコンパス姫。地形図とコンパスを片手に持ち、結構真剣に前を歩いていく。 真剣なのは口数が極端に減ったことでわかる。12:30に林道合流、途中左手に現れる小さな池で 卵から孵ったばかりのオタマジャクシや大きなコイを見たりと自然観察を入れながらも13:05、 242.4m4等三角点に到着。順調だ。 ここでトレックF代を先頭に指名、歩き出したが私のチェック・ミスでいきなり南西に伸びる尾根筋 を歩き出してしまう。冬場に歩いたことはあってもすっかり景色が変わってしまう夏場の山、場所が 場所だけに気楽に考えて歩いていたが、道は南西から更に西に振ろうとしている。トレックF代を止 め、来た道をバック、展望の利く場所に出て現在地を確認すれば馳渡山へ続く稜線は谷の向こうに伸 びている。 いったん修復を試みようと谷の最奥部に下っていく踏跡を辿ろうとしたが、どうにもヤブが深くなっ てくるようなのであきらめ、先ほどの展望の利く場所に戻る。はるか下には第1武田尾トンネルが見 え、南の山間には武田尾温泉の建物の屋根も見える。Ca250ピークの上にいるようだ(13:4 5)。さて、どうやって線路が通っているところまで降りるか。すんなり辿り着ける自信はまったく なかったが、2人を不安に陥れてはと思い、水分補給を摂って余裕を見せてから下る準備に入る。急 斜面を下る前に東側はどうなっているのだろうと移動すると踏跡があるではないか。あちこちルート 探索を試みてみるものだ。これでヤブ漕ぎせずに済む。 ところどころ赤テープが巻いてあるルートで道といえるほどのものではない激斜面の下りだが、木に 掴まりながら15分ほどで沢筋に下りる。コンパス姫とトレックF代が1回ずつずっこけたようだが、 残念ながら決定的瞬間は見逃してしまった。沢筋には踏跡が上がってきている。この辺はいろんなと ころに踏跡がついているので道を間違えても新たな道を発見できるという面白さがあるが、その面白 さをわかるまでには何度も道迷いの経験を積む必要がある。 5分ほどでトンネルから出てきた線路の下をくぐり武田尾から道場に続くハイキング道に出た。これ でもう安心だ。ラクちん山歩きのはずがなかなかハードな山歩きになった。サバイバル好きなトレッ クF代に「今までで一番のサバイバル度ですね」と言わしめてしまった。あとは武田尾でアイスクリ ームでも食べよう。2人を元気付けて武田尾駅に向かった。 2001年6月9日(土)篠山/白髪岳〜松尾山+丹波茶の里巡り(2.5万図 篠山) 先週に続き連チャンでのヤブ山歩きの会。第6回の本日はハイキングガイドでもおなじみのコースで ヤブではない。当初3日(日)に丹波茶祭りとセットで企画したが、当日参加できないミスB、ミセ スFの2人から懇願され本日にリスケジュールしたものである。 本日のメンバーは前述の2人にコンパス姫とF代の“ファイト一発”コンビを加えた4人、レギュラ ー陣総登場といったところ。コンパス姫とF代に岩登りを楽しんでもらおうと企画した山歩きだった のだが、はからずも先週古宝山の取り付きでリハーサルをやってしまったので何ら問題はなさそう。 不安だった天気まで好転し、死角なしというところだ。(トレックF代は今回からトレックがはずれ た。しばらくマウンテンバイカー志望の看板をひっこめるとのこと。私がビビらせ過ぎたか・・・) 8時28分、古市駅下車。支度を済ませて住山登山口に向かって歩き出す。長い舗装路歩きが続くが 先週泊まりで九州の久住山に登ってきたミスB、ミセスFの話を聴きながら歩いているうちに三叉路 の分岐も過ぎ、登山口に着く(9時32分)。 7年ぶりの白髪岳だが、登山口周辺もえらく開けてしまって様変わりしている。登山道も木製の階段 やロープが張られ、整備され過ぎているというのが正直な感想。確か以前はもっと尾根筋に向かって 直登したような記憶があったが、意外と簡単に尾根筋に着く。MTBを担いで登れば「地獄の急登」 も手ぶらで登れば「ただの急坂」ということか。でもそんな私のペースに惑わされて登る4人にはき つかったようだ。 彼女達の到着を待ってしばし休憩。先行していたハイカーと言葉を交わす。彼も宝塚から来たという。 そうこうしているうちに「頂上だ」というF代のガセネタに乗せられて最後の力を振り絞ってやって きた。「頂上はあれやで」と指差す非情の一声に一同げっそり。木陰に移動して休憩の後歩き出す。 尾根筋に乗ると急登はなくなり岩場歩きに変わる。それでも新しく整備された登山道はなるべく岩場 を巻くように作られており、拍子抜けするほどだ。極めつけはこの山最大の岩場まで右に木の階段の 巻き道が付けられている。それはないだろう、この山の魅力はここの登りのハズだ。というわけで敢 えて岩場登りのルートを選ぶ。てっきり迂回路で助かったと思っていたF代はちょっとショックのよ うだったが、腹をくくって登り始める。とはいっても先週の変な岩場登りに比べたら簡単だったよう で、上でカメラを構える私に向かって全員余裕のポーズ、あっという間に登り切る。
白髪岳 岩場の登り

岩場の上は絶景だ。1月雪の中を登った虚空蔵連山を南に見下ろし、西に西光寺山、奥に妙見山を見 る景色は迫力満点だ。ここで帽子、Tシャツ、ズボンからウエストポーチまでモンベル一色で統一し ているコンパス姫を岩場の端に立たせて撮影会を開く。高度感が巧く撮れればモンベルのカタログ用 写真に応募してみようというバカなお遊び。モデルのコンパス姫はその気満々、ただ立っているだけ では面白くないからとドリンク片手にポーズをとってもらったが、これが失敗。清涼飲料水のCMの ようになってしまった。
モンベル製品撮影会のはずが
清涼飲料水のCM

みんなでワイワイ言いながら交代で写真を撮り合っているうちにどんどん後続のハイカーに抜かれて しまった。いつの間にか10時30分になっている。ぶよのような小さな虫もたくさん集まってきた。 特に虫に好かれたミスBが可哀相。とにかく虫を振り切って歩くこと10分少々で山頂に。いつの間 にか周辺の木が生い茂って昔のような眺望がない。相変わらず虫もひどいので2等三角点に触れただ けで下山にかかる。 腹ぺこ状態のF代もこの虫では納得するしかない。その代わりといってはなんだが、無風、湿度も高 いということもあって松尾山はパス、肩越えの辻経由で文保寺に下ることにする。山頂からの下りは 急、「コンパス姫危うし」といった場面も見られたが11時55分文保寺まで下ってきた。ここ味間 奥はミセスFの祖父母の家があるところということで、そんな話を聴きながら重要文化財の山門の前 でゆっくりと昼食を楽しんだ。         2001年6月16日(土)園部/大河内557峰(2.5万図 埴生) 梅雨に入り湿度の高いこの時季、登れる北摂、丹波の低山は限られている。今日目指す山は園部の瑠 璃渓を下った突き当たり、大河内の集落の北に聳える標高点557mの無名のピーク。以前から通る たびに頂上近くまで伐採された姿を見るにつけ他の山がヤブに包まれる頃に登ろうと決めていた山だ。
大河内557峰

5時29分、曇り空の下を出発。今日はMTBで走れる山ではないのでロードだ。ここんところ深山 方面へのツーリングが続いている。北寄りの風が吹いているが、帰りは追い風になるので大歓迎。快 調に泉郷峠、天王峠と越えて福住に下り、安田のコンビニでドリンクを調達する。大飯(若狭)まで 走るというライダー達と互いのツーリングの安全を祈り、天引峠、法京経由で瑠璃渓、八田との三叉 路(実際は新道が出来ているので4本に分岐)に着く(8時10分)。 一番東側の尾根が最も高いところまで伐採されているようだが、傾斜はかなり急。東南東側の農道を 進み、シカ除けネットを2度くぐって地形図の水田マークのところから尾根に取り付こうとしたが、 ヤブと湿地で登れず、東南東奥の畑を南側へ回りこみ、梯子を登り、小さな池を右手に見て南東尾根 に登る。 この尾根も伐採されて展望が利く。本来登るべきはずであった尾根が一段高く北に連なっている。展 望はいいのだが、背の低いイバラなどに悩まされる尾根だ。踏跡程度の道を辿る。南側には天狗山が 鋭い稜線を見せている。肉眼でははっきりと確認は出来ないが、山頂近く東端に一ヶ所植林が途切れ ているところがある。天狗岩か。 南東尾根の踏跡は傾斜が急になる辺りで消滅し、雑木ヤブに突入する。急斜面に雑木が密生する強烈 なヤブで、高い湿度と急登の汗に加え、昨日までの雨で濡れたヤブを漕いで登る内に全身ズブ濡れに なる。こういう事態を避ける為にこの山を選んだはずだったのだが、北摂最奥部の山は甘くない。 8時59分、必死の思いで東西に伸びる山頂尾根に立つ。Ca550ピークより100mほど東側の 地点だ。この山頂へ続く稜線にも踏跡はない。若干木が疎らなので歩きやすいという程度。Ca55 0ピークを過ぎ、小さなアップダウンをこなし557ピークに到着する(9時14分)。アカマツの 巨木をはじめ大きな木が多い頂上部はなだらかで広く、頭上を覆う木々から滴り落ちる雫は原生林の 森に迷い込んだよう。勿論登頂標、テープの類なし。
丸く広い頂上

さて、下山をどちらにとるか。南南西麓の大山祇神社方面に下りる踏跡があるとふんで南西斜面を下 りかけたが、どうにも道がない。ヤブとなれば登りよりも更に長いヤブ漕ぎとなりそうだ。もう御免 蒙りたい。557ピークからCa550ピークへと来た道を戻り、真東へ短いが猛烈なヤブを漕いで 伐採ポイントに出る。 まずは一安心。やや北寄りに振る尾根筋の激斜面を下り、途中から南東に向かう支尾根を下る。ドリ ンク補給をしながら今下ってきた激斜面を眺めているとガサガサという音。見ると谷をはさんで西側 斜面に2頭のシカがこちらを向いて様子を窺っている。いつもは目の前を瞬間的に横切ったり、見つ けた時には既にヤブの彼方へ走り去っていく白い尻毛しか見ることができないシカだが、今日は距離 もあるせいか動く気配はない。 初めてカメラに収めることが出来るかも知れない。おもむろにしゃがみ、ウエストバッグからカメラ を取り出すと、立ち上がって構える。シカが走り出した。撃たれるとでも思ったのだろう。やはり無 理か。シカを捉える前だったので諦めかけたが、伐採された斜面を斜めに走ってくれたので撮影する ことに成功。さあ、どんな風に写っているだろうか。惜しむらくはズームで撮れなかったことだが欲 を言えばきりがない。 10時ジャストにもとの農道に戻ってくることができた。イバラで血まみれになった膝についたドロ を落とし、再びロードにまたがる。北寄りの追い風に面白いようにスピードアップ、能勢にある喫茶 店でモーニングを食べ、一庫でパンク・トラブルもあったが、12時37分家に辿り着いた。      (本日の走行距離 112km)

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