山を駈ける風になれ2001年9月号

 
2001年8月4日(土)猪名川/大野山〜花立岩(2.5万図 福住)
毎年何回かは登っていた大野山だが、ここ2〜3年は年に1回登るのがいいところ、今年は今日が
初めてだ。今日の目的は来週予定しているスペシャル・ツーリングに備えたMTBで上りのトレー
ニングとかねちゃんのホームページで紹介されていた上ノ山頂上付近にあるという展望の大岩を訪
れることの2つ。何度も登っている割には知らないコースやポイントが多い。というのもいつも山
頂に登った後、林道爆走を楽しんでいるからなのだが…
5時39分出発、今年は連日猛暑でやっと涼しくなってきたなと思ったらもう朝だ。ここのところ
MTBでの快走が続いているが、今日もいいペースを刻んでいる。途中笹尾にあるコンビニで食料
調達、6時59分杉生に到着、水分補給をたっぷり摂る。
だいぶ日が高くなってきた。気温が急上昇を始めたのがわかる。大野山の山頂は涼しいだろうか。
ここからはだらだらと上り坂が続く。昔は細かった道もずいぶんと整備されて走り易くなった。柏
原で少憩、本格的な上りに入る。
いつもなら何回か休みながらの上りとなる大野山アルプスランド行きの林道だが、やはり調子がい
いのか、ノンストップで大野山山頂に到着(7時59分)。山頂を吹き抜ける風は涼しいが、カン
カン照りで決して涼しいとはいいがたい。サンドイッチをほおばり暫く景色を見ていたが、どうに
も暑いので20分ほどで下りに入る。
尾の山無線中継所の横から右手の広場方向に折れ、林道の下りに入る。いつもならこのまま一気に
ゴルフ場の入口まで下ってしまうのだが、今日は上ノ山への取り付き口を探しながら下る。ちょう
ど上ノ山頂上部のすぐ南のポイントで林道右手の山側に「花立岩」と書かれた赤い標識が現れる。
見上げると20mほど上に巨岩が数個縦一列に並んでいる。
岩の周辺だけササが刈り込んであり、林道からの取り付きには登り易いようにロープが垂らしてあ
る。かねちゃん報告の頂上南の展望岩だろうか。前からこんなのあったっけ。これなら林道を爆走
していても目に飛び込むはずだが、それにしても早くも観光スポットになろうとしているようだ。
稜線部まで登り最上部の岩にいきなり登ることにする。稜線には踏跡がついている。北側斜面の方
の様子を窺えば雑木ヤブの中に巨岩が見え隠れしている。しかしどうやらこの南側の巨岩が一番眺
めがよさそうだ。とっかかりの少ない岩だが、横に立っているモミジの木を利用すれば登れる。

上ノ山 花立岩北摂の隠れた展望台

「おおっ」、正面に大船山が臨める岩の上はうわさに違わぬ展望台。東側の森が木陰を作ってくれ る絶好のプライベート・ビュースポット。広さも4.5畳くらいはあるだろうか、ここで寝っ転が るのは最高だ。何で暑い大野山山頂で20分も休んだのだろう。さっさとここにくればよかった。 ゴルフ場でプレイするゴルファー達を眼下に臨みながら周囲にこだますウグイスの声をきく。三国 ケ嶽、峰ケ畠、千丈寺山、羽束山、大船山、昼ケ岳。手前は今年1月に縦走した西奥山から青ケ原 の山並み。申し分のない展望が広がる。 しばらく寝転んでいたかったが、そういうわけにもいかず岩を下る。落葉の季節になったらこの周 辺をもっと探索してみたい。ハイキングコースとしてよく親しまれている大野山だが、少しルート を変えてみたらまだまだ知らないところだらけだ。林道に戻り、ゴルフ場横から柏原の下りで今年 の最高速度を記録、以降も30km/h台前半のスピードをキープ、猛暑をものともしない満足な 走りでゴールイン。         (本日の走行距離 80km) 2001年8月12日(日)四国/剣山〜高知(2.5万図 剣山、5万図 北川、大栃)    ◎プロローグ 「あれだ!」 力のこもった声で、大勘がこう指さした。 四人は星越峠を踏んでいた。 「えっ、剣山?」 「あれが剣山です。次郎笈と矢神丸の間から、肩を張りだしている山がそうです。」 「アア、あの…」とお綱も大勘が指すところを指さした。  弦之丞も黙然と、ふたりの見まもる山を見つめている。お綱は何かの感慨に衝たれて、白雲の流る る行手に佇立した。…… 法月弦之丞と見返りのお綱ら一行が剣山中の石牢に囚われの身となっている幕府隠密、甲賀世阿弥を 救出するべく剣山に向かう途中の一節である。吉川英治『鳴門秘帖』、剣山の巻である。もう30年 近く前にもなるだろうか、血湧き肉踊る展開に一気に読み通した記憶がある。 今、見の越に立って剣山を仰いでいる。ここから山頂は見えない。ここまで登ってきて尚、深い谷底 にいるような錯覚に陥る。この山を登るのだ。これからの山行を共にするのは見返りお綱ではなく、 アメリカ生まれのMTB、JAMISのDAKOTAだ。 週末マウンテンバイカーの年に一度のささやかなお泊りツーリング。今年は四国第2の高峰、剣山に 登り、スーパー林道のダウンヒルを楽しんで、物部川沿いの渓谷を下りながら高知まで走るという 「海外スペシャル」バージョン。お盆に徳島の実家に帰省するという同僚のT課長のご好意で実現し たツーリングだ。 8月11日(土)朝7:30、中国道宝塚IC近くの交差点でT課長の車に拾ってもらい、トランク にMTBを詰め込み、徳島目指す。徳島は今、一年で一番「熱い」時季を迎えている。阿波踊りであ る。帰省ラッシュは始まりかけていたが、神戸JCTから山陽道に分岐する頃からはガラガラ。10 時半過ぎにはご実家のある三加茂町に到着する。ご実家は事業を営んでおられる弟さんが守っておら れる。歓待を受け泊めて頂く。 ◎1stステージ:剣山へ  12日(日)6時、剣山に向け出発する。といっても登山口の見の越までは、T課長の車の助手席 でラクちん移動である。ハンドルを握らせたら、今でも爆走モードのT課長、華麗なハンドルさばき に酔わなければいいが…。  まずは吉野川沿いにR192を貞光方面へ。4年前、ロードでこの道を走ったことがある。懐かし い。貞光で南に折れR438に入る。趣きのある町並みも祭りの準備万端といった様子を見せている。 町中を抜けると道はいよいよ深山渓谷の道となる。遥か上方、信じられないような急斜面に家がポツ ポツと見える。 一宇村に入ったところで土釜を見物。滝が岩をくり貫いて作った甌穴で、二の釜、三の釜と見事な滝 壷が連続している一宇峡中流域の名勝だ。記念撮影を済ませ更に剣山中奥深くへと分け入る。 6時50分、剣橋。ここから本格的な上りに入る。見の越まで17km、標高差1,000m、平均 斜度5.9%はピレネーのツールマレー峠(ツール・ド・フランスでよく知られる有名な峠、2,1 15m)を少しなだらかにしたクラスか。少なくとも私にとっては「カテゴリー超級」の上り、兵庫 県にはないダイナミックなルートだ。ロードで挑戦してみるのもいいかも知れない。 剣山スキー場を越え、夫婦池が近くなってくると重畳たる山々の大パノラマが広がる。ちらっと剣山 も見える。あれか。となりでT課長も「ほんまにあれ越えて行くんですか。信じれんわ。あんなとこ 道あるんですか」と言っているうちに見の越のリフト前駐車場に到着する(7時30分)。 朝早くから大勢の人が来ている。曇、気温20℃は冷房の効いていた車から降りた方が涼しいことで 実感。トランクからMTBを引っ張り出し、組み立ててリフト前で記念撮影。これじゃあ「やっぱり リフトを使って登ったんや」と言われそうだ。 剣山は高校時代以来というT課長も山頂までお付き合い頂けるということで、7時45分、頂上1等 三角点で待ち合わせ、T課長はリフトで、私は登山道をMTB担いで頂上を目指す。 登山道は見の越の駐車場から少し下った剣神社の階段から。待ちにまったMTB登山のスタート、い つも登山口の写真を撮るのだが、立ち止まるのももどかしく、一気に120段の階段を担いで登ると、 境内右手に続く登山道を走り始める。乗れる。部分的にではあるが、断続的に現れる乗車可能な山道 に自然と笑みがもれる。5分ほどでリフトの下をくぐる短いトンネルを通過。「標高1500m」の 標識が立っている。樹林帯の中を「押し」が続くが、よく整備された道で「押し」も捗り、先行する ハイカー達をどんどん追い越していく。 出発から30分弱で西島神社に到着。登山道から少し離れているせいか、それとも標識が腐って読め なくなっているからか、ハイカー達は立ち寄ろうともしない。谷側に巨岩が数個せり出し、根元に祠 が祀られている。ここに『鳴門秘帖』の甲賀世阿弥が閉じ込められていたという石牢がある(無論 『鳴門秘帖』はフィクション)。石牢がどこにあるのかよくわからなかったが、祠は比較的新しいも のだ。
神社裏手巨岩横から剣山山頂頂上にある宝蔵石

登山道に戻って巨岩の上に出ると、剣山山頂が目に飛び込んでくる。頂上にある山小屋もはっきりと 見える。振り向くと疎林越しに塔の丸が悠然とその巨体を横たえている。このあたりから多くの高山 植物やら、白骨林、刀掛の松など撮影ポイントが多くなって立ち止まっている時間が長くなってきた が、あくまでも最短の尾根道コースを行けば、8時50分山頂の宝蔵石の前に到着する。 登山口から1時間少々、拍子抜けするほど簡単に頂上に着いてしまった。滝のように滴る汗も頂上を 吹きぬけるガスで冷やされて気持ちいい。きっとリフトで登ってきた人は寒く感じているに違いない。 山頂の山小屋の中を覗いたりしていたら、ちょっと震え気味にT課長が三角点から戻ってきた。日本 で2番目の高所にあるという測候所(今は無人)をカメラに収め、三角点のある最高点までMTBを 「押し」ていく。 植生保護のため木道が敷かれていて乗りづらい。平家の馬場と呼ばれる準平原の頂上部はシコクザサ が一面に広がり、その間を色とりどりの高山植物が今を盛りと花咲かせていてこの世のものとは思え ない美しい景色を展開してくれる。途中から出てきたガスのため、あいにく絶景は臨めないが、ガス によって幻想的なムードが醸し出され、見えない分余計に想像力をかきたててくれる。 1954.7m1等三角点のある周りは登山者達が積み上げたケルンに埋もれてしまい、「三角測量」 の白い木がわずかに見えるのみだ。付近の景色を眺めながら暫く休憩する。目と鼻の先にある次郎笈 もガスに包まれて見えない。山頂の気温17℃は猛暑続きの大阪よりも20℃も低い。ここにいれば あの暑さがうそのようである。 「ほんまにここから先行くんですか?信じれんわ」…今回お世話になりっぱなしだったT課長とはこ こでお別れ、ガスに包まれた南西尾根を下る(9時30分)。
剣山山頂です山頂 平家の馬場

◎2ndステージ:次郎笈へ 次郎笈(ジロウギュウ)は剣山の南西1.5kmにある標高1,929mのピラミダルな山。変わっ た名前だが、剣山も昔、太郎笈と呼ばれていたらしいから兄弟峰ということだろう。ただ、剣山が丸 みを帯びたなだらかな山なのに対し、次郎笈は鋭角的な山と好対照、多くの山岳ガイドでも剣山と一 対ではなく、単独で紹介されている山である。 さて、その次郎笈目指し南西尾根を下る。はじめのうちは急斜面のジグザグ下りでMTBは担いで行 かないといけないが、北からのトラバース道と合流する頃からは、ササ原の稜線をカッ飛ばす快適シ ングルトラックが始まる。去年走った生野高原の段ケ峰山頂からフトウガ峰にかけての稜線を思い起 こさせるコースだ。ただ違っているのは、ススキではなくてシコクザサなのと下りきった正面に次郎 笈の巨大な山体が天に向かって突き上げているということ。文句なしの迫力だ。一気に走りきってし まうのがもったいない。時々ガスが流れて周囲の景色が広がると思わず止まってカメラを構えてしまう。 多くのハイカーで賑わっていた剣山山頂とは異なり、次郎笈へのコースを行く人はまばらで視界もよ く効くので遠くから声を掛け、道を譲ってもらってすり抜ける。1,791m標高点の左を巻く道は 下りの反動でクリア、あっという間にジロウギュウ峠(1,770m)に着く。
次郎笈への下り始めにある奇岩MTB ハイウェイ(ガスかかる次郎笈)

再び登りが始まる。おそらく今日一番の急登だろう。MTBを肩に担げば、ひいていた筈の汗がどっ と噴出す。三嶺縦走のトラバース道を右手に見送り、グイグイと登る。頭上に圧し掛かるような感じ がするが、涼しいせいか意外にも歩行は捗る。 「どこまで行くんですかあ。」「はりまやばし。」岩場で休憩中の若い女性の驚きの声を背に受けて、 更に先行する中年女性をかわすと、「ええっ!? ちょっとーやめてよー、冗談でしょう。何で自転 車を担いでいる人が、何にも持ってない私よりも早いのよー」 調子に乗って更に加速、一気に頂上に着いたと思ったらそれは北側のCa1,910ピーク。次郎笈 の山頂は100mほど南東だ。上り勾配も緩く乗車したまま「次郎笈山頂」の登頂標が立つ山頂に到 着(10時07分)。剣山から37分、途中で写真を撮ったりしていなければ30分といったところ か。自分でも驚くほど早い。 山頂には7〜8人の中高年ハイカーが食事をしたり、高山植物を眺めたりしている。MTBに跨った まま乗り付けてきたのにはびっくりしたらしく、一躍彼らの話の主役になってしまう。ピンク色の可 憐な花がシコクフウロだと教えてもらったりしながら、軽食休憩を摂る。剣山山頂にいた、いかにも ロープウェイで登ってきた、といった感じの人はなくなる。わずかな歩きでこんなにも静かな山頂に 立てるのにそれすらも厭うのだろうか。 ジャムパンをしっかり胃袋に収めたところで山頂に憩うハイカー達に見送られ出発(10時25分)。 一旦Ca1,910ピークまで走って戻る。ここを左に下ると三嶺への縦走路に合流する。 ◎3rdステージ:丸石へ 次郎笈からの下りは激下りだとガイドには書いてあったが、実際下ってみるとそれほど大した下りで はない。確かに乗車したまま下るのは難しいが、それとてもテクニックのある人ならば乗ったまま下 ってしまうのでは、という程度だ。 南からガスが稜線を吹き抜ける度に、ホワイトアウト状態になる。もうすれ違うハイカーもいない。 いつもの静かなMTB山行が戻ってくる。吊り尾根の下りは10分ほどで、次郎笈の北側からの巻き 道に合流、俄然乗車率がアップする。1,800mの稜線を走っているとは思えないほどのしっかり した道で、道幅こそ50cm程度しかないが、山道は枯れたササがしっかりと道を固めており、ジェ ットコースターのような走りが連続する。 いきおい余って2回ほど谷側にコースアウト、ササは深く転がって落ちる心配はない。1767標高 点手前で丸石との鞍部から登ってきたというハイカーとすれ違う。ここでMTBに乗った人と出会う のは初めてだという。このあたりマウンテンバイカーに会うのは初めてだという人が多い。四国のマ ウンテンバイカーはどこを走っているのだろう。ここでも恥ずかしいほどの激励を受ける。自分とし ては普段のヤブ山よりはるかにラクだと思っているのだが…。 1767標高点を過ぎるとササ原の大海原を縫うように下るダウンヒルは更に快走度アップ、丸石の なだらかな巨体を見ながら標高を下げて行く。下り着く視線の先には剣山スーパー林道が見えている。 10時58分、丸石と次郎笈の鞍部に到着する。登山道は左、スーパー林道方面に下っている。正面 の丸石へはシコクザサに隠された径を行くようだ。よく見ると前方の丸いCa1,640mピークに 向かって2人の登山者がササヤブを漕いで登っている。ザックにくくりつけた銀色のマットが光って いる。
丸石鞍部への下り丸石山頂

登山地図には「草原の道」と書いてあったが、そんないいものではない。丸石へはピストンの予定な のでMTBを分岐に置いてササヤブをズンズン進んでいく。始め膝下程度だったササもCa1,64 0ピークに近づく頃には腰まで沈むほどの深さになる。丸石まではだいぶ距離がある。先行する登山 者2人は荷物も大きく難渋しているようだ。こちらは荷物も少ない上にササヤブの歩きは慣れたもの、 あっという間に追い越し先を行く。 11時13分、丸石山頂に着く。標高1,683.8m、3等三角点の標石が埋まっている。頂上部 分だけササが刈り払われていてヤブから解放される。塔の丸方面の展望がいい。ゆっくりと水分補給 をしていたら背中をアブに刺されてしまった。さきほどの2人はまだ遥か下で休んでいる。ササ原の 山頂を堪能したところで下山にかかる。 ◎4thステージ:剣山スーパー林道へ ササヤブの下りは足元が見えない分滑りやすい。15分ほどで鞍部の分岐まで戻ると、MTBにまた がって林道への下りに入る。しっかりとした登山道がついている。標高差にして200mほどの下り、 ジグザクに切られているため、地形図で見るほど急下降ではない。分岐から20分足らずでスーパー 林道登山口に下り立った(11時50分)。 さあ、山道は終わった。ここからは標高差約1,000m、剣山スーパー林道のダウンヒルの始まり だ。足元についた泥を落とし、ササの葉で切り傷だらけになった脛を拭いて、下り始める。 道幅のある林道だが、全線未舗装路、砂埃を上げてMTBは下っていく。連続するカーブ、砂利が浮 いた路面、吸い込まれるように下っていく道。ブレーキレバーから指を離せばスーッとスピードは上 がって行くが、慣れない道だけにどうしても慎重な下りになってしまう。何しろ日本一長い林道であ る、延々と続く下りもハンドルバーを握る両手は削岩機の上にずっと乗っかったような状態になって、 次第に握力が無くなってくる。林道の左手は高の瀬峡、深い山間の絶景が続く。 途中でオフロードライダーに2台抜かれる。重量が軽いMTBはオフロードバイクのように飛ばすこ とが出来ないのが残念だ。でも彼らが走れるのは林道までだ。橋を渡って高の瀬峡を右手下に臨むよ うになるとスーパー林道も終盤に。50mほど下の滝壷で気持ちよさそうに泳いでいるのが見える。 いいなあ。こういうのを見ると何で炎天下、走り続けているのだろうかと考えてしまう。 12時41分、林道終点の平橋(たいらばし)着。15.71km、41分少々は平均にして22. 5km/h、部分的に上りもあったし、渓谷美を眺めながら下るにはちょうどいい速さだろう。 ◎5thステージ:四ツ足峠から高知まで 暑い。今頃になってカンカン照りになってきた。ここから高知まで70km少し、ずっと炎天下の走 りになるのかと思うと辛いものがある。それでも四ツ足峠トンネルを越えれば下り一本なのが救い、 と言い聞かせてギアを一気に軽くしてゆっくり上る。大きなカーブを曲がった先で榎木谷トンネルと いう短いトンネルを抜け、じわじわと峠を目指す。平橋から3kmで峠に着くと見ていたのでMTB に取り付けた積算計であと1kmだと思いながら上っていると突然「四ツ足峠トンネル2km」の標 識が現れる。「え?」思わずげっそり。やめてくれよと気を取り直してペダルを回せばやっぱり1k m進んだところで前方にトンネルが現れる。 「なんだ、やっぱり1kmじゃないか。一体どうなってんだ」と思いながらMTBをトンネル手前に 停め記念撮影(13時03分)。面白い名前のトンネルだ。きっと何かいわれがあるのだろう。 トンネルの中の冷やこい空気を全身に浴びながら徐々にスピードアップ、30km/h台前半まで加 速する。四ツ足峠トンネルは長い。約2kmの長さがある。トンネルの真ん中が高知県との県境にな っている。トンネルを抜ければそこは高知県香美郡物部村だ。 気のせいか物部村側に入ると一段と山が深くなったように思える。連続するカーブを目一杯スピード を上げて滑走する。トンネルから10分ほど下っていたが、ちょっと腹が減ってきた。物部村農林漁 業体験実習館前の広い駐車場でエネルギー補給をして、また走り出す。ここから物部村の中心部大栃 までの20数kmは、物部川峡谷を眼下に臨みながらカーブとトンネルが連続する下りだ。 雨岡山の北側を回ったあたりだろうか。雨雲が湧き出してくると、突然バラバラと激しい俄か雨が降 ってきた。ペダルを回す度、ササの葉との格闘で作った切り傷がしみる。大木の下でライダーが2人、 バイクを停めて雨具に着替えている。同じようにバイクの先にMTBを停めると、ザックにカバーを かけて走り出す。ライダー達はまだお着替え中だ。モーターバイクと違って人力の自転車は雨具を着 けても蒸れて濡れるだけ。どうせ濡れるなら俄か雨の方が涼しくて気持ちがいい。 案の定、トンネルをいくつか越えているうちにすっかり雨は上がってしまった。一方、読みがはずれ たこともある。下るだけだと思っていたこのR195、意外と登り返しが多いのである。カウンター 気味に入ってくる短い急坂、下りの反動で上り切れればよいが、そういかなかった時は辛い。しっか りと5万図を読んでおけばよかった。上流から下流に向かって走るので勝手に下るだけだと勘違いし ていたのだ。ここは街中を流れる河川敷のサイクリングロードではない。四国の秘境、奥物部の渓谷 だ。 それでも大栃を過ぎ、香北町に入る頃にはようやく平坦になってきた。周囲を取り囲んでいた急峻な 山も姿を消し、普通の田舎町の風景に戻る。美良布にある道の駅で食事を摂ろうとしたが、何かのお 祭りかすごい人出、おまけにレストランは14時半まで(到着:14時44分)という非情のクロー ズ、仕方なくスポーツドリンクを飲んで走り出す。 土佐山田町に入った。龍河洞方面との分岐、祖母の木交差点で赤信号停止。長いこと信号にお目にか かってなかったような気がする。とにかく剣山を下ってきてから15時にして初めての赤信号である ことは間違いない。変なことに感心しながら土佐山田の町中をぬける。俄然、交通量が増え、信号が 多くなる。 JR後免駅前を通り西へ大きく右折するとゴーッという音と共に、国道中央を路面電車が走り抜けて いく。土佐電鉄だ。軌道を跨いで土電を追いかける。こいつを見ると高知に来たなという実感がわく。 高知市の中心部まであと5kmというところで、ファミレスに入り昼食とも夕食とも言えない食事を 摂る。こういうツーリングはとかく腹が減る前にエネルギー補給を、となるので不規則かつしょっち ゅう食べているような状態になる。 16時30分、店を出て最後のランに入る。4年前市内を走り回ったことがあるので、勝手知ったる なんとやら状態でとても懐かしい。せっかく来たのだからと新しくなった「はりまやばし」も見学、 鏡川にかかる潮見橋を渡るとゴールはすぐそこ。16時58分、旅の終着駅フェリー乗り場に着いた。 ◎エピローグ:余談  夜になって高知市内は雨が降り始めた。早めにフェリーの中に入れてもらい、予約していた2等寝 台の部屋(4人部屋)のドアを開けると、目と鼻の先にこちらを向いて立っていたのは赤毛に青い瞳 の「見返りお綱」。とびっきりの美人だ。一瞬部屋を間違えたかと思ったが合っている。外国映画の 主人公なら、ここで気の利いたセリフの一つでも言えるのだろうが、びっくりした分リカバリーがき かない。相手も黙ってにっこりするだけなので日本語が話せるかどうかもわからない。結局お話する こともなく、目が覚めれば船は南港に入ろうとしていた。         (今回の走行距離 137km) <2001年8月25日(土)柏原/小南山〜奥野々峠(2.5万図 柏原) この時季、低山は暑くてしょうがない。おまけにヤブは深いし、蜘蛛の巣もひどい。でもしばらく北 摂、丹波の低山を登っていないと登りたくなるのはなぜだろう。この夏の大きなイベントでもあった 四国の剣山MTB山行を終え、ちょっと目的を失った格好になっていたが、大きな山はしんどいので 今日は表題の小南山をちょいと齧り、あとはロードでグルッと回ろうという趣向。 午前5時28分自宅を飛び出す。若干曇っていて結構涼しい。R176を快調に飛ばし北上を続ける。 日中はまだまだ残暑が厳しいが、こうやって走っていると確実に秋へと季節が進行しているのがわか る。藍本で霧。晩秋の丹波霧とちがって地表まで降りてきていないが、両サイドの虚空蔵山、海見山 とも裾野から上は霧の中に姿を隠している。と、突然道の左脇から茶色い大きな鳥が何か獲物を咥え て慌しく舞い上がった。 横目でトンビだとすぐにわかったが、2mも離れていないところから飛び立つと随分大きく感じる。 草むらでお食事中だったのか、それとも獲物を捕らえて押さえつけていたところだったのだろうか。 爆走中だったので驚かしていまったようだ。 やや追い風気味なので篠山、丹波大山、追入と快走を続け、気が付けば目の前は鐘が坂トンネルだ。 現在工事中の新トンネルを見ようと思ってたのに忘れたな、と思いながらトンネルを走っているとバ スが追い抜いて行く。いやな予感…。 トンネルを抜け柏原町に入ると霧は姿を消し、青空が広がっている。最高の下りが待っているという のにさっきのバスが…。ちょっと距離を空けて下ろうとすると2トン車が割り込んでくる。「なんで やん」。結局60km/hを出したところで追突しそうになり減速を余儀なくされる。そんなこんな で柏原の中心部を通り抜けたところにある喫茶店に入る(7時46分)。 20分ほど休憩の後、南に下り、小南山の西側から恩鳥峠を越えて南麓から東麓に回り込む。慶佐次  盛一氏『兵庫丹波の山』には近松で有名な「おさん茂兵衛」の鳳越がこの峠のことらしいとある。 さて、登山口を探す。東麓の集落の北西隅から山に入っていく細い道を行くことにする。竹やぶの中 に幅1.5mくらいのしっかりとした道が続いている。ジグザグに登り返しながらラクに歩ける道で、 道の脇の木には「丹波自然友の会」がつけた木の名前を書いたプレートが下がっている。昨日雨でも 降ったのだろうか、森は随分濡れている。おかげでいつもは見えずにひっかかってしまうコガネグモ の大きな巣も水滴がついて白く光り、自然が創り上げた芸術作品だな、と感心する余裕すら。 がしかし、5分ほど登ったところで急に道が背丈よりも高いヤブの中に消えてしまう。この「密林地 帯」は50mほどでまた元のしっかりとした道に戻るが、あっという間に全身びしょ濡れ、かつササ の葉で切り傷状態に。素足だとすぐにこれだ。なんだかむず痒くなった足を掻きながら4等三角点の ある小南山に到着(8時29分)。 もともと小さい山なので登山口から12分程度。三角点の横にはカーポートのような展望台がこしら えてある。晴れていたら展望はいいようだが、森から立ち上る水蒸気でガスっており、譲葉山系の山 々はおろか麓の村もよく見えない。 整備された遊歩道は西に向かって続いている。三角点のあるピークを下って鞍部から登り返すとこの 山の最高点。ここにも休憩所が作られている。やぶ蚊がうるさいので早々に下山。鞍部から南に下っ ている階段を行く。こちらの方が更に歩き易い。次第に東へと振りながら下っていくと最初の登山口 より50mほど南の民家の横に出てきた。 「神南備の榊葉幾度か時雨れても なお色はかわらじ(よみ人知らず)」の歌とともに小南山整備事 業計画の説明板。四面山とも呼ばれるこの山は神南備山。トンネルに変わった奥野々峠を越え谷川回 りで快走を続ければ、今年2番目のAVE.であっさりゴールイン。         (本日の走行距離 132km)

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