山を駈ける風になれ2002年 3月号

 
2002年2月16日(土)氷上/古天神山(2.5万図 柏原、丹波和田)
3週間ぶりのMTB。今日は久しぶりに長距離を走りたい。兵庫県南部に異常低温注意報が出て
はいるが、今日も休んでしまうと足が回らなくなりそうなので、6時36分自宅を出発。6時の
気温−2.9℃は確かに寒い。
今日は四方八方に尾根を張り出し、どっしりと播丹界に存在を示している篠ケ峰の支尾根の一つ、
古天神山〜大谷〜応地坂をつないで歩こうという計画。久しぶりということもあって勢いよく飛
び出したが早くも赤坂峠手前で足にくる。2回週末をパスしただけでこんなにも足が衰えるもの
だろうか。土日は家でゴロゴロしている人達の足はどれだけ弱っているのだろう。想像もつかな
い。
せめて下りくらいは飛ばしたいところだが、寒さで頭が痛く飛ばせない。足が回らないのは気温
も関係しているようだ。グローブについた水滴は当然の如く霜。おまけに今日は眼鏡のレンズに
も霜が張り付く始末。道路脇の葉を落としたサクラ並木も霧氷で白い花を咲かせている。
霧の篠山盆地をぬけ、氷上盆地へ。9時14分柏原駅近くのコンビニで食料調達。母坪、錦橋、
油利と走りついで9時51分小野の集落手前、送電線の真下に着く。関電の巡視路を辿って古天
神山を狙う。さて、「火の用心」の標識はどこだ。猪垣の扉を開け養蜂場の横から尾根筋への道
を探したが、すぐに煩いヤブに阻まれ断念。おまけに膝がガクガクで力が入らない。やばい、こ
んなことは初めてだ。
結局、送電線の真下、ちょっとガレた岩場を強引によじ登って東尾根を目指す(10時05分)。
いつもならガンガン、ヤブを突っ切って行くのだが、如何せん足がこころもとなく、一歩一歩踏
みしめるような感じで登っていく。シダが密生しているところもあるが、全体的に密生度は高く
なく12分で196.7三角点からくる尾根に合流すると10時20分日当たりのいい小さなコ
ブに着く。地形図の270m等高線に乗っかったところだ。水分補給をして先を行く。
しばらく緩やかな尾根道歩きが続く。踏跡がかすかに残っている。303標高点もちょっとした
展望台だ。「ミニ小金ケ嶽」といった雰囲気の岩尾根の上からは木々を突き抜けておにぎりのよ
うな形をした岩を乗せた岩峰が青空に聳えている。たかだか300−400mの山なのにダイナ
ミックな風景である。
303mから岩マークのピークをのぞむCa.330岩ピークには祠がある

一旦下っていくつか岩場を越えて、さきほどの「おにぎり岩」の根元に辿り着く(10時50分 )。(地形図Ca330岩マーク地点)高さは4−5mくらいしかないが、見事な露岩だ。驚い たことに頭の欠けた灯篭がある。先を見るといくつか集まった岩の間に祠が祀られている。これ だけの岩だ。やはり麓の村人の信仰の対象になっていたのだろう。(麓の小野から見える)ここ で昼食休憩。春のような陽気が気持ちいい。 数人が車座になって酒を飲むことができるくらい庇がせり出した岩の下をくぐって尚も行くと左 手から関電の巡視路が合流、ここからは格段に歩きやすくなる。尾根上に設けられたNo46の 鉄塔を過ぎると、何と大柿赤布発見。恐らく小野から巡視路を伝って登って来られたのだろう。 巡視路はほどなく斜面に平行に右手へはずれて行く。 再びヤブが煩くなった尾根を忠実にトレースする。山南・氷上の南北町界尾根が合流する手前の 激登りをこなし11時23分、古天神山山頂に到着。丹波岩の露岩が南北に3ヶ所突き出した山 頂で真ん中の露岩が一番高い。切り立った露岩の上に立てば、シナイ山の山頂に立ったモーゼの 気分。東西に急斜面を落としているので(特に西側は絶壁)抜群の高度感が得られる。
頂上直下岩場から古天神山をみる古天神山山頂からの眺望

篠ケ峰、岩屋山も指呼の間だ。近くの木の枝には大柿プレートが下がっている。南側の露岩に異 動する。こちらは広くて寝転べる。ゆったりと流れる佐治川の流れ、静寂の坂尻、カザシが小さ いながらも堂々たる盛り上がりを見せている。この先どうするか。町界尾根を縦走したいところ だが、ガクガクの足ではそれも無理。一旦戻り、途中から巡視路を辿って小野の集落へと下る (12時10分)。今日ほど自宅までの70kmが遠いと思ったことはなかった。            (本日の走行距離 140km) 2002年2月23日(土)、北摂/鳥飼山〜昼ケ岳〜行者山 (2.5万図 木津) 2ヶ月ぶりに第11回ヤブ山歩きを開催する。今日は“ホームグラウンド”北摂。波豆川を取り 囲む山々をトレースする。真冬にも拘らず大勢の参加、元気な参加者達に天気も味方したか、3 月下旬の陽気となった。 本日のメンバーを紹介しておこう。レギュラー陣からは、暑くても寒くてもいつもクールな歩き のミスB。そして私のレポートに騙されて?本日体験参加するのはKさんに、テツドン、エリリ ンのハッシー夫妻、そしてきみちゃんの4人。Kさんと“健脚”エリリンは前任店が一緒、エリ リンときみちゃんは振り出しのお店が一緒という関係。更に現在はミスBとKさんが、私とエリ リンが夫々同じ部店。更に今回都合で参加できなかったがきみちゃんのご主人と私は前任部署が 同じ、という図示すれば混線しそうな関係にある。さて、今日デビューの4人の中からヤブ山中 毒患者は発生するのだろうか。 8:00川西バスターミナルと集合時刻と場所を指定、挨拶もそこそこに8:05発のバスに乗 りこむ。乗客は我々6名+若干名、それもいつしか貸切状態に。9:00前に六瀬支所前で下車。 ここで改めて互いにメンバーの確認をして出発する。 まずは新興住宅地の中をぬけて香合新田への峠へ向かう。ここは今日初参加のメンバーの足取り チェックを兼ねたプロローグというところ。予想に反してちょっぴりオヤジ体形のテツドンが元 気だ。以前は無かった住宅地を地形を判断しながら抜けるとしっとりとしたいい山道に変わり香 合新田に着く(9時32分)。 「香合」と書いて「こうばこ」と読む。何とも香しい響を持った名前である。ここは宝塚最北の 集落、ダリアの産地でもある。そんなことを説明しながら休憩を入れ、高畑峠への道を進む。い つもMTBを「押し」ながら上るので今日はラクだ。 9時45分、高畑峠に到着。ここで水分補給を促して鳥飼山への登りに入る。ヤブ山歩きのスタ ートである。ここまで男のメンツにかけて頑張ってきたテツドンであったが、ヤブの急登にズル ズル後退、以降順番は私、エリリン、きみちゃん、テツドン、Kさん、ミスB。阿吽の呼吸かミ スB、何も言わなくてもしっかり最後尾を固めてくれている。
鳥飼山登り口の急登

鳥飼山は小さいとは言え尖峰である。初参加組のために何度か休憩を入れながら10時14分鳥 飼山山頂に到着する。息をはずませながらも元気なエリリン。テツドンは汗まみれだ。小さい体 のきみちゃんもなんとかクリア、Kさんはいきなりの急登に若干バテ気味のよう。最後にミスB が淡々と登ってくる。落ち葉の絨毯の急坂は慣れないメンバーにとってはなかなか手強い存在の ようで、既に足に“きている”者が若干名… さて、ここからルートは一旦急下降。足場の悪い径を下る。下りに入るときみちゃんが途端にへ っぴり腰になってスピードダウン。対してテツドンは重力を生かして復活、一行に「声」が戻っ てくる。結構アドベンチャー気分を楽しんでいるようだ。そこまで下りなくても、と言いたいほ ど下ると、今度はカウンター気味に急登がやってくる。ここまで快調だったエリリンも喘ぎ喘ぎ の状態に。 10時45分Ca520mのコブに到着。少憩をはさんで554標高点を越え、11時20分5 92m「本当の」と言われる昼ケ岳山頂に到着する。山頂には地形図上の「昼ケ岳」方面を示す 札がかかっているだけだ。すぐ東側には関電の反射板へ続く道がのびている。ここは現在地を確 認しただけで休まずに先へ進む。 一旦下って地形図上の昼ケ岳山頂に到着(11時45分)。事前の計画では内田池で昼食を予定。 F代がいないので昼食の催促はない、と思っていたらエリリンから催促を受ける。幸いうららか な日差しも浴びて暖かい。昼食タイムを摂る。
背後の山は592ピークお昼は楽し。昼ヶ岳にて

昼ケ岳山頂に初めて訪れたのは9年前だが、そのころは木々が生い茂った狭い山頂だったと記憶 している。だが、今は地元のハイキングクラブの登頂プレートがたくさん下げられずいぶんスペ ースが広くなった。アウトドアで食べる食事ほど美味いものはない。みんな生き返ったようにわ いわいやっている。ハッシー夫妻はおかずの取り合い中。 12時10分行動再開。何の変哲もない下りでエリリン尻餅。お気楽ム−ドで歩いていると今度 は私がコースアウト。慌てて昼ケ岳を下ったすぐの鞍部まで戻り、内田池方面へ下る径を見つけ て軌道修正完了する。 12時50分内田池到着。一足先に着いてみんなの到着を待っていると、コンクリートで固めら れた堰堤を見て、「こんなところまでどうやって工事の資材を運んだのだろう」と言いながら池 の南側を歩いてくるテツドンの姿が見える。波豆からここまで林道が伸びてきているのだが、ま だ彼の位置からでは林道は見えないようだ。 内田池に全員集合したところで、現在地の確認と景色の説明をして、みんなを本日最後の行者山 に案内する。いきなり削ったような山の斜面を登り出したのでびっくりしたようだが、これが行 者山への正式ルートだ。これまでの踏跡程度の径から、更にヤブ山度合いはアップするが、行者 山直下まではほぼ平坦なのでペースも捗る。 13時17分行者山山頂に到着。山頂直下の急登はこたえたようだ。初参加組は完全に足にきて いるようで、そうとう辛そう。「こんなにすぐに痛みが出てくるってまだ若い証拠ですかね」と 勘違いはKさん。既に筋肉が悲鳴を上げているのだ。
行者岳山頂

とりあえず山頂で記念撮影。北西側のビューポイントを訪ねた後、山頂に戻り南西尾根を下る。 途中南へ激下る手前に本日の行程を振り返ることができるビューポイントが現れる。続く激下り もなかなか厳しい道だ。小柄なきみちゃんの後を大きなテツドンが続く。当然、ガード下の制限 高にひっかかったダンプのような事態が頻発する。 13時47分地形図、東西の破線がクロスする鞍部に着く。東は昨年12月MTBを担いで突破 しようとしたら径が無くなって往生したルートだ。西へは径が続いているように見える。全員に もう登りは無いから、と声をかけて下り始めるといきなり小規模な“山抜け”ポイントが現れる。 激斜面をそのまま軽やかに下るが、既に足にきているメンバーにそんな器用なことはできない。 一足先に下りながらルートの確認をしつつ後続を待つ、といったことを繰り返す。ときおり径ら しきものは現れるのでルート自体は合っているようだ。しかし、それにしてもひどく荒れた道で 沢の源頭を下っているような感じだ。下りになるとパワフルになるテツドン、消極的になるエリ リン、登りとは正反対になる面白い夫婦だ。 谷底のようなルートも植林帯の中を下る頃には落ち着いた道になる。14時40分、川原の南、 溜池の辺りに下りてくる。農道の脇でめいめい、着替え、水分補給などを摂る。ちょっと休憩を 取り過ぎたか、一本バスに乗り遅れるというハプニングもあったが、観福寺見学などで時間調整、 15時41分のバスに乗って三田駅へと向かった。初参加のみなさん、お疲れ様でした。 2002年2月24日(日)、北摂/深山〜小倉タワ〜興山 (2.5万図 福住、埴生) 興山とは北摂最高峰深山の東、天狗山北西尾根に位置する706標高点ピークの山のこと。昨日 の“お気楽お散歩モード”からいっきにモチベーションを高めないといけないのが辛いところだ が、今日も3月下旬のような陽気が続くとのことで、走り出すには申し分のない条件が整った。 6時30分MTBでスタート。昨日の歩きの疲れもなく、いつもと変わらぬペースで泉郷峠、天 王と走り、8時57分には標高600mにある岡牧場分岐に到着する。ここからは更に急坂にな るが、簡易舗装の道なのでなんとか乗車したまま上りきる。10分ほどで雨量レーダードームへ の入り口に到着。 さすがにここは北摂の屋根、粉雪が降ってきた。休憩もそこそこに林道を進み、府境界の尾根に 重なるあたりから地道の林道に入る。南に取ればCa770Mのササ原のピークだが、今日は北 へ曲がって直ぐのところに付いている東へ下る切り開きに入る(9時18分)。1.5m幅でク マザサが切り開かれており、正面に741mピーク、右奥に半国山、741ピークのはるか奥に ひときわ高い京都愛宕山が見えている。
770m北の鞍部から741mピーク方面へ右 741mピーク。左 奥山

少憩の後、ササ原の海へダイブする。幅のある切り開きはすぐに途絶え、MTBのハンドル幅よ りも狭い道に変わる。エンドバーを付けているので、ササが絡まる。それでも強引に数十m走っ ていたが、それも不可能になり、首まで埋まるクマザサを掻き分けながら進む。ハイキングコー スが整備された今では誰でも登れる山となったが、一昔前までは熟練者のみに許された有数のヤ ブ山であったと聞く。今辿っているルートはまさにそんなヤブ山時代の深山を彷彿させるルート。 ハイキングコースからはずれると厳しいクマザサの洗礼が待っている山である。 遠くから見ると六甲の東おたふく山のようなササ原に見えるが、場所によっては私の背丈よりも ササが深い箇所も現れる。大体において進路ははっきり見えるが、小柄な人だったら完全に埋没 だ。 去年、四国の剣山から丸石へ縦走したときも胸まで埋まるシコクザサを掻き分けて歩いたことが あったが、深山のクマザサの手強さはシコクザサの比ではない。MTBは担いでもクマザサの上 に出ないので「担ぎ」では突破できない。前輪を持ち上げ、後輪一本でMTBを立て、右手で押 しながら、左手でクマザサを平泳ぎの要領で掻き分けながら進むという“高等技術”を使いなが ら進む。要注意は時折り足元に埋まっている「能勢電」の石標だ。
741ピークから深山山頂快適な笹原に見えるが・・・

いい加減、両腕がパンパンになってきた頃、突然深いクマザサの海から林道に飛び出した(9時 40分)。地形図741標高点の南、730m等高線ラインの南端あたりだ。東と南に広い切り 開きの道が付いている。すぐ北にある741ピークの方にも細い踏跡が続いているので行ってみ る。残念ながら何もない。引き返してきて東の林道を下る。すぐに地形図の林道に合流、逆落と しのような道。転げ落ちるように下る。下りついた所には電流柵が待ち構えている(10時05 分)。電流柵をくぐってゴルフ場の中に入り、北端の道を走ってゲートから天引林道に出る。 次は興山である。100mほど南東に下ると左手に大きな鉄の門が見えてくる。門の横の柵が切 れたところから入れる。6年前に天狗山に登った時は、有刺鉄線をくぐって入った記憶があるが、 今は簡単だ。
興山山頂

興山へはピストンなのでMTBをそこいらにデポし、溜池の北側を回って、疎林の中を適当に進 み、山頂に(10時25分)。頂上には界標の横に鉄パイプが立てられ「興山706」のプレー トが下がっている。こんなマイナーな山を訪れる人もあるのだ。空模様も怪しくなってきた。や はりここまでくると寒い。稜線を天狗山との鞍部まで下り、今度は溜池の南側を回ってデポ地に 戻る(10時42分)。先ほどのヤブ漕ぎでハンドルバーを持つ両腕がピリピリ震えている。ゴ ルフ場正門、ファミリー牧場と通過、土ケ畑から広野経由で爆走。帰路についた。          (本日の走行距離 96km)  

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