山を駈ける風になれ2002年 11月号

 
2002年10月12日(土)篠山/豊林寺城址〜九頭女(2.5万図 村雲)
ハッピーマンデーということで今月も嬉しい3連休がある。初日にあたる今日だけが走れるということ
で、篠山盆地東部にある表題の山並みを歩くことに。地形図を見る限りでは踏跡くらいはありそうだが…
5時の気温15℃と随分涼しくなった。この分では能勢の天王あたりでは10℃を下回っているに違い
ない。しかし、今日は日中27℃まで上がるとの予想に夏と同じ恰好で5時59分出発する。
北から弱い向い風が吹いている影響で、快走とはいかないものの、杉生、杉生新田、泉郷峠とまずまず
の走りで7時50分天王に到着。一気に下って8時03分福住(安田)のコンビニで食料を調達する。
ようやく空気が暖かくなってきた。絶好の行楽日和になりそうだ。福井(豊林寺近くの地名)までは流
して走ろうとしていると後ろからコンテナを2台連結した大型トレーラーが抜いていく。すかさずスリ
ップ・ストリームを利用しようと加速すれば、トレーラーはもう1台続いており、何と50km/hま
で上げさせてもらうことができた。願わくはもう少しゆっくり走ってくれればずっと風除けに使えたの
だが…
そんなことをやってるうちに櫛岩窓神社を過ぎ、豊林寺分岐に入る(8時25分)。道なりに荒れた簡
易舗装路を登って行くと豊林寺(山号=玄渓山)だ。この寺も法道仙人開基とかでその通りなら135
0年の歴史がある寺ということになる。入口横にある「篠山五十三次」説明板には、背後の山には大芋
(おくも)式部丞が応永年間(1394年−1418年)に築城した城の跡がある、と書かれている。
説明板にそこまで書かれているなら山頂の城址までは道がついていそうだとお堂の裏にロードをデポし、
支度を整えて寺の右横から奥に続く山道を登り始める(8時37分)。
豊林寺城址山頂(赤いのは大柿プレート)

植林帯の中にしっかりとした道が続いている。すぐに道は左右に分岐する。豊林寺から西北西に谷筋を 進もうと考えていたので、迷わず左の道を行く。と、すぐにササが鬱蒼と茂る広いスペースに出て道消 滅。左に分かれたあと少し山手に分岐する道があったので、そちらを行ってみるが、これまた行き止ま り。仕方なく引き返そうと数十メートルもどったところに支尾根にむけてのびる踏跡らしきものを発見、 これを辿ることにする。 踏跡らしきものはすぐに不明瞭になるが、ヤブとはいっても雑木がまばらに生えているので、どこでも 登れる、といった状況に近い。結局、豊林寺から北西に進んだ恰好となり、8時55分支尾根の付け根 にあたるコブに着く(赤いプラ杭あり)。地形図527標高点の南200m、標高450mラインのあ たりのようである。 迷ったわりに早く登ってきたのは、急斜面でグイグイ標高が稼げたためだ。少し休んであるかなきかの 踏跡を登りつめ山頂に着く(9時03分)。 豊林寺城址(527m)である。本当の山の名前は何とおうのだろうか。豊林寺の山号玄渓山かも知れ ない。山頂は平坦で確かにそこに山城があったことを窺わせるに十分な雰囲気を残している。 麓の説明板に『城址がある』と記しながら全く整備していないのがいい。丹波には山城の址がたくさん あるが、規模はかなり大きい方だ。城址から樹幹越しに北を臨めば八ケ尾が見える。山頂中央には見覚 えのある赤い布、そして大柿氏のプレートが下がっている。 01年10月13日にMTB登山されたとある。ちょうど1年前だ。これも何かの因縁か。1年前は園 部の美女山に行った。これから稜線伝いに向うのは九頭女。ふだん女性には縁がないが、これまた面白 い「女」つながりである。展望はなくとも平坦地に続く雑木林は国木田独歩の『武蔵野』を連想させる 風情、風にそよぐ木々を眺めながら軽食休憩を摂る。 さて、“ブランチ”が済んだところで(私流ブランチ=朝食と昼食の間に摂る食事。要は3回食べる) 北西尾根を辿る。こちらの方が踏跡は明瞭だ。標高差70mを下りきって次のCa480コブに登り返 すあたりは山山椒の木がたくさん自生している。Ca480コブ付近は倒木が多い(9時25分)。再 び下ってまた登り返すとこれまたCa480コブ(9時36分)。八ケ尾山が真正面に見えるポイント も現れる。 さて、ここからは猛烈なヤブが断続的に現れる。強引に突破しようとすれば間の悪いことにサルトリイ バラにひっかかって脛のあたり血まみれに。ようやくの思いでヤブをぬけ484標高点を過ぎたあたり で分岐をチェックする(10時02分)。今日は結構まじめにコンパスを使って現在地をチェックして いる。道が無い方が正確に歩けるのかも知れない。 南に下って鞍部に着く(10時10分)。東側は植林帯だ。万一九頭女から南が猛烈なヤブだった場合 はここからエスケープすればいい(しかし、薄暗い植林帯でできれば利用したくない)。短いが傾斜の ある斜面を登る。九頭女山頂に到着(10時13分)。
九頭女山頂

山頂には431.8mの4等三角点が埋まっている。地表に頭がわずかに覘いているだけで、横の「三 角点を大切にしましょう」標識がなかったら行き過ぎてしまいそうなほどだ。ここも木々に覆われて展 望はない。ここから東と南に尾根がのびている。デポ地に戻るには東尾根を下った方が近いが、南麓に ある九頭女神社には行けない。 よって激下りの南尾根ルートを採用する。依然踏跡があるようなないような斜面の下りである。昔土砂 でも崩れたのであろうか。一直線の急斜面ルートが現れ、落葉スキーを楽しむ。と、いきなり前方に崖 が現れ、慌てて右に捲いて崖の下に回りこむ。 何と崖の下には洞窟があるではないか。九頭女から直線で400m南、地形図の崖マークのところである。 こういう洞窟の奥には仏像でも祀られているものだ、と中を覗いてみたがそれらしきものはない。何や ら小さい白いものが見える。一瞬骨でも散らばっているのか、と身構えたがどうやらキノコのようであ る。洞窟を構成している岩の性質からいって、自然に出来たものとも思えない。 不思議な洞窟を後に下りかけると電柱とアンテナの残骸が転がっている。誰かが住んでいたのか?まさか。 再び激坂を一気下りし、猪垣を乗り越えて民家の裏に出る(10時35分)。九鬼さんというお宅の裏だ。 水軍の末裔か?篠山方面には珍しい名前のように思うが。そんな勝手なことをあれこれ考えながら九頭女 神社の手前で生垣の向こうを黒ずくめの髪の長い女性の姿を見かける…神社の前まで行ってみるとどこに もそれらしき姿は見えない。
九頭女南尾根にある謎の洞穴九頭女神社

こんな昼日中から幻を見るようになったか、と思ったが50mほど先で女性を発見。よかった、まだボケ てなかったようだ。えらく早いなと思ったのはハスキー犬を散歩させていたからのようだ(犬に引っ張ら れたか)。30分ほど歩いて豊林寺まで戻ると福住の安田まで戻り、すっかり気に入ってしまった旧道越 えで天王に戻り、籠坊温泉、木器経由のいつものルートを走って家路についた。         (本日の走行距離 132km) 2002年10月26日(土)因但/氷ノ山(舂米〜福定)(2.5万図 若桜、氷ノ山) ☆10月25日(金)深夜 大阪駅を深夜に出て翌朝鳥取県米子市に着くだいせん号は、この区間唯一の急行の夜行列車である。かつ てはディーゼル機関車がブルーの客車と寝台車両を牽引した文字通りのブルートレインであったが、数年 前、2両編成の自走式のディーゼルカーに変わった(注1)。 以前は島根県の出雲市駅行きであった。 この列車には様々な思い出がある。仕事の行き帰りに使った回数は数知れず、また山陰方面への輪行にも きまって利用したものである。今、ホームで列車の到着を待つ私の傍らにはいつもの相棒はない。しかし また一つ思い出が付け加わろうとしていることは間違いのないところである。 それにしてもこんなに澄み切った夜空だというのに明日は雨が降るという(降水確率60%)。何とかも ってくれればいいが。今回直前で“晴れ女”ミセスFが参加できなくなった。残ったメンバーには雨女が… 23時38分、宝塚駅に定刻通りに着いた列車からは帰宅を急ぐ人達が吐き出される。大阪駅から乗り込 んでいる筈の美女2人の姿を求めて席に着く。さあ、秋のスペシャル山行の始まりだ。 ヤブ山歩き“秋のスペシャル企画”第2回となった今年は中国山地第2位の高峰にしてわが兵庫県の最高 峰、氷ノ山の秋景色を楽しもうという山旅。氷ノ山は3年前にMTBで縦走したことがあるが、今回は鳥 取県側にアプローチを求めての山行である。 さて、同行の美女2人を紹介しておこう。まずは、 「『ひょうのせん』って読むんですか?ワタシてっきり『こおりのやま』かと思ってました」 と企画発表にあたっていきなりウソのようなボケをとばしてくれたのはコンパス姫、 そして“こだわり派のグルメ部長”ミスBとくれば昨秋の美ヶ原ヒルクライム・メンバーの再現である。 既にミスBは“就寝中”。今回も風呂に入ってからノー・メイクでやってくると言っていたコンパス姫に、 幸い“どちらさんですか”と訊くこともなかったなと思って言えば、今日はうっすらメイクしていたよう でいきなり失言。なんやかやと喋っていると、日付は26日にかわり、午前0時半になろうとしている。 下車まであと3時間半。慌ててアイマスクをしようと取り出せばコンパス姫のと色違いのお揃い。何のこ とはない。買った店が同じなのだ。ま、そんなことはどうでもいい。安眠態勢に入る。これも昨秋の経験 を活かしてのこと。まだ学習能力は残っている。 10月26日(土)午前4時 午前4時08分、鳥取駅に着いた。熟睡していたミスBは大慌てで荷物をかき集め列車から降りる。そん なに慌てなくてもしばらく停車しているのに…。それにしてもクールなミスBのあたふたするさまを初め て見た。 駅構内は随分冷え込んで寒い。外に出て空を見上げれば満天の星、ほんとに雨が降るのか?コンビニを見 つけ、朝食の調達をする。ふと見ればレジの横でミスBがザックの中の荷物を広げて着替えをしている。 …ここは着替えをするところじゃないだろう・・・ 次の列車の出発まで随分時間がある。待合室が開くのを待って(5時)陣取り、朝食を摂った後、仮眠に 入る。3人並んでアイマスク、まわりの列車待ちの人からはちょっと不気味に映るかも知れない。 あたりが騒がしくなってきた。6時半。あたりはすっかり明るくなっている。さて、行動開始だ。支度を すませ、さきほどのコンビニへ昼食用の弁当を買出しに行く。店内は学生たちでいっぱい。店員も朝から 元気のいい掛け声。朝から元気がいいのは町に活気があるからか。まるで朝市みたいですね、とはコンパ ス姫。 ☆氷ノ山登山口へ 7時29分、智頭(ちず)行きの列車に乗り込む。途中郡家(こおげ)で車体に可愛いペインティングを 施した若桜(わかさ)鉄道に乗換え終点若桜へ向う。駅名の読み方が難しいとコンパス姫が言う。確かに 知らなければ読めない駅名ばかりだ。車窓にはカキ畑が広がる。のどかな風景に思わず眠りを誘われそう になった頃、皮肉にも終点若桜駅に着く(8時23分)。 鄙びた駅舎を出る。今日はまつりがあるようで、朝から華やいだ雰囲気に包まれている。駅舎の隣に綺麗 なトイレができている。前来た時(5年前)にはあっただろうか。変わっていないようでも少しずつ変わ っているものなのかも知れない。 駅舎をバックに記念撮影、バスを探せば吉川行きのバスの後ろにマイクロバスが。「氷ノ山ふれあいの里 行き」と手で書かれたような行き先表示が見える。あれか。 8時32分バスは発車する。乗客はわれわれだけ。マイクロバスでも3人だけだとずいぶん広々している。 すぐ眠りこける2人、私はというと登山口目指してぐいぐい標高を上げていく道路をながめているうちに いつしかヒルクライムのシミュレーションだ。
若桜駅前で氷ノ越で

8時55分、終点の「ふれあいの里」に到着。少し雲が出てきたがまだ晴れている。めいめい支度を済ま せいよいよ登山開始だ。バスから下ろされた道をまっすぐ行けば、すぐに右手に「氷ノ山登山口」の標識 が現れる。『伊勢道』の標識も。そういえば兵庫県側の福定にも『伊勢道』の標識があった。若桜の人は 氷ノ越(注2)を越えて伊勢参りをしていたのだろうか。 山道に入るとそこはシイタケのオーナー(制度)の森だった。凛とした冷たい空気の中を更に進むと舗装 路。これを横断してまた山道。もう一度古い簡易舗装路を横断して山道に入る。ここの標識は最も古そうだ。 注2)ひょうのごし。氷ノ山と赤倉山の鞍部の峠。国土地理院の地形図やガイドブックの多くに は「氷ノ山越」とあるが、ここでは地元の呼び方にならった。 ☆氷ノ越へ 朝方雨でも降ったのだろうか、やや足元の道はぬかるんでいる。それでもしっかりとした登山道、いつも のヤブ山歩きに較べれば快適な道で、2人ともいいペースを刻んで歩いている。しばらく歩いていると前 方に4人の男性中高年ハイカーの姿が見えてきた。ゆっくり歩いていたが追いついてしまう。挨拶をして 先に行く。 勾配が徐々にきつくなってきた。いつもしんがりを歩くミスBのペースが若干遅れ気味だ。「標高100 0m。氷ノ越まで0.8km」と書かれたポイントのところであと800mと励ます。 「あと500m登るんですね」とミスB。標高差の話だ。 しばらく行くと視界が開けてきた。植林帯を抜けて紅葉の雑木林の中をいく道に変わる。正面に岩山が見 えている。「氷ノ越まで0.6km」の標識が現れる。 「さっきより距離、増えてません?」とコンパス姫。 何のことかと思ったが、さきほどの標高差500mと距離を勘違いしたらしい。目標に向って進んでいる のに距離が伸びたりはしない。おまけに山頂までの距離だと思っていたようだ。“ダブルでボケ”は彼女 らしい。 登山道はやがて氷ノ越手前の最後の急登にかかる。「あと300m」等とミスBを励ましながら標高を稼 いでいく。地形図ではかなり勾配は急に思えるが、実際はジグザグに道がついているのでさほど大したこ とはない。正面に1本の大木、そしてお地蔵さんが見えてきた。視界が明るくなる。氷ノ越に到着だ(9 時57分)。 標高1,250m、若桜と福定をつなぐ峠で避難小屋とベンチが設けられている。中年の夫婦がベンチで 休んでいる。思ったより早く着いた。ここで休憩を取る。「暑い」と半袖Tシャツ1枚になるコンパス姫。 出発前に補給した某メーカーのスズメバチ・パワー全開か、お地蔵さんの横を小走りに飛び回って(あ、 いや)駆け上がっている。あまりの元気さに毒気をあてられたかミスB、疲れが取れず遅ればせながら栄 養補給をする。 暑い、とはいってもそれは一時のことで汗がひいてくると寒くなってくる。登山口の「ふれあいの里」で 11℃だったのだから、今気温は7〜8℃といったところだろう。曇空の中、どっしりと見えている山を 指して、あれが頂上と教え、行動再開する。 ☆氷ノ山山頂へ ここからはしばらくなだらかな稜線歩きに変わる。ラクになったことは彼女達の口数が戻ったことでわか る。ブナ林の中をそぞろ歩く快適な山道で、その都度景色に感動しては撮影タイムになる。犬連れのハイ カーが追い越していく。のんびりペースになったがいいだろう。突然、 「この匂いはなんですかね」とコンパス姫が訊く。 初めは何のことかわからなかったが、動物の糞の匂いがする。シカか・・・。それにしても絶好調コンパス姫 は鼻まで快調なようだ。
ブナ林の中を稜線漫歩コシキ岩は登った・・・つもり

稜線を吹きぬける風は強いが、チシマザサが防風林の役目を果たしてくれるので殆ど風を意識せずに歩ける。 やがて目の前に大きなコブが見えてきた。甑岩である。 「あれ登るんですか?」 と、コンパス姫が訊く。岩を見ると血が騒いだか。いくらなんでも今日はやめとこう。でもちょっぴり登っ たことにしようか、と登りかけのポーズをカメラに収める。山頂付近を物凄い速さで雲が駆け抜けているの が見える。もうすぐ雨がきそうだ。 展望がどんどん開けてくる。丸太の階段が現れる。最後の一登りはなかなかきついようで、ペースの落ちた 先行ハイカーをどんどん捉えてかわしていく。雨が降り出してきた。遂にきたか。快調に歩くコンパス姫と 共に一足お先に山頂に立ちミスBを待つ(10時55分)。 標高1,510m、兵庫県の最高峰、展望方位盤の前に重々しい一等三角点が鎮座している。遮るものがな い頂上は強風が吹き荒れている。寒い。バテたとはいいながらもクールなミスBの到着を待って、“お約束” の山頂記念撮影。頂上避難小屋に駆け込む。中は先行の登山者達でいっぱいだ。ラーメンをすする者、コー ヒーを沸かす者など小屋の中はいろんな匂いがごった煮のように混ざり合っている。 われわれも隅っこにスペースを確保し腹ごしらえをする。扉を叩きつける雨風がいちだんと強くなってきた。 われわれの後から到着した人達はズブ濡れだ。すぐに強風が小屋を揺さぶりはじめた。 「ドラマのワン・シーンみたいですね」 とコンパス姫が変な感心をしている。こんな経験初めての彼女には、それほど非現実的なものに映ったのか も知れない。予定より1時間早く山頂に着いたので事なきを得たが、予定通り歩いていたら今ごろは大変な ことになっていた。 やはり今日一番疲れて汗をかいたミスB、冷えて寒くなってきたという。風邪をひかなけばいいが。それを 思っても早くに着いてよかった。 雨脚が弱まるまでは出ることもできないからゆっくりしようと声をかけ、ミスBから差し入れのホット・コ コアで体を温める。30分ほどだったろうか、すりガラスの窓の外が明るくなってきた。雨雲は去ったよう だ。 とはいっても下山中にまたいつ雨雲に捕まるやも知れないからと、雨具をつけて出発する(11時45分)。 外に出る。沢山の人が山頂にいる。相変わらずの強風だ。着込んでいてもじっとしていると寒い。あれが三 の丸、あれがどこそこと説明したが、寒くて誰も聞いていない。雨が降ってないのが幸いだ。チシマザサの 中の道に入れば風は問題ないことはわかっているので、さっさと下山にかかる。
雨まじりの風が吹き抜ける
氷ノ山山頂
千本杉で〜す

☆東尾根縦走路 下山は東尾根ルートを辿る。まずはせっかくだからと西日本唯一といわれる高層湿原“古生沼”を案内すれ ば、この時季水がなく2人にはただの草ボウボウの空き地、興味を示さずとっとと登山道に戻っていく。両 手でバランスを取りながら滑らないように木道を下っていくコンパス姫の姿は着込んでいることも手伝って か“宇宙飛行士が月面を歩いているよう”にも見える。 前からこんなに木道が長かっただろうかと思うほど下っていけばようやく“古千本”と呼ばれる杉の原生林 に。そして神戸大ヒュッテに着く(12時10分)。 正確には『神戸大学氷の山体育所』。何をするところだと2人からしつこく訊かれるがよく知らない。わか っているのは中には入れない、ということだけだ。それでも2人の興味を引いたのか、テラス状になってい るところへ上がり、 「ここは何をするところでしょうね」と訊いてくる。 「モーニング・コーヒーを楽しむオープン・テラスじゃない?」と逃げる。
神大ヒュッテ前紅葉の中を歩くコンパス姫

大段ケ平(なる)コースを右手に見送り東尾根を下り続ける。木々の紅葉が益々美しくなる中、夢見心地の ような山歩きは続く。(実際は足元をよく見ていないとズッコケる。)足元の絨毯も緑のコケの上に赤、黄、 茶、形も様々な葉っぱが重なり合い微妙な色彩を醸し出している。と観察しながら歩いているとすぐ後ろで 岩が転がったような音。振り返ると滑ったコンパス姫の姿が・・・。 途中、植生が変わるところがある。 「足元の雰囲気が変わりましたね」とコンパス姫。今日の姫は冴えてる。すぐに植生は戻る。 一の谷の水呑場を過ぎ、ドウダンツツジの群落を見ながら下るあたりの紅葉は最高である。何度も立ち止ま ってはシャッターを切る。今日はモデルさんもいるのでどっちを主役にすればいいのか迷ってしまう。 足元に紫色のリンドウのような花(全員花の名前には疎い)がたくさん現れ出した。つい見とれながら歩い ていると、道の真ん中にイノシシだろうか、大きな糞の山が・・・。慌てて回避して後続のコンパス姫に声を掛 ける。コンパス姫も寸前で気づきセーフ。だが、ミスB、どこにと気づいた時には既に足の下。それもご丁 寧にど真ん中直撃だ。 しかし、そこはさすがにクールなミスB、さっさと周囲の草木で靴の裏を拭い、何事もなかったかのように 歩き始める。こういうのをクソ度胸というのだろうか(あ、いやいや)。 少し斜面を下り落着いたところが東尾根避難小屋(正確には『氷ノ山東尾根休憩小屋』)だ(12時58分) 最近建て替えられて新しくなったとは聞いていたが、なかなか小奇麗な小屋だ。小屋を前にすると何故かま た雨が降ってきた。走り雨だ。小屋の中に入る。頂上避難小屋に較べるとかなり小ぶりではあるが、なかな かいい小屋である。2階もあって寝っ転がることもできるようになっている。 小屋の中に書かれている氷ノ山登山路の略図で現在位置を確認したコンパス姫、 「なかなかきれいな遭難小屋ですねえ」 縁起でもない。本人も避難小屋のつもりで言ったらしいが、避難と遭難では大違いだ。思わず爆笑する。10 分少々休憩し行動を再開する。
紅葉の美しい東尾根遭難小屋ではありません

当初予定ではここから氷ノ山国際スキー場の横まで一直線に下りる予定だったが、雨に濡れて丸太の階段が 滑りやすくなっていること、元気に歩いていたコンパス姫も膝がだるい、とのことから予定を変更し、東尾 根をそのまま林道出会いまで下っていくことにする。 多少のアップダウンはあるもののここからは快走路である。何しろ3年前はこのコースを逆に走って林道の 登山口から20分で避難小屋に着いている。 山道ももう残り僅かと山歩きを惜しみながら下っていく。足元にシバグリのイガが増えてきたなあと思いな がら下れば林道に下り立つ(13時33分)。広域基幹林道だ。 ここからは長い林道歩き。1時間かけて福定親水公園まで下りてくると(14時30分)、ここで女性陣は 着替え。終わったとところで福定の集落まで歩く。 ☆帰路(福定〜八鹿) バス停に着くが時刻表がないのでバスの時間がわからない。どうせまだまだ来ないだろうと、一つ先の福定 のバス停で時刻を確認すれば、4分ほど前にバスは出たあと。でもまてよ、バスの姿なんか見なかったから ひょっとしたら遅れているのかも知れないぞ。 と言ってるところへ後ろからバスがやって来る。「八鹿駅行き」とある。間違いない。手をあげ、バスに乗 り込む。勿論われわれ3人の他に乗客はない。われわれの乗るバスはよく“貸切状態”になる。14時56 分のバスが遅れていたお陰で幸運にも乗ることができた。でなければ当初予定の16時17分のバスになる ところだった。 ここの路線バスの運転手は住民と顔馴染みらしい。歩いているお年寄りに乗っていかないかと声をかけてい る。親切なのか、商売熱心なのか。こんどはわれわれの方を振り向いて、 「駅まで行くんでしょ。どうぞゆっくり寝ててもらったらいいですよ。」 女性を連れての山歩きが無事終わったことにホッとしていたところへこの親切な一言。たまらず眠りに落ち てしまう。 顔にあたる日差しがまぶしくて目を覚ますともう八鹿町の街中に入っているではないか。すっかり眠ってし まった。みんなを起こそうと後ろを振り向けば口ポカン状態で眠っている姫。見てはいけないものを見てし まった。(一応レポートに記すことについては本人の承諾を得ている) 15時55分、八鹿駅前に着く。みやげ物を、と考えていた駅前だが、観光案内所兼喫茶店が一軒あるだけ で何もなさそうなところだ。取りあえず次ぎの列車の時刻を確認しておこうと駅に入れば何とあと3分で特 急(北近畿)が来る。 あまりの連絡のよさに1時間間違うところだった。これに乗れば当初予定より3時間早く帰ることができる。 「またまたツイてるねえ。一体誰にツキがあるのかな。」 どこへ行ったか駅員がいない。ま、中で買えばいいや、と跨線橋を走って渡って特急に乗り込む。あとはお やつを広げてワイワイ言いながら帰路に。2人ともホントにお疲れさん。            織田(おりた)さんへのメールはbabrx800@jttk.zaq.ne.jpまで・・・。

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