山を駈ける風になれ2003年 3月号

 
2003年2月1日(土)北神戸/辻堂山〜八景(2.5万図 三田)
神戸市北区大沢町、吉川町、三田市が接するあたりは200〜250m前後の小さな丘陵が点在する地帯
である。ゴルフ場や新興住宅地が多くあまり走りに行くことのないエリアだが、幹線道路を離れ一歩山道
に入ると深い谷に区切られた山里の風景が広がっている。今日はそんな丘陵地帯のシングルトラックをつ
ないで走ろうという計画。6時52分MTBで出発する。

おだやかに晴れるという予報を信じて疑わなかったので走り出してから小雨が降っていることに気が付く。
朝のうちだけだろうと思いながら走っていたが、名塩を過ぎ赤坂峠に向かう頃には霙に変わり、峠を越え
ると雪になってしまった。アプローチから雪の中を走るのは久しぶりだ。
日下部の交差点を左折、吹雪に変わった中を一直線に走る。唇にあたる雪が痛い。2kmほど走ったとこ
ろで道を間違えたことに気がつきUターンして進路修正、大沢町へ向う県道82号線に乗る。4年ぶりに
走るとアプローチも忘れてしまっている。緩い坂を上り、一気に下ってフルーツフラワーパーク方面に右
折、すぐに左折して集落の中の道に入り右手に谷を見ながら急坂を登りきり中大沢から東に延びる地道に
合流する(8時17分)。

「太陽と緑の道」の標識が立っている。以前来た時はこんな立派な道標はなかった。『天狗岩0.5km、
光山寺0.7km』、反対側に行けば『嫁取りの松0.6km』なんてのもあるらしい。独身男性なら拝
んでおかないといけないかも知れない。
天狗岩入り口雪の棚田を行く
雪は依然としてハラハラと天から落ちてくる。少憩の後、地道を北に走る。4年前に登路を探して苦労し た天狗岩も今はしっかりとした標識が設けられている。そんな標識を横目に見て直進。道は二手に分岐す る。右の『金毘羅山』という指標に惹かれるが左の棚田に沿った道をいく。道はやがて林道幅からシング ルトラックに変わり、小さな池の周りをテクニカルに走るコースに。 地形図には無いシングルトラック走りを楽しんだ後はポンと舗装路に飛び出す。6〜700m北東に走り、 日西原に向う道と合流したところを左折する。短いが急坂を上ると右手に牧場、『田栗谷体験農場』とあ る。これから向う前方に辻堂山がこんもりとした盛り上がりを見せている。 道が右カーブするところに牛乳の自販機がある。この牧場で作った牛乳かな、と思って近寄れば『共進牛 乳』の自販機だった。共進牛乳は小学生の頃、給食で出てきたことがある。そんなことを考えながら左手 に曲がり辻堂山に向うとどこまで行っても簡易舗装路だ。 どうやら破線路は簡易舗装路に変わってしまったらしい。坂を上りきったところで辻堂山を通り過ぎてし まった。MTBをおいてササが茂るヤブを登り辻堂山山頂に立つ(8時46分)。
辻堂山山頂
登り始めてからの所要時間3分だ。山頂には277.3m4等三角点が埋まっている。西側からヤブを漕 いで登ったが、南東側から登ってくる道があるようだ。“下山”はヤブの少ないところを真北に下りたの で所要時間1分というところか。MTBを拾って簡易舗装路を西に下り、なるだけ地道を使って簾(大沢 町簾)に(9時00分)。 雪が更に激しくなってきた。今日は晴れるんじゃなかったの?とひとりツッコミを入れながら県道17号 線を西へ。毘沙門から赤松PAの裏に抜ける林道を走るつもりが、雪でよく分岐がわからず吉川町役場手 前まで行き過ぎ、バックしてここと見当をつけたところから上っていく。 大きな構えの吉川らしい民家の間を山の方に進んでいくと、左手山側に『歓喜院聖天堂』の文字が目に入 る。急ぐツーリングでなし、幸い雪も止んで陽がさしてきたのでちょっと寄り道をする。境内には真新し い本堂と西側に歓喜天を祀ったお堂が建っている。
吉川、歓喜院聖天堂
室町時代初期の建立とかで、なんと国指定の重要文化財だそうだ。国の重文がこんな片田舎の山懐にひっ そりと存在しているとはなんとも面白い。 地道の林道を期待していたが、ここもまた簡易舗装路だ。しかし車一台分の道幅、両脇をタケヤブが覆っ たり、南の大岩鼻方面の展望ポイントが現われたりとなかなか雰囲気のいいラクチンツーリングが続く。 もう少し続いて欲しいとの願いも空しく前方に赤松PAが見え、裏側を通って激坂を上り、有馬高原病院 前に出る(9時45分)。所要時間は歓喜院から15分ほど。 次こそはシングルトラックを、と期待をこめて神戸と三田の市境尾根を富士が丘3丁目へ抜ける山道を狙 って走ると、何といきなり現われたのは工事現場。しかも只今大規模工事中、もう山道は残っていないよ うだ。やはりこのあたりは開発が激しい。これからもどんどんと昔の山道は姿を消していくことだろう。 仕方なくそのままウッディダウンとフラワータウンの間を走り、三田市街地をぬけて八景町に着く(10 時05分)。走りながら考えた次のシングルトラックは八景中学の裏山に登り、塩田八幡まで尾根伝いに 走ろうというもの。 まずはこの小さな丘陵の最高点でもある218.9m三角点を目指す。中学の正門前を通り、プールの左 手に山道が続いている。一発で大当たりと喜び勇んで登ればグラウンドのすぐ裏手に着き道はそこで無く なる。 グラウンドでは中学生達がサッカーの練習をしているのが見える。少し戻ったところにササで消えかかっ てはいるが山道が残っているのを見つけて走る。ヤブは深いが全線乗車可能である。ピーク手前で道は2 手に分かれる。しっかりしているのは右の道だが、ピークへは左の道を行くのが正解のようだ。 左の道はピークの北側に回りこんだところで、更に右手ピークに向けてピンクのリボンの目印が付けられ ている。そのままMTBを「押し」て登れば3等三角点の埋まるピークに到着。三角点は四周を石で囲わ れ大事に守られているかのようである。点名は「八景」という。 雑木林に囲まれ展望はない。木の間越しに北の丸いピーク(Ca215m)が見えている。ちょっと陽が さしてきたところで「おやつ休憩」を摂りながら塩田八幡への縦走ルートを探るが、さきほどのピンク・ リボンのポイントまで戻らないとだめなようだ。
八景山頂八景南麓のST
チョコでしっかりとカロリーを摂ったところで続きを走る。が、すぐに道は無くなりヤブに突っ込む。正 確にいうと道の形跡は残っているのだが、ヤブが生い茂って廃道になってしまっている。地形図の破線は もう行けないと見切りをつけて、先ほど2手に分かれた分岐のはっきりしていた右の道を行って見る。 最初のうちは快調に進んでいたが、これまた池を過ぎたあたりで深いササヤブに突っ込む。そう距離もな いだろうとタカをくくって1m1分の行程を我慢しながら進んでいたが、意外にも距離がありそうな様子。 こういう時はサッサと撤退するに限る。途中まで戻り、ピークの南西側にある池を回りこむように下りる とようやく南の集落へ。 R176は目の前。このまま走って帰るのも勿体ない。次はどこへ行こうかと思案していると、北から大 きな雪雲が湧きあがってきた。これは早々に退散したほうがよさそうだ。走り出してすぐに雪に捕まって しまった。同じように家路を急ぐ?レーサーにまたがったサイクリストをかわして一目散に北六甲台の坂 を駆け上がった。         (本日の走行距離 68km) 2003年2月9日(日)山南/大海山〜小野山(2.5万図 丹波和田) 昨年11月のリトライである。夜半のうちに雨はあがり、天気は急速に回復に向い、一日穏やかに晴れる という予報を信じ起きてみるとまだどんよりとした雲に覆われている。それでも朝の天気予報は晴マーク がついているので“急速に回復”するのだろうと6時44分出発する。 暖かな朝だ。9℃もある。先週までの寒さとはえらい違いだ。おかげで赤坂峠の上り途中から汗が流れる ありさま。峠手前で降りだした小雨が却って気持ちよく感じるくらいだな、と思いながら走って行くが一 向に雨は上る気配を見せない。結局、三田、篠山を過ぎ、谷川の手前でようやく雨は上った。谷川駅前9 時02分着。 リアタイヤが跳ね上げる飛沫で冷たくなったお尻をさすりながら水分補給をし再び出発する。井原の交差 点を過ぎたところにあるスーパーで食料と飲み物を調達する。ここは開店時間が早い上に500mlのペ ットボトルがすべて100円なので山南町方面に来た時は必ず利用している。   案下某生再説、9時半富田橋を渡り、西谷の集落の中を西に向う道を辿って9時42分、樺坂と大見坂の 分岐を示す道標の前に到着する。ここまでは前回どおりだ。今日はロードで来たのでここにロードをデポ、 支度を済ませて歩き始める。 地形図でみてわかるようにロードをデポした林道のすぐ南を平行に走っている林道が樺坂手前にある牛坂 に向う道である。この林道の方が高い。というわけで南側の林道へショートカットを狙ってよじ登ること に。 ところが山歩きは地道に歩かなければいけないということだろうか。濡れ落葉で足を滑らせ、ペットボト ルを持った方の手をついたのだが、指で支えようとしたため、逆に左手で地面に“突き”を入れた恰好に なって2本突き指。なんとも痛い歩き始めとなってしまった。 だらだらと林道歩きが続く。前回“寄り道”をしたアクタの入口には見向きもせず地形図のもっとも西に 湾曲したポイントに着く(10時03分)。やはり目的地へは計画どおりに歩くのがいいようだ。何と登 り口には赤布が巻かれている。大柿氏の赤布である。 大柿氏の赤布に導かれるように植林帯の急斜面を登る。と斜面の上の方を見ると林道が見える。これが今 工事中の林道らしい。急斜面を登りきって林道に出る。牛坂の登り口のところまで林道は伸びていた(1 0時10分)。 牛坂はなんとも興醒めな状態になっていた。休憩もそこそこに大海山への登りにかかる。中町側に一歩踏 み込んだところで道は分岐する。左の道は水平道。これが島田氏のレポートにあった樺坂への道らしい。 右手斜面を登る道が大海山への道だ。分岐手前に坑道跡が深い口を開けていた。 牛坂からののぼりもなかなか急登が続く。途中で拾った木の枝をストックがわりにする。今日は2本でダ ブル・ストックだ。ここで左手がロクに握れないことを思い出す。一直線ののぼりの後少し西に振りなだ らかに、また急登が始まり左から何度か小さな合流する尾根を過ごすと最後の登りに。頂上手前で西から しっかりした切り開きのある尾根が合流してくる。中町と加美町の境界尾根である。
牛坂大海山山頂
合流ポイントを過ぎるとあと少し、やがて伐採されて明るくなった頂上が見えてきて山頂に到着(10時 35分)。大海山山頂である。標高551.8m。4周を石に囲まれた三角点が鎮座している。三角点は 4等だ。三角点のすぐ北にアンテナがひっくり返っているのが見える。天気がよければかなりの展望が期 待できそうな山頂だが、700m以上の山は分厚い雲の中にその頂きを隠している。 それでも三組尾、カザシといった山南町方面の山を眺めながら軽食休憩を摂る。気温16℃(今日の予想 最高気温)のポカポカ陽気の中でのんびりと食事をするイメージを描いていたのであるが、現実は冷たい 風が北から吹き付ける中での食事となってしまった。 まあいい。千ケ峰の東斜面はかなりの積雪のようである。なかなか清冽な光景だ。頂上部が雲の中に隠れ ているので、南アルプスの3000m級の山のようにも見える。 10分ほどで食事を終えると北に向かって歩行開始。いきなり急斜面の下り。半国山中を思わせる雑木林、 途中に現われた大岩の左を巻きながら大岩をデジカメに収め標高差50mを下る。と鞍部になったそこは 東方面の展望が抜群のビューポイント。しばし景色を眺める。
頂上直下の大岩北の鞍部から大海山を見る
再び登りに入って着いたのはCa540ピーク。大海山山頂から13−4分だ。快適な踏跡をどんどん進 み少しコブになったところを左に折れて登り返すとピークに鉄塔が建った494標高点に着く(11時1 0分)。鉄塔Noは65、雪の千ケ峰がいっそう美しく見えている。
三組尾雪をかぶった千が峰
ここでもしばらくデジカメで遊び先を下っていく。5分も歩かないうちに大きな樅の木が見えてきた。大 見坂である。尾根筋を東西に山道が横断している。まずはそのまま直進、小野山を目指す。大見坂との標 高差は小さくきれいに手入れされた植林帯の中を歩いて小野山に到着(11時22分)。 ここにも鉄塔が建っている。No66の鉄塔だ。伐採された頂上部の右奥に三角点が埋まっている。ここ も4等である。標高482.7m。加美町側に展望が開け眺めがいい。三角点から5mほど北の方の木を 見るとプレートが掛かっている。大柿プレートである。3年前の10月にこのコースを縦走されたようで ある。10月といえばまだまだクモの巣の多い時期、MTBを担いでは辛いだろうと思うが、相手は超人、 クモの巣などおかまいなしに走られたに違いない。
小野山山頂
再び大見坂に戻る。さあ、今日の縦走はここまで。大見坂から山南町側に下る。いきなりヤブっぽい道に 変わる。今までの尾根筋の方がよっぽど歩き易かった。半分廃道状態だ。下り始めてすぐの左山側に祠が あり、石仏が祀られている。ここを過ぎるとまたまた強烈なヤブが待ち受けている。とにかくイバラが凄 い。大小いろんなイバラに絡まる。手ぶらだからいいようなもののMTB同伴だと結構難渋しそうだ。 シカ除けネットを2、3度くぐりようやく植林帯の中の普通の山道に変わる。ヤブは時間にして10分く らい、短くてよかった。 植林帯の中をジグザクに下っていく道はやがて林道に変わり、ロードをデポした道標の立つピントに戻る (11時56分)。結局下りてくるまで晴れなかった。それどころか、最後の林道歩きではまたしても雨 だ。 支度を済ませて帰路に着く。風も昼前から北寄りの風が強くなるとの予想であったがそれも無い中快走は 続く。途中、谷川駅横にある観光案内所に立ち寄る。いつも紙コップにバームの粉末を入れて丹波の名水 で溶かして飲むのを楽しみにしている。今日も紙コップにバームの粉末を溶いたまではよかったが、なん と今日は健康茶(熱い)しかない。 仕方なくバームの粉末を健康茶で溶かして飲む。見た目も味もはっきり言って“変”(あたりまえか)。 でも体にはこれ以上ない、という“最強タッグ”。これが効いたか谷川から自宅までの60kmは快走に つぐ快走で気持ちよく帰ることができた。みなさんも機会があったらお試しあれ。         (本日の走行距離144km) 2003年2月15日(土)北摂/上槻瀬539峰付近(2.5万図 木津) 上槻瀬539峰は三田の切詰峠の北約2kmにある539mの標高点ピークのこと。無名峰。名前は仮称 である。今日は朝から風も弱く穏やかな天気だという。MTBで雑木山を走るには絶好の日和だ。6時4 0分、ザックに用意を詰めて出発する。 6時の気温−1.1℃は放射冷却が効いたからか、久しぶりに顔が冷たい。おまけに本人のヤル気とは裏 腹にスピ−ドが出ない。ま、こんな日もあるさ、と気分を切り替えてタイムを競うのは止め川西能勢口回 りでゆっくり北上、途中笹尾のコンビニで食料調達し、泉郷峠−籠坊温泉と大回りし、切詰峠を越えて市 之瀬に着く(9時40分)。 ここから山田川沿いに北上する。地形図では破線路だが、実際はダブルトラックの林道である。林道入口 に張り巡らしてある猪除けネットを跨いでゆっくりとペダルを回す。ここの林道はいつ走ってもジメジメ している。おまけに水溜りがあちこちにできており、なるべく帰宅後のMTBのお掃除時間を少なくしよ うとゆっくり走るが走り出して5分ほどですでにドロドロだ。 林道はところどころ急傾斜になるが、10時10分霜柱の感触を楽しむうちに畦倉池南1kmにある小さ な溜池の堰堤に着いた。多田繁次氏がその著書『神戸近郊の山やま』でスイレンの池と名付けた池だ。池 には厚い氷が張っているが、日差しは春の陽気、雑木林の中は暖かな空気が満ち満ちている(気温は4℃)。
すいれんの池で
さて、今日の目的地539峰へはこの溜池の北側から南東にのびる破線路を辿ってCa430鞍部に着き、 一気に急斜面を登って山頂に立つ計画。山頂南側には岩マークもついており展望が期待できるかも知れない。 少し休憩して南東へ折れる破線路を探す。が、無い。池を過ぎれば右手の谷はどんどん深くなり、分岐ら しきものは現われない。このままでは畦倉池に着いてしまいそうだというところでUターンし、破線路分 岐を探しながら下る。 と、林道から谷側を覗き込めば山道の跡のように見える箇所を発見。分岐とおぼしき地点はササが生い茂 って入れないので、途中から岩伝いに下ると背丈を超すササの中に山道が続いている。これが20数年前、 多田氏が上槻瀬側から辿ってきた道だろう。でも今は完全に廃道である。MTB同伴では無理だ。引き返 そうと振り返ると、山側の岩に何やら文字が彫られているではないか。◎のような記号もあるが、梵字の ような文字の下に『庚申』の文字がはっきりと読める。その下にも字や記号のようなものがある。 丹波岩の自然石に彫ってあるが、庚申塚のようだ。この地域にも庚申信仰があったことを示すものだ。と いうことは今立っている場所は間違いなく上槻瀬へぬける道ということだ。今日は林道をちんたら走るだ けに終わりそうだと思っていたが、大きな収穫に喜びもひとしおである。 岩を攀じ登ってもとの林道に戻り、さきほど小休止した溜池の堰堤で早めの昼食を摂る(10時35分)。 でもやっぱり539ピークへのアプローチを探してみたい。
庚申塚池の畔のST
食べ終えて、溜池の東側に回りこむと細いがしっかり踏まれたシングル・トラックを発見。こいつはいけ るかも知れない。地形図の破線路とはコースが違うが小さな池まで着いたが鞍部まで200mというとこ ろで全くのヤブになってしまった。 七夕の飾りつけをするのにもってこいの太さの竹が密生しているヤブはMTB同伴にとってはとってもや っかいな代物だ。先々週に続いての撤退。気持ちよく走れるシングル・トラックを求めて来週も彷徨うこ とにしよう。林道を市之瀬まで戻るとすっかり春めいた陽気の中をのんびりと走って帰った。         (本日の走行距離105km) 2003年2月22日(土)北摂/大野山斜め横断(2.5万図 福住、木津) 第15回ヤブ山歩きの会。冬枯れの雑木林のそぞろ歩きを楽しもうと雑木林の美しい大野山を北西麓の渓 谷の森公園から登り、南東尾根を杉生までトレースしようというプランをたてる。 大野山は今年2度目、通算20数度(よく覚えていない)登っているが、南東尾根を歩くのは初めてであ る。若い女性達を連れて歩くというのに下見もしていない。というのも、今日はサイバル大好きなレギュ ラー・メンバー。少々の彷徨なら却って楽しんでくれるだろうと勝手に決めて手を抜いたという次第。 というわけで本日のメンバーは自称“NOVAうさぎ”のミセスFと“MTBデビュー近し”F代の2人。 共に先月に続いての参加である。 昼前から雨との予報ではあるが、「山は雪」と判断、予定通り決行、川西能勢口に7時30分集合、能勢 電で日生中央に向う。途中、山下駅でボーッとしている間に乗り継ぎの電車に行かれてしまう、というハ プニングもあったが、何とか後川行のバスに間に合い、8:50猪村で下車する。 二日前の雨はここでは雪だったようで、あちこちにその痕跡が残っている。猪村から大野山に登るルート もあるが、今日は渓谷の森公園からということで、猪村の入り口に貼ってあった黒豆しるこが食べたいと いうF代を無視して移動する。 頭上から何やら降ってくる。雨にしてはスピードが遅い。雪だ。もう雪がちらつき始めたようである。 『準備中』の札が下がってはいたが、渓谷の森公園の管理事務所棟で支度をさせてもらう。とにかく防寒 対策をと思ったF代はどんどん重ね着をしている。ちょっと厚すぎやしないか? 「寒くなったら1枚脱いだらいいですよね」…何でやねん。余計に寒いやないの。おまけに買ったばかり のカッパを引っ張り出し、 「これ、浸透性がいいんですわぁ。」 「浸透性よかったらビショビショになるやん」とミセスFのツッコミを受ける始末。今日のマシンガン( トーク)は寒さで照準が狂っているようだ。 9時20分いざ、出発。雪は止んだ。植林帯の中を登っていく。標識が整備されていてわかりやすい。植 林帯を抜けるとあたりは雑木林に変わる。落ち葉がふかふかした気持ちのいい道だ。 先頭をF代に歩かせる。いきなりトレースを外れる。猪突猛進な歩きは相変わらずだ。ちょっと長い階段 を登りきると支尾根に。やがて谷を挟んで右手の山側斜面に積雪が見られるようになる。そのうちわれわ れの歩く山道にも雪が現われ出す。 いい雰囲気になってきた。2人も雪の感触を楽しみながら登っている。背後に回ってデジカメで写真を撮 ったりしているうちに山頂直下のパーキングに到着する(10時00分)。もう登ってきてしまった。雪 がまたちらつき始めた。かなり早いが天文台横の東屋でお昼を食べることにする。5時前から起きて出て きた2人には待望の昼食タイムだ。
雪山登山ちょっとお寒い昼食
天文台のある展望台は見晴らしがいい分吹きっさらし。入り口にかかっている寒暖計は2℃を指している。 雪が降り続く中、展望を楽しむ。展望図の写真よりも視程が効いている。六甲連山が正面にくっきりと見 えている。 食事はとなりの東屋で摂る。テ−ブルの上は氷がのっかり、ベンチの背後は積雪という何とも寒々しい昼 食だ。猪村の段階でお腹がすいていたというF代はいつにも増して食欲が旺盛だ。弁当を済ませ、お菓子 を食べる。食後のおやつタイムというよりも体の燃焼を促進させるため、といった方がいいかも知れない。 食事を終えて再び歩き出す。大野山山頂に登る(11時05分)。さあ、いよいよここから初めての南東 尾根歩きに入る。クマザサの中に付けられた山道を進み、NTTの中継施設の簡易舗装路を横断して広い 尾根を歩く。
岩をよじ登るF代さん
739標高点を過ぎると西軽井沢コースの分岐。ここを見送って直進する。いよいよここからが夢の雑木 尾根歩きが始まる。広い切り開きがあり、ところどころピンクのリボンがぶら下がっている。雪が霰に変 わってきた。落ち葉の絨毯に落ちる霰の音しか聞こえない世界を行く。 ほぼ平坦な尾根歩きは720コブで終わりになる。南東尾根を歩き続けるならここで南に振らないといけ ないが、霰が雨に変わってきた。ヤブでずぶ濡れになるのは避けたい。この先どうなっているか知らない が、踏跡がはっきりしている東尾根を下ることに。距離も短いのでヤブっていても早く抜けられるだろう。 急降下が始まりだした。依然はっきりとした踏跡は続いている。部分的に不明瞭な箇所も現われるが、冬 枯れで見通しが利くので境界杭さえしっかりトレースすれば大丈夫だ。そのうちロープが張られた箇所が 現われ、激下りの斜面に変わる。 さっさと下って2人を待つ。笑い声が聞こえるがなかなか姿が見えない。激下りに弱い2人にとってはか なりアドベンチャーなコースのようで、しゃがんでキャーキャー言っている。なかなか楽しそうな様子だ。 お腹がよじれるほどおかしかった、とF代。何度か滑ったようだ。
悲鳴?
更に下ると小広い地点に着く。振り返ると『第1展望台』と書かれたプレートがかかっている(11時3 5分)。高岳方面の展望がいい。でも西斜面のゴルフ場が邪魔だ。でも一体誰が付けたプレートだろう。 とにかく一直線につけてある。下っているのに体が温まる。このルートを登りに使ったらかなり辛いだろ う。こんなルート、初めて歩くメンバーに登らせたら2度と山歩きなどしなくなってしまうにちがいない。 雨が激しくなってきた。ザックカバーを持っていなかったF代のザックに彼女が弁当を入れていたスーパ ーの特大ビニール袋を切ってかぶせる。ちょうどいい大きさだ。スーパーの袋ってなかなかすぐれもので すね、とF代が感心している。スーパーのビニール袋は用途が広いエマージェンシー・グッズだ。 第1展望台を過ぎても激下りは続いていたが、それでも徐々に傾斜が緩くなってきた。道もはっきりして くると『第2展望台』方向を記したプレートが現われる。もう下山口は近い。確かこっちの方向には池田 市の青少年なんとかがあったな、と思いながら下りて行く。やはりその池田市のキャンプ場に出た(12 時05分)。予定よりかなり早く下山してしまったが雨が激しくなってきたとあっては仕方がない。それ でも激下りにヒザがガクガクになったと2人は満足のご様子。 福石神社バス停まで歩くと次のバスは1時間半後。杉生まで歩けばバスの本数も多いだろうと今日の行程 をかみしめながら杉生に向かって歩いた(結局杉生まで行っても一緒だった(^^; )         2003年2月23日(日)北摂/笹尾峠〜三蔵山(2.5万図 木津) 北摂通いを始めて11年になるが、宝塚北部の三蔵山(411.4m)には未だ登ったことがない。理由 はない。強いていえば距離が近すぎる、ということかも知れない。そんなところへ幸運にも昨年末に『低 山趣味U』を上梓された“妻恋地蔵”さんこと広谷良韶氏からお誘いを受け、「渡りに船」とばかりにハ ード・ハイキング(同氏流の表現)に参加させてもらうことにする。 当初雨の予報だったが、前日の夜には予報は曇に変わり、昼頃から晴間も覗くという。それならMTBだ、 ということで歩き始めポイントに近い香合(こうばこ)新田まで走り、妻恋地蔵さん達を待つことにする。 6時の気温6.6℃、久しぶりに暖かい朝になった。MTBにまたがり6時40分、家を出る。ウグイス の声を聞く。ウォーミング・アップを兼ねてゆっくり走るつもりだったが、気温が高いので筋肉も固まっ ておらず結構いいスピードで走れてしまう。 木津で県道を離れ木津峠を越えて上佐曽利へ入る。木津峠は今日の行程の途中で通過するポイントである。 『低山趣味U』では石仏があると書かれてあったがどこにあるのだろう。快走してしまったためえらく早 く着いてしまった。上佐曽利でしばらく休憩した後、待ち合わせ場所の香合新田に着く(8時17分)。 宝塚市最奥の集落である。別天地のような場所である。地元のおばあさん達と喋りながら時間をつぶす。 待つこと暫し、本日の主催者、妻恋地蔵さん達を乗せた車がやってくる。今日は私を入れて全員で7名、 “白夜の貴公子”さんを除いて全員初めてお会いする方ばかりだ。妻恋地蔵さんダンノ凡太郎さん隠岐さ ん達と初対面の挨拶を済ませ、貴公子さんと互いに一別以来の挨拶 を交わす。本日の参加者の一人で西谷地区にお住いの林さんのお知り合いの方の家にMTBを停めさせて 頂いて、9時15分笹尾峠(笹尾と香合新田を結ぶ峠)から南へ境界尾根の縦走にかかる。 登り始めからいい道がついている。「いい道ですねえ」と言ったら貴公子さんに 「MTB持って来たらよかったなと思ってはるでしょう」とツッコミを入れられる。 「でもすぐにヤブになりますよ」とは妻恋地蔵さん。 その言葉が終わるか終わらぬかのうちに本当にヤブになり、いきなりミスコース。頭をかきながらコース 修正は妻恋地蔵さん。最初町界尾根を辿りながらそのままCa310m(地元では中山と呼んでいるそう だ)の尾根に乗っかるつもりだったが、またしても怪しくなる。
中山付近で現在位置の確認
貴公子さんと矢問さんのGPSによると中山北東の小さな池に向う枝尾根にいる、という。ヤブ山歩きの 達人、妻恋地蔵さんにしてこれだ。今日のコースはとてつもなく難コースとみえる。 結局、一旦町界尾根を池まで下り、池の周りを強引にヤブ漕ぎして本尾根に登り返す。ここで現在地確認 をする。今日は踏跡が“いい山道”に見えるから不思議だ。尾根筋に付いている踏跡は中山のすぐ東側を トラバースしている(10時05分)。中山を過ぎたところで再度現地確認を行う。 南に向けてはあるかなきかの踏跡が続いている。Ca260尾根の末端あたりに「エルベCC」と書かれ た水準点が埋まっている。ゴルフ場の名前か。 ここで東に折れ、数合ノ谷から上ってくる山道の鞍部に下る。しっかりとしたいい道が通っている。少し 北に歩けば妻恋地蔵さんが『H型の峠』と名付けたポイントに。確かにH字型に4本の道が通っている。 水場があるというので少憩を取る(10時38分)。
『H型の峠』付近の水場で
落葉の下から流れ出てくる水である。一口飲ませてもらう。「美味い」。全員代わる代わる飲んだあと町 界尾根を296標高点目指して登る。ここもなかなかのヤブである。10時55分、296ピークを通過、 南東の327.4m三角点に向う。妻恋地蔵さん曰く、今日のコ−スの一番の激ヤブはこの三角点を越え てかららしい。すでに十分激ヤブを歩いてきていると思うのだが…。ハードな状況になればなるほど笑顔 になってジョークも飛び出す。ヤブ山中毒患者の典型的な症状だ。 ヤブはひどいが迷うこともなく327.4m三角点に到着する(11時14分)。倒木の下に4等三角点 が埋まっている。展望は樹林越しに三蔵山と今井岳が見える程度。今日のヤブ山歩きのポイントはこの2 つの山を目印に軌道を微調整しながら歩くことである。 少憩の後、“本日一番”という激ヤブに向う。最初は町界尾根を真っ直ぐ南下、それほどヤブはないので 助かる。町界尾根はここで一旦東に振ってまた南に振りなおす。このあたりが一番難しいところだ。2年 前に歩いたという妻恋地蔵さんの記憶と読図、貴公子さんと矢問さんのGPS、それに私の“カン”が三 位一体となってピンポイント降下場所を探る。 ふだんはいい加減に歩いている私も今日は真面目にトレース。おまけに峠を上ってくる車のエンジン音の 変わり目で峠にピンポイントで下りる方角の見当をつける。 そんなみんなの合わせ技で見事『宝塚市』『猪名川町』の境界の標識が立つところへ下降する。どこかで サイレンがなっている。正午だ。 小雨が降ってきた。峠は交通量も多いので早々に町界尾根を東に登り始める。雨も降ってきたし腹も減っ てきたところで地形図の331標高点手前の小広い場所で行動食休憩を摂る(12時15分)。おにぎり を食べて一息つく。 ここから木津峠にかけても町界尾根を行く。これまでとは違ってさほど地図読みが難しいポイントもない まま331標高点を過ぎ、南に折れて木津峠に飛び出す(13時)。 妻恋地蔵さんの案内で峠の石仏を拝みに行く。簡易舗装路からヤブを分けて10mほど南に入ると旧道の 跡があった。これは知らなかった。いつ頃まで使われていたのだろうか。草むした峠には石仏と左右に2 基の墓石が斜面にもたせかけるように並べてある。石仏に刻まれた年号は『明和3年』、墓は幼くして死 んだ子供の墓のようである。この峠でどんな出来事があったのだろうか、それとも飢饉に見舞われたのだ ろうか等と推測は果てしなく広がる。
木津峠の石仏
ひとしきり石仏の前で薀蓄を傾けあったところで本日最後の登り、三蔵山の頂上を目指す。北側頂上直下 に天狗岩と呼ばれるオーバーハング気味の岩があるので、そこで昼食を摂ることにしましょうと妻恋地蔵 さんからのご提案。地形図の町界尾根のひとつ東の谷に道はついている。歩き出しは傾斜もなだらかであ る。水場を過ぎるとゴルフ場との境界に。 町界尾根に沿って西側から急斜面に取り付く。それこそ“壁”のような斜面を登る。途中からはガレ場に 変わり落石に気をつけながら喘ぎ喘ぎの登りになる。グイグイ標高を稼いで登っていくにつれ西方面の展 望が広がっていく。 ガレ場が少し大きめの岩に変わると緩斜面になる。曲輪の跡である。曲輪は数段構えになっていて、それ ぞれ山の周囲を一周できるようになっているという。三蔵山には山城があったのである。ここで北斜面を 下って天狗岩に移動する。岩を上から見つけるのは難しい。ここは妻恋地蔵さんにお任せし、13時50 分、ピタリと天狗岩の上に付けて頂く。 大きな岩である。天気がよければ凄い眺望が得られるに違いない。雨雲が低く垂れ込めているので遠くの 山は見えないが、水墨画のような景色を楽しむことができる。天沢寺裏の323ピークがみんなの登攀意 欲をそそる姿を見せる。ここでお約束の昼食タイム。 何故か雨脚が強まってきた。各々雨よけになる木の下に移動して弁当をかき込む。さすがの貴公子さんも 湯を沸かす気にもならないようだ。林さんがカッパに着替えたところで雨脚が弱まってきた。ここで天狗 岩の上で記念撮影。林さんはふつうのデジカメに加え、400ミリ望遠のついたデジカメと一眼レフを持 ってきておられる。ご自慢のカメラで写真を撮って頂く。 撮影会が終わったところで三蔵山山頂に登る。10分ほどで3等三角点のある山頂に到着する(14時4 0分)。山頂は切り開かれて少し明るくなっているが、展望は西のゴルフ場方面しか臨めない。山頂で1 0分ほど過ごし下山にかかる。 下山も町界尾根を行く。まずは東に下り少し登り返して三蔵山南東コブを南に下る。登りのような斜面が 出てきたらどうしようかと思っていたが、そんな激下りもないままハタチノ峠に着く(15時10分)。 地形図の242標高点のあるところである。『ハタチノ』という名前は山主から聞き取った名前だそうだ が、ご本人もどんな字を書くのか、どんな意味があるのかわからないという。 ここは木津から長谷へぬける旧道の峠だったところである。ゴルフ場ができて西側の道は無くなってしま ったが、木津方面にははっきりとした道が残っている。更に歩いていくとシングルトラックがクロスして いるポイントに出る。万膳から木津につながる道だそうだ。 少しササヤブの中を歩いて林道に出、下って火葬場に着く(15時40分)。全員充実した山歩きに表情 は満足そう。これも妻恋地蔵さんのおかげだ。ここで一旦お別れの挨拶をしてMTBをデポした香合新田 まで車で送って頂く。 これでもかというヤブ山三昧、余力が残っているかどうか心配だったが、気分がハイになったか、帰路は 爆走の連続、またも降り出してきた雨雲を振り切って家路についた。         (本日の走行距離 64km)         織田(おりた)さんへのメールはbabrx800@jttk.zaq.ne.jpまで・・・。

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