山を駈ける風になれ2003年 10月号
2003年9月6日(土)氷上/井階山(2.5万図 黒井)
井階山は氷上町伊佐口の集落の北東側に位置する325.9mの低山である。五台山の西尾根の末端に隆起する
山といった方がわかりやすいかも知れない。
まだまだ残暑厳しいこの時季、低山ばかりの北摂・丹波には涼を求められる山はないが、慶佐次 盛一氏の本に
井階山は展望がいい、と書いてあったことを思い出し訪れることにする。
5時30分、今日も涼しい間に距離を稼ぐ作戦。従ってロードだ。午前5時の宝塚の気温は何と27.5℃とい
う超熱帯夜、おまけに湿度が高く、走り出す前から汗が滲み出すという有り様。案の定、走り出しても蒸し暑く
赤坂峠の上りも最近稀にみるバテバテ・ペース、こんなことで150km以上の道のりをこなせるのかと不安に
なる。
それでも三田、篠山と走っていくにつれて天気もよくなり、気温、湿度とも下がってくると次第にペースも戻り、
7時39分柏原を通過、氷上北にあるコンビニで水分調達をして伊佐口に向う。独鈷の滝への分岐を見送って北
上を続けると右手前方に姿のいい375山、そしてその左に3つばかりコブを持つ井階山が見えてきた。
伊佐口の神社に着く(8時10分)。苔むした石段を登ると小さな本殿がある趣のある神社。だが名前はわから
ない。のんびり辺りを見回していると蚊がいっぱい群がってくるので、早々に支度を整え本殿右手にある山道を
辿っていく(8時10分)。
最近刈り払われたばかりと見え歩き易い。これで今日の行程は楽勝だなと思ったら、何とこれは墓地に通じる道
でどんどん下がっていく。丹波のヤブ山はそう甘くはないということか。植林帯の枝尾根を拾って急斜面を攀じ
登る。10分少々で井階山から南に伸びる尾根に乗る。少し小広くなってホッとするポイントである。
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伊佐口にある神社 | 露岩とアカマツの混ざる南尾根 |
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ここからはアカマツと植林の混ざり合う緩やかな尾根歩きが始まる。踏跡といえるほどのものはないが、さりと
て雑木が密生しているわけでもなく比較的歩きよいルートである。
ゆっくりと高度を稼いで歩いているうちに行く手に露岩が目立ち始めるようになる。白っぽい岩石が地表に斜め
に摂理を見せている。露岩とアカマツを主体とした景色に変わる。再び傾斜が増してきた。地形図で想像してい
た以上に斜度がきつい。
頂上まであともう少しというところで、木の枝に赤テープを発見、更に頂上間近で黄色テープ、とあんまり意味
のないところでテープに出会う。真っ白なキノコも発見、どうみても食べたら危なそうだ。
最後はヤブに絡まりながら強行突破で井階山山頂に到着する(8時41分)。山頂には3等三角点が埋まってい
る。あたりは錆びたアンテナの残骸が散らばっておりお世辞にも気持ちのいい頂上とは言い難い状態。
展望はというとこれまた全然。4−5年経っても木の成長で景色は変わるのだから、慶佐次氏が書かれた頃から
20年近くも経つと展望の良かった頃の面影すらない。
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秋の味覚? | 井階山山頂 |
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山頂とはいってもヤブ山の中にいるのと同じ。立ち止まればヤブ蚊の集中攻撃に遭う。蚊とクモの巣と湿度の高
さの3重苦に悩まされ、当初予定の375山への縦走を断念。結局5分も頂上にいることなく元来た尾根を下り、
途中から神社の北側にある砂防ダム目掛けて植林帯を駆け下り、砂防ダムに繋がる林道に出、湧き水で手足を洗
い、デポ地の神社に戻った。
(本日の走行距離153km)
2003年9月15日(月)六甲/六甲最高峰ヒルクライム(2.5万図 宝塚)
三連休の3日目。今日も天気がよさそうなので涼を求めて六甲山に。といっても登山道ではなしに舗装路を使っ
てのヒルクライム。2年前にMTBでヒルクライムをやったことはあるがロードでは初めて。目標はMTBで作
った1時間20分を上回ることだ。
6時09分、自宅を出発。阪急逆瀬川駅近くの自販機でスポーツドリンクを調達して6時19分、逆瀬川駅前を
スタート。逆瀬川右岸を上流に向う。朝からウォーキングをしている人が多い。ゆっくり走っているつもりはな
いのだが昨日はらがたわ峠折り返しで北摂周回(106km)したのが足にきていてゆっくり走らざるをえない
状況。
5分ほどで西山橋。ここで左岸に渡り、白瀬橋を越えて逆瀬台の住宅地と宝塚GCの間を上っていく。徐々に傾
斜がきつくなりスピードが落ちてくる。この区間の上りで早くもインナー×ローに3枚残しの状態となる。やっ
との思いで譲葉台のカーブに差し掛かると斜度は一服、続いて現れる本日唯一の小さな下りにちょっぴり救われ
ながら再び始まる急坂をどうにかこなして夙川方面からの道が合流する交差点に着く。
信号で一息ついて再び走り出すとここから盤滝トンネル分岐まで斜度10%の坂が延々続く。たまらずインナー
×ローに1枚残しの状態となる。シッティングを続けていたせいか腰まで痛くなってきた。
盤滝トンネル分岐を過ぎるとここからが本格的な上りとなる。カーブNoも135から順番に現れカウントダウ
ンしながら上る恰好になる。が、牛歩の歩みでカーブNoはなかなか減らない。ギアは遂にインナー×ロー(3
9×27)に。もうこれ以上軽いギアはない(でも山岳仕様にしておいて良かった。でないと私のヘナチョコ足
では到底こんな山道上れない)。
カーブNo133を過ぎたところであんまり腰がきついので自転車を止めストレッチする。まだ上り始めたばか
り(28分)だというのにこんなことで山頂まで走れるのだろうか。
再びロードにまたがりのろのろと走り出す。走り屋のモーターバイクが抜いていく。斜度12%の標識が現れる。
2年前ここでMTBを停め写真を撮ったことを思い出す。大きく2度カーブしてカーブNo128を過ぎると本
日一番のふんばりどころ。脇をスイスイ追い抜いていく車を目で追いながらひたすらダンシングで上っていく。
スピード減速の為のデコボコが煩わしい。救いは肌寒いといっていいくらいの気温と風だ。長かった残暑もよう
やく終わりか。
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芦有・宝殿IC・・・もうひとがんばりだ | 一軒茶屋に到着 |
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ダンシングとシッティンングを繰り返しながら上っていくうちに前方に芦有(道路)のICの白い建物が見えて
きた。あそこまで行けば少しラクになる。7時06分芦有の宝殿ICに到着する。逆瀬川駅から9.27km。
平均時速は11.9km/h。だるくてしょうがない腰をストレッチしながら風景をデジカメに収め再び走り出
す。このあたりからは時折り視界も開け気持ちよくなる。が坂道は相変わらずでスピードメーターは10km/
hを行ったり来たりしている。
No114を過ぎ、山側が左手になりやや平坦になってきたところで前方に見覚えのある箇所が現れる。東六甲
縦走路が右手から合流してくるカーブNo113のポイントである。このカーブを左に大きく曲がればそこは準
平原の上の快走路。いっきにスピードアップだ。道端に咲いているイブキトラノオのような花を眺める余裕も出
る。
サイクルコンピューターは56分台を示している。意外と速い。トンネルを抜けるとスパートをかけて一軒茶屋
前にゴールイン(7時20分)。
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六甲最高峰 | 六甲最高峰より凌雲台方面を臨む |
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57分19秒。休憩時間を含んで1時間01分はあまりいいコンディションとはいえない状態を考えるとなかな
かのもの。2年前に目標タイムを大幅に上回ったというところか。やはりロードは速い。このあと最高峰に登り
三角点説明プレートの岩の上でゆっくりした後、夙川方面へ下り海沿いをサイクリング、家路についた。
(本日の走行距離 68km)
2003年9月20日(土)播州/雪彦山(2.5万図 寺前)
第21回ヤブ山歩きの会。秋の低山徘徊シーズン到来ということで、播州は夢前町にある雪彦(せっぴこ)山に
登ることに。雪彦山は新潟の弥彦山、福岡の英彦山とともに日本三彦山の一つに数えられる山で古くは修験道の
山として、昭和初期には藤木九三氏らRCCのメンバーが関西屈指のロッククライミングのゲレンデとして登り
継いできた山である。
地形図では915.2mの三角点のある山を雪彦山としているが、地元では標高800mの大天井岳を中心とす
る岩峰群の総称である洞ケ岳を雪彦山、地形図の雪彦山は三辻山と呼んでいるようである。
本日の参加メンバーは3人。夏山特別企画(唐松岳登山)で楽しい山旅を大いに盛り上げてくれたコンパス姫と
トレックF代、そしてヤブ山デビュー1周年のヒウラッチである。奇しくも昨年ヒウラッチのデビュー戦と同じ
メンバーとなった。
◎アプローチ編
雪彦山へは姫路からバスで入る。午前中のバスは8時45分発しかないということで順に逆算、集合時間を大阪
駅6時30分というとんでもなく早い時間に設定してメンバーに連絡する。遅刻が心配なメンバ−も若干いたが
予定時刻には全員集合、これで安心と切符を買って駅ホームに上がる。
ハプニングはここから始まる。ホームに上がると何やらアナウンスしている。われわれが乗り込む予定の列車が
滋賀県の方で車両故障のため40分ほど遅れているという。何という事だ。列車が遅刻するとは・・・。これではバ
スに間に合わない。いきなりピンチ。
取り敢えずホームに入って来た6時38分発の西明石行き各停に乗って行けるところまで行くことにする。西明
石までこの列車が先に着くという。移動時間を考え、新神戸ではなく西明石で新幹線に乗り換える作戦に変更する。
とはいえ西明石まで各駅停車で一体どれだけ時間がかかるのか。大阪から西の方面に疎い3人は深刻に考えてい
ないようだ。爆睡していたヒウラッチが目を覚まし、明石城址を見て興奮気味に喋っている。
7時50分、列車は終点西明石駅に到着する。さあ新幹線のホームに移動だ。行ってみると幸いな事に8時11
分発広島行きの「こだま607号」がある。これに乗れば8時24分に姫路駅に着くことができる。8時45分
のバスには間に合う。犯行は可能だ(あ、いやいや)。
券売機で自由席乗車券を買う。830円。
「え、そんなに安いんですか」
コンパス姫がきょとんとしている。確かに1000円以下で新幹線に乗るのは初めてだ。
「もう旅行気分ですね」とヒウラッチはハイテンション、
「いやー、広島まで行ってきたいわー」とF代。行ってくれば?
ホームに上がると上りホームに700系のぞみが入線、シルバーメタリックのひかりレールスターが猛スピード
で通過していく。完全に旅行気分になってしまう。黄緑色の筋が入った「こだま607号」もホームに入ってき
た。車内はガラガラ。みんな遠足気分。つかの間の“旅行”を楽しむ。
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ちょっとした旅行気分・・・「こだま607号」の車中にて |
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8時24分、定刻通りに姫路に到着、駅南口に出てコンビニで弁当、お茶の調達。まだコンビニで買物をしてい
る女性陣を残し、ヒウラッチに荷物を頼んで雪彦山行きのバス乗り場を探しに行く。南側のバス・ターミナルに
は無いようだ。北側にあるのか。
と駅の北側に回ろうとすると南北に抜ける通路がない。結局大きく東に歩いて長い通路を通り、北側に出たらバ
ス・ターミナルは北西隅。ようやくの思いで探し当てたが残り時間僅か。猛ダッシュをかけてみんなの待つ駅南
西隅に戻り、事情を説明して全員で走る。残り2分。ローカル駅ならいざ知らず姫路駅の三方を2分で走るのは
無理。バス停に着いた時にはバスは出たあと。
しょうがない。タクシーを掴まえてバスを追う。全員汗だくでタクシーに乗り込む。『火曜サスペンス劇場』み
たいになってきた。いや土曜日だから『土曜ワイド劇場』か。
「雪彦山の登山口まで」
とタクシーの運転手に告げると、よく知らない様子。え?うそやろ?姫路でタクシーやってて雪彦を知らんのは
“もぐり”やで、と思ったがあとの祭り、まず前之庄まで行って、とか言いながら姫路城を横目にタクシーを走
らせる。
暫く市内を走っていると前方に雪彦山行きのバスを発見。ヒウラッチ、
「次、信号で停まったらバスのところまで走って(乗せてもらうように)言ってきましょうか」と訊く。信号待
ちの時間に後ろからバスを追っかけて走って4人が乗り込むのは難しい、おまけに市内循環路線でないので乗降
客はほとんどなくバスは止まらない、等と考えていると
「お客さん、乗ってて下さいよ−」と懇願する頼りなげな運転手。4人だとバスと値段は変わらないからとか説
得工作に出てくる。ほんとか?私の持っている地形図を見せてくれというので見せたが、当然判るわけもなく膠
着状態が続く。そんな時、前を走っていたバスが停留所で停車、われわれのタクシーがバスを追い越す。続いて
前方に次のバス停発見、「そこで降ろしてくれ」とタクシーを止め、全員タクシーを降りたところへ間髪入れず
にバスが到着、無事乗り込み完了。登山口に着く前からめっちゃ疲れたわホンマ・・・。
◎登山編
そんなわけで十分過ぎるほどのウォーミング・アップをしたわれわれを乗せたバスは9時55分に終点雪彦山バ
ス停に到着。駐車場には数台の車が停まっている。さすがにこのクラスの山になるとハイカーは多いようだ。
周囲の山にガスがかかっている。
「中国みたいですねえ」とF代。水墨画のような景色だと言いたいことがわかるほどの付き合いになってしまっ
た。
「ゆきひこ山っていうんですかあ」とはコンパス姫。なんでやねん。今まで何度も「せっぴこ」って言ってたや
ないの。人の名前やないんやから・・・。
まずは登山口で記念写真を撮る。案内板の横に回り込もうと草むらに入ったF代が犬の糞を踏んで騒ぐ。運が悪
いというか、ウンが付いている?というか・・・。
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雪彦山登山口にて | これからあの山の頂上を目指す |
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支度を済ませて管理棟横から案内標識に従い大天井岳へのコースに入る(10時03分)。間違えようのない?
コ−スなので最近体を動かしていないというF代を先頭に登ることにする。薄暗い樹林帯の中の急登が続く。気
温は高くはないが非常に蒸し暑い。どっと汗が噴出す。
先行するハイカー達をペース・メーカーにF代が元気にメンバーを引っ張る。体が慣れないうちの急登の連続は
こたえる。登り始めて20分ほどで『展望岩』に着く。不行岳から地蔵岳の大岩壁が天空を突き刺す姿は圧巻だ。
先行者の一団に続いてわれわれも出発する。足元が濡れているので注意が必要だ。暫く行くとロープを垂らした
2mほどの岩場の下りが現れる。先行するハイカーが後ろ向きに恐る恐る下っているのを見て、F代がどっち向
きで下りたらいいのか悩んでいる。
私が先に下りて下で指示をすることにする。大した下りではない。前向きにひょいと下りF代に声をかける。何
事も前向きにいきましょう、と。
「前向きですね。わかりましたー」と簡単にF代が下りるのをみて、コンパス姫も後に続く。ロープ片手に恰好
よく決めようとしてヒウラッチ、岩にぶつかりながら下りてくる。(あとから考えるとこの下りは全くの序の口
だった)
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出雲岩 | 鎖場を行く2人 |
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また急登が始まる。谷川を回りこむようにして登っていくと目の前に高さ30m、オーバーハングの巨岩『出雲
』の下に着く(10時50分)。ロッククライミングの練習場になっていてあぶみが下がっているのが見える。
登山道は裏側に回り込むように付けられている。5mほどの鎖場が現れる。アドベンチャールートの出現にメン
バーのテンションが上がる。この鎖場を上るとさきほどの出雲岩の頭の上。更に『覗き岩』に出る。生憎の天気
で抜群の展望とはいかないが高度感は満点だ。岩の上に立つと元気になるF代。リクエストに応えてポーズを取
っているところをデジカメに収める。
雨がパラっと来はじめた。こんな狭いところすり抜けられるの?という『背割岩』をクリアする。バラエティー
に富んだ岩場の出現は彼女達にとっては遊園地感覚である。
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覗き岩の上に出る | 雪彦山山頂(このあと昼食) |
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岩場のアドベンチャールートはここから断続的に登場する。鎖場が次々に現れ女性陣はテンション上りっぱなし
だ。股が裂けそうだとはコンパス姫。あのなあ。無理に一気に足をかけて登ろうとするからだ。爆笑場面連続の
うちに雪彦山(大天井岳)山頂に到着(11時20分)。
途中で追い抜いた中高年ハイカーの一団が登ってくる前に記念写真を撮り弁当を広げて食べ始める。しばらくし
て中高年グループがやって来た。若いガイドの青年が一人付いている。どこかのハイキングスクールのツアーか。
中高年のオバチャンたちの口は元気だ。われわれが占めている一角も関係なく腰を下ろし、F代の弁当を見てご
飯がないだの、ご飯はこっちと見せるとおにぎりの数が多いだの、大きなお世話状態に入る。気のいいF代はい
ちいち相手をしている。
時間もたっぷりあることだし頂上でゆっくりしようと予定していたが、じっとしていると寒い。オバチャンたち
はまだコーヒーを飲んだりしている。この山の常連と見える単独行の老人はオバチャン越しにコンパス姫達に話
し掛けてくる。ま、当然の選択だわな。
11時45分出発を告げ早々に大天井岳を後に三辻山に向う。いったん緩く下り、登り返したところが838標
高点ピーク、もういちど登り返して鹿ケ壺分岐。最初の激登りが今時分になって効いてきたコンパス姫、珍しく
足がもつれかかっている。1年ぶりに会うヒウラッチの足取りが予想外にしっかりしており休憩回数の読み違え
もあるようだ。
12時15分、地形図上の雪彦山こと三辻山山頂に着く。三角点がひっそりと埋まっている。薄暗い樹林帯の中
で展望はない。確かにこんな地味な山が雪彦山なら雪彦の名が泣く。4〜5人の中高年ハイカーが出発の準備中。
お先に行かせてもらう。
鉾立山に向う鞍部のあたりで雨がサーッと音を立てて降ってきた。蒸し暑いこともあってカッパを着る気にはな
れない。ツガの大木の下でザックカバーを付けるようにだけ言う。
「あ、ザックカバー忘れてきました」とコンパス姫。
「2つもザックカバーを持っていながら肝心な時に・・・」と言い終わらないうちに、
「あ、これ(ザック)、カバーが付いているんでした(内臓型)」
「あのなあ・・・」
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三辻山(三角点のある雪彦山)で休憩 | 鉾立山には展望プレートが設置されている |
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12時45分、鉾立山山頂に到着。標高960m、本日の行程の最高点、これより高いところはない。大雑把に
言ってしまえばもう登りはない(実際はそんなことはないが)ということだ。北西方向に展望見取図が設置され
ている。氷ノ山は勿論のこと晴れて視界のいい日は大山まで見えるらしい。残念ながら今日はガスっていて目の
前の山も水墨画状態である。
山頂を過ぎ5分も歩かないうちに今度は『東尾根展望台』が現れる。こちらは瀬戸内海までが見渡せるようだ。
展望図には小豆島まで書かれているが、目の前の地蔵岳から大天井岳がそれこそ幽玄の世界に包まれたみたいに
見えるだけだ。それが逆に距離感を与えるのか、あんなところからもうここまで歩いてきたのかとヒウラッチは
感動している。
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鉾立山東尾根からガスる洞ケ岳を眺める |
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13時05分、942m標高点。ここで南東にルートを取る。このまま虹ケ滝コースを下ったのでは時間が余り
過ぎるので南南東にのびる地形図の破線を歩くことをメンバーに伝え、100mほど歩いたところに分岐がある
からと先頭のF代に告げる。
◎激闘編
慎重に進むまでもなく小さな鞍部になったところに『虹ケ滝−>』の標識は現れる。われわれは見送って直進だ。
さあ、ここからはハイキングコースではなくていつもの静かなヤブ山ルートだと言いながら歩いていく。
ところどころに赤テープの目印があり、案外歩かれているコ−スのようである。いい調子で歩いているとやがて
道は判然としなくなり踏跡すら消えてしまった。とはいえ半分植林の山、見通しのいい尾根に出れば見当は付く
だろうとヤブを漕いで尾根に登りつくとそこは崖の上、遥か下に林道がクネクネと走っているのが見える。眼下
に鉄塔も見える。草原も続いている。どこかで道を間違えはしたが鉄塔まで行けば巡視路に行き当る筈だ。
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サバイバル始まる |
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崖をそのまま下る。ヒウラッチとF代が怖々後に続く。コンパス姫はエスケープルートを探して2人より先に下
りてきた。その辺のルート見極めは結構上手い。辿り着こうとした鉄塔は案外手強い。植林帯の中を急降下しな
がら補正をかけて鉄塔に辿り着く。何度もコケたかF代は泥だらけだ。ここまでデジカメ片手にずっと歩いてき
たがさすがに真剣に歩こうとザックに放り込む。
鉄塔には着いたものの巡視路は行き止まりになっている。道路は見えているのになかなか辿り着けない。メンバ
ーを残しどこかに道はないかと探索に。草原と見えたのは背丈も没するススキの海。ちょっと進んだだけで忽ち
切り傷だらけになってしまう。
時計を見ると2時に近くなってきた。いくら時間に余裕があると言ってもこんなところで行ったり来たりして時
間を潰しているとあっという間に無くなってしまう。メンバー達の所に戻り、植林帯の中を伝って高度を下げ、
林道に下りられそうなところから抜け出る作戦に切り替える。
幸い女性達もわが会では1、2を争う元気なメンバー。戻るよりも強引に突っ切った方が時間が早い。どこから
でも突破できる自信はこれまでヤブ山での数々の迷走の賜物。問題は地形図にもあるとおり、林道山側斜面は全
て崖マークが付いていることだ。
植林帯の末端(林道に近い部分)は雑木藪になっている。最初に見当をつけて下ってきたところはほぼ垂直な崖。
高さ5m。伸び放題の草の根元を見ると斜面崩壊防止の金網のネットが張ってある。登山靴のつま先がネットに
かからない以上、ネットの垂直下降は難しい。
メンバーを植林帯の中へ戻し、もう少し崖が低いところへトラバース、あたりを付けたポイントからイバラを退
けながら斜面を下ると崖の高さ3mくらいの地点に。下り易いようにルートを作りながらポンと林道に飛び出す。
ふうやっと道に出た。
10mほど上で待機するメンバーを順番に呼び下から足を置く場所を指示する。最初に下りてきたのはヒウラッ
チ。続くF代が足場を崩しかける場面もあったが、何とか最後のコンパス姫が下りきるまでは持ちこたえ14時
28分、無事全員生還。
われわれが無事林道に辿り着くまで待っていてくれたのだろうか。途端に雨脚が強まってきた。全員両腕は泥だ
らけだが、幸いなことに怪我もなくそれほど汚れてもいない。最初の大天井岳岩場の急登のアドベンチャーコー
スも最後のサバイバルコースに翳んでしまったか。
「どう考えても下ってくるような斜面じゃないですね」とヒウラッチはまだ興奮している。せっかくだから最後
に下ってきた現場を写真にでも残しておくことにするか。
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こんなところを下ってきました (中央の黒くなったところ)
| とってもサバイバルな一日でした。 (林道から天空を突き刺す地蔵岳のバックに)
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一息ついたところで林道をバス停方面に向って歩き出す。ふと振り返ればコンパス姫が雨で汚れた腕を洗いなが
ら歩いている。3年前までは山歩きとは無縁だったお嬢さんもすっかりアウトドアになってしまった。
暫く歩くと林道からの起点5kmの標識が現れた。あと5kmか。15時半には着くだろう。途中、大きな岩が
道路中央まで崩落している現場を通る。金網ネットを突き破って転がっている岩の破壊力の凄まじさにF代が感
動している。
15時38分、すっかり本降りになった雨の中登山口へ戻ってくる。雨宿りする場所がないので近くの地蔵堂に
入って寛ぐ(15時43分)。当初案内に書いた到着予定時間は15時50分、そこだけ見ればほぼ完璧な計画。
だが実際は結果オーライの綱渡り山行。自分1人だけならいざ知らずか弱き女性達を連れてのサバイバルはたま
たまメンバーに恵まれただけという運もあったと反省。
そういやF代はと言えば
「見て下さいよ。すっかり綺麗になったでしょ」と靴の底を見せて笑いかけるのであった。
いつも織田さんと山遊びをされているミセスFさんの寄稿文です
2003年9月20日(土)、21日(日)北アルプス/五竜岳
2003年9月20日(土)、21日(日)北アルプス/五竜岳
19日の出発の夜、台風発生の天気予報にどーなることかと心配していた。九州に台風が近づくだけでも、アルプスの
稜線は風がきついと聞いていた。台風直撃は無いにしても雨は避けられんなあと、Tちゃんとさわやか信州号に乗った
ときから気分はブルーだった。
20日、予定通りの時間に白馬五竜エスカルプラザに到着。う〜ん、曇り。持ちそうか?その前に停まった扇沢なんか
霧と雨と暗いのとでどんよりしていたから、それと比べたらましか。東京方面よりA君の方が先に到着してエスカルプ
ラザの屋根の下で待っていた。彼と会うのは2年振りだ。はっきりいって等で待ち合わせの確認など一切したことが
ないので、よくも今日ここで待っていたなと感心してしまう。ちなみにいつも待ち合わせはこんな感じ。他に登山客は
5,6組ぐらい。少なっ!と思ってしまった。この時期、テレキャビンは8時15分からしか動かないので、朝食を食
べたあとそこらへんをぶらぶら。はっきり言って店もなにもない。ぼ〜っと過ごす。8時に乗り場に移動。切符を買う
。テレキャビンに乗り込む。下界がみるみる遠くに。でも霞んでしまい、しばらくすると見えなくなってしまった。T
ちゃんはここによくスキーに来るらしく、アルプス平からの眺めはすばらしいよと言っていたが、あいにくの天気で見
えない。カッパの下を着て、ザックカバーをかけて歩き出す。8:40。
最初はスキーのゲレンデをだらだらと歩く。すると30分ほどで地蔵の頭に。お地蔵さんに今回の登山の無事をお祈り
して、さらに進む。右手方向に八方尾根がきれいに見える。7月末に歩いたばかりだがそのときと季節も違い、懐かし
い気がした。八方尾根よりこちらの方が低いところを歩いているようだ。唐松岳もきれいに見える。ちなみに五竜岳の
頂上らしきものははるか遠くに感じられた。ところどころ高山植物が咲いている。ワレモコウ、アザミ、リンドウが一
番良く目についた。この中途半端な時期のため、花は期待していなかったが結構咲いていたのでよかった。今年は夏が
遅かったからかな。10:15、小遠見山の山頂へ。休憩する。八方池山荘が見える。あれ、人やねと私。あんなでかい人
がおるかってA君に言われてしまった。よく見るとその「人」と思った物体は山荘の屋根まで背丈がある。ガイドさん
を連れた4人グループも到着。ガイドさんの説明を小耳にはさむ。周囲の山の説明をしているようだった。槍が見える
というのでその方向を見る。確かに槍だ〜。穂先だけが見える。雨雲が来てるねとガイドさん。でも大丈夫。君たちの
足だと間に合うよとのこと。ほんまかなあ。だって、まだまだ先は長い。そして、中遠見山をいつのまにか越え、11:
25、大遠見山に到着。お昼にする。朝が早かったのではっきり言って9時頃からお腹がすいていた。何組かのチームも
ここでお昼にするようだった。ここで携帯の電源を入れてみた。おお、なんと、アンテナが立つではないか!それなら
ば今日雪彦山を登っているコンパス姫にメールしてみる。なんかいろいろ書きたいけど、とりあえずシンプルに。休憩
している間、ぽつぽつと何滴か細かい雨が落ちてきた。カッパの上を着て出発。コンパス姫からのメールの返事は諦め
て、携帯の電源を切る。西遠見に到着するとここは日本か!と思うようななんとも言えぬすばらしい景色だった。池越
しに五竜岳が見える。空こそどんよりしているが、雄雄しい姿で迫力があった。写真を何枚か撮る。2時までに小屋に
着くんじゃないかなとA君。この尾根、いくつものピークを登ったり降りたりが激しい。せっかく登ったものを降りる
のはもったいない。白岳の根元に来た。ここからようやく登り詰めるだけかと思ったらやはりこぶこぶが何個かある。
小屋は見えてるのに、ここからまっすぐ行ったらすぐなのにとアルプスの少女ハイジの雲の上に乗って移動するのを想
像してみたが、虚しいだけだった。もうこれを超えるだけでいいんだよねとA君に尋ねてみる。実はかなり足にきてい
た。やっとのことで白岳を越え、五竜山荘の屋根が見えてきた。ジグザグ道は穂高岳山荘に通じる道に似ている。あの
ときも、雨がぽつぽつ降りだして、泣きながら小屋に向かったっけ。
山荘に入り、宿泊手続きをとる。イワカガミの部屋へ。7畳ほどの板張り2段目。まさか、今日はここ3人だけで使える
の?とりあえず、荷物を置いてぼーっとする。今日は頂上行かへんの?とTちゃん。もう時間が遅いから。雨も本格的
に降ってきたしとA君。もうくつろいでいる間に2時半だもんな。私はもう足がへろっていたので、今日はいずれにし
ても正直頂上をめざす気はなかった。とりあえず着替えを済ませる。結構汗をかいていた。この夏は天気が悪かったせ
いか、この小屋かなり湿っぽい。部屋自体、じっとりして冷たい。半袖Tシャツの上に直にフリースでは寒かったので
、寒い寒いを連発していたら、A君が薄手のフリースを貸してくれた。それを着たら着膨れしたけどぬくかった。今回
、A君から魔法瓶持参って言われたのに結局私だけ持ってきて、使うこと無かったから、そのお湯を使ってお茶にする
ことにした。魔法瓶のお湯はまだ温かかった。紅茶を飲むとほっとした。夕ご飯が5時からだと言われたので、するこ
とないので布団をひいてみた。Aくんはもう寝転んでいる。私も隣で寝転んでみた。すると、3人グループがこの部屋
に入ってくるらしい。広げていた荷物を一方に寄せた。この3人さんは新潟の人で、男性2人女性1人の構成だった。
年齢は私たちより10歳ぐらい上か。とにかく元気な人たちで、ひととおり荷物整理や着替えが終わると、トランプし
ませんかときた。なんだか私たちは疲れていたので断ってしまった。3人で寝転んでいるうちに夕飯の時間にやっとな
った。テーブルで相席になったおじちゃんたちがしゃべりかけてきた。私たちはいつもこのメンバーで毎年登ってるん
だと説明すると、おじちゃんたちはそれぞれ単独なので羨ましがられた。そう言われてみれば、このメンバー、常に一
緒にいるわけでもなく、息が合うというか気が合うというか・・・なんなんだろう?もう慣れたって感じの方が近い。
話は弾んだが次の食事の交代があるので、食堂を後にした。あとは寝るしかない。こんな時間から寝ることはないが、
とにかく寝た。布団が鉛のように重い。湿気ていて冷たい。かと思えば部屋の中の人の息でだんだん暑くなってくる。
暑いのか寒いのかよく分らない。それ以前に全然眠れない。まあ、いつものことだけど。夜も更けていき、屋根に落ち
る雨音は一向に変らず等間隔を刻み続けていた。寝る前にA君が言っていた。明日雨とガスがひどくて強風の場合は頂
上へ行かないと。この雨音では止みそうにもないなあと思いながら。明日は頂上を目指さないんだろうか。でも私とし
てはこの山荘に着くだけでも十分しんどかったので、なぜか満足感はあった。頂上は目前だが、リスクは背負いたくな
いというのが本音だった。A君の右肩に頭を押し付け、無理矢理目をつむり、いろんなことをぼんやり考えていたりう
つらうつらしたりしているうちに3時半になった。Tちゃんのアラームが鳴った。雨音は一向に緩んでない。4時にな
った。A君が外の様子を見に行った。屋根に落ちる雨音とは裏腹に小降りだと言う。どーするか。という相談をA君と
Tちゃんは私の頭上で行っている。実は私はようやく眠くなりかけてきたときだったので起きたくなかった。が、今日
の目的はなんだったか思い出して、ほな行こかってなことになった。急いで支度をする。カッパを着て、荷物は最小限
に。ライトを照らし、いざ小屋を出発。4:40。
うっ、暗い!雨はそれほど気にはならなかったが暗さに戸惑った。それでも目が慣れると、砂地の道が白く浮いて見え
た。五竜岳の頂上はその闇の中に黒々としたシルエットを浮かび上がらせていた。今はまだガスもあまり出ていないよ
うだった。頂上まで二つのピークを超えなければならない。果たしてこの暗さで無事に着くのか。後ろを振り向くと、
小屋の明かりがどんどん遠くなり、やがてガスで見えなくなってしまった。私たちの外に追従するチームもおらず、こ
の闇の中に私たち3人だけかという妙な孤独感が増してきた。そこへクエッという泣き声が。暗闇で分らないが斜面の
どこかにカエルがいるようだった。やがて道が岩場に差し掛かった。とにかく滑らないように慎重に足を運ばなければ
いけない。落ちないように滑らないように迷わないように、念仏のように唱えていた。気がつくと自分がものすごく切
り立った崖に立っているようだった。これは完全に道が外れている。A君もそのことに気がついていた。ちょっと待っ
てて。A君がとんでもなく急で足場が悪い崖を登っている。待っている間、Tちゃんと道を探す。暗がりの中、少し上
の方に道らしき段差が見えるような気がする。どうやらどこかで上がらなければいけないのをそのまま真っ直ぐ来てし
まっているらしい。A君のここまで上がっての指示。こんなとこ登れるか−っ!ここから直登する勇気は無い。来た道
を少し戻ることに。そこで気が付いた。足元がすっぱり切れ落ちている。下は闇だった。くらくらしながら山側に上体
をもたれかけさせる。だめだわ。一度怖いと思ったら、全身の力が抜けていくのが分る。自分で自分を励ましながら登
る。コース修正の後、落ち着くところがないのでとにかく前進し続ける。夜明けの来ない夜はないなんて言うけど、こ
の天気だし明るくならないんじゃないかと思うようになった。岩場は道が不明瞭だし。無事着くの?でもこの人を信じ
てついていくしかないと思った。鎖場が現れた。慎重に三点支持のポジションを選ぶ。とにかくひとつひとつの動作を
丁寧に。3箇所の鎖場を越え、頂上らしきピークの上にとうとう乗った。標識が見える。でもそれは鹿島槍への道との
合流点だった。と、もう少し進んだところに一本の標識が見える。やった〜。頂上だ。今この時間にここにいるのは私
たち3人だけ。もう着かないんじゃないかと思っていた。涙が出そうになった。でもここでは泣けない。だって帰りの
方が大変だから。写真を撮り、あまり長居はできないとA君。あいにくの天気で日の出が見れる訳でもなし、早速下山
することに。風が出てきた。先ほどより随分明るくなり、上から見下ろすと鮮明に道が分る。下山は道選びに苦労はし
なかった。鎖場に来た。登りはよくても下りは足が届かない。足が滑っても鎖の手を離さなかったら大丈夫だからとA
君の指示。あの〜、その手が滑ったら終わりなんですけど。今ここでは決して笑えないとんちんかんな指示を呑み、慎
重に下っていく。すると登ってくる人に出会った。気をつけて。お互い声をかける。同室の3人組とも会った。かなり
明るくなってきた。ガスの間から突如小屋が現れた。あれ、もうこんなところまで戻ってきてたんだ。小屋の玄関の軒
のところまで小走りした。感動でA君に抱きつこうとしたが、お互い空振りした。雨が少し激しくなってきていた。6
:30。
さて、朝のお弁当も食べ、荷物を背負い込み、本格的に下山にとりかかる。7:30。雨はそれ程強くない。風もないし
、ガスもない。頂上の方はガスがかかっていたが。昨日からの雨の影響からか、山の斜面が昨日より色づいている気が
する。もう秋なんだ。そしてガスが水墨画のようにかかっていて、幻想的である。行きに写真を撮った西遠見、今日は
池に五竜岳が映っていない。お昼を食べた大遠見、と過ぎていく。中遠見あたりから登るのがしんどくなってきた。下
山といってもいくつかのピークを越えながらだから、結局登りは必ず付き物だった。小遠見はパスした。ところどころ
道はぐちょぐちょだった。もう、カッパを早く脱ぎたいと思っていた。足にもかなり負担がきている。12時までには
エスカルプラザに着きたいとA君は言うが、私が思ったよりスピードが出ないことを告げた。今朝の頂上アタックで全
神経を集中させたので、かなり早く疲労がきているようだった。だんだんA君についていけなくなる。A君は時折振り
向きながら待ってくれている。地蔵の頭へ着いた。行きしなにお祈りしたところ。無事戻ってきたことを心の中で報告
する。アルプス平までの斜面が足にこたえた。テレキャビンに乗る前に靴を洗うところがあったが、腕に力が入らずう
まく洗えない。A君とTちゃんが両方から私のそれぞれの靴を洗ってくれた。テレキャビンに乗りこむ。もうガスって
いてなにも見えない。
エスカルプラザでカッパを脱ぎ、タクシーを呼ぶ。バスは2時。風呂に入りたいのとご飯を食べたい旨を告げると、白
馬ロイヤルホテルに行ってもらった。実はここで風呂に入れるのは知らなかった。露天もあり、雨の中だったがよかっ
た。おそばを食べて1:35。もう、バスの待合に移動しなきゃ。いつもなら時間もなくばたばたとお別れなんだけど
、今日はほんのちょっとだけ時間がある。A君と話す言葉も見つからないまま、時が過ぎる。1:45、バスが来てし
まった。じゃあ。お互いどちらからともなく手を握り交わす。激しい雨の降る中Tちゃんとバスに乗り込み、車窓から
手を振る。あれ、この状況どこかであったような。3年前の上高地か。そのときもこんなどしゃぶりだったな。左手に
は先ほどの彼の手の温もりがまだあった。
車内ではTちゃんと今回の山行の感想やら、A君の話題やら、来年どこ行こかで盛り上がっていた。しばらくして、A
君からメールが来た。また来年楽しみにしてます、と。
大阪に着くと風はもうすっかり秋だった。
織田(おりた)さんへのメールはbabrx800@jttk.zaq.ne.jpまで・・・。
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