山を駈ける風になれ2003年 12月号

 
2003年11月1日(土)篠山/倉谷山〜寺谷山 (2.5万図 篠山)
11月に入った。低山徘徊のベスト・シーズン到来ということで篠山は古市駅すぐ北側の表題の低山群を歩くこ
とにする。
午前5時の気温13.3℃とここのところ暖かな朝が続いている。この山までピストンでは80km程度にしか
ならない。せっかくのいい天気、それだけでは勿体ない。下山後の時間を見てぶらりサイクリングもしようとレ
ーサーで出発する(5時58分)。

足の疲れがとれないまま今日の走りを迎えてしまった。予想通り赤坂峠の上りで苦しむが、平坦、下りになれば
足も回る。無風にも助けられて快走、7時22分古市に着く。道路脇の気温10℃はちょうど気持ちのいい温度。
自販機コ−ナーで水分補給をして宿場町だった面影を残す古市の旧街道筋を抜け、踏み切りを渡り見内に入る。

倉谷山への取り付きは地形図の送電線と見内へ北上する道と倉谷山の南から東へ伸びる緩い尾根が交わるポイン
トから(7時33分)。関電巡視路の「火の用心」標識と『松茸山入山禁止 波賀野部落』の丸い標識が立って
いる。

倉谷山登山口・・・立入禁止期間中なんだけど

登り口は竹薮になっている。ロードをデポし竹林の中を登っていく。すぐに左手に鉄塔への道を分岐するが緩い 尾根上に快適な山道が続いている。ところどころ古い赤テープが残されている。倒木が煩わしいところもあるが 全体に気持ちのいい雑木林の中の漫ろ歩きコース、少し詰めれば南からの山道と合流(7時50分)、北に方向 を変えすぐに倉谷山山頂に到着する(7時53分)。 366.3m3等三角点が埋まっている。紅白の測量ポールに山名を書いた板が打ち付けられている。南東方向 に切り開きがあり古市の町を包むように406山、更に背後に柏野山から太平3山に続く山並みが一際高く横た わっているのが見える。
倉谷山山頂から南東方向(手前は406山、後ろは柏野山)

先を行く。シカ除けネットを過ぎると小崩壊地があり御狩山と西寺山のビューポイントが現れる。シカ除けネッ トは左右に交互に現れる。少し急登すると山頂手前の細い尾根に乗り、すぐに丸みを帯びた寺谷山山頂に (8時11分)。 山頂付近は木が伐採されていていい展望スペースが開けている。北西方向にほぼ水平な枝尾根が見える。音羽山 方面の山も見える。が何といっても迫力があるのは目の前にどっしりと構える松尾山。山頂付近はかなり紅葉し ているのが見てとれる。
寺谷山山頂の様子寺谷山を過ぎたところで松尾山の勇姿が。
山頂付近は紅葉しているようだ。

まだまだいい道は続いている。どこかで住山から松尾山に向うハイキングコースと合流するのは間違いない。ロ ードを置いてきた場所を考えると北上し続けることは長い舗装路歩きをしなければならないことに繋がるが、そ れ以上にどこまでも歩いていたい道である。はっきりいってMTBで来るべきだったという“いい道”だ。 寺谷山から20分ほど歩いたところで右に分岐が現れる。行き過ぎて振り返れば『見内方面/寺谷山』の分岐で ある。10mほど先には『穴地蔵尊』の石仏、そして松尾山−住山ハイキングコースに乗る。 コースを確認したところで下山にかかる。見内へ下る。はじめは尾根筋を右手に見ながら徐々に南南東に標高を 下げて行く道、やがて植林帯の中の下りに変わり20分ほどで田んぼの横の農道に出る(8時58分)。
穴地蔵尊

少し汗ばむくらいの暑さだ。あとは三嶽南麓を走って福住へ。脛擦り坂を上って天王−籠坊と走り、いつもの周 回コースを気持ちよく楽しんだ。     (本日の走行距離130km) 2003年11月15日(土)六甲/岩倉山〜樫ケ峰 (2.5万図 宝塚) 第22回ヤブ山歩きの会。今日は超近場、自宅から歩いて登って帰って来れる東六甲。縦走路を使って宝塚から 逆瀬川まで環縦走をすることに。 秋のハイキング・シーズンということも考え初心者向きのコース設定をしてメンバーを募ったが、結局参加して くれたのはレギュラー陣のコンパス姫とミスBのベテラン2人。こんなメンバーになるのだったらもっと“刺激 的”なところでもよかったかもと思いながらも1年1ヶ月ぶりに会うミスBの顔を見るのを楽しみに待合せ場所 のJR宝塚駅に行く。 待合せ時間の8時よりも早めに来ていたのはミスB、来月に予定している納山会の話などをしながらコンパス姫 の到着を待つ。が、予定時間を過ぎても現れない。どうしたんだろうと話しているとミスBの携帯にメール、コ ンパス姫からだと言う。 『乗り過ごしました。生瀬から折り返し戻ります』・・・あのなあ。わが会も22回やっている。寝過ごして列車に 乗り遅れたというメンバーは過去に何人かいた。が、乗り過ごして通過してしまったメンバーは初めてだ。ま、 今日は乗り継ぎのバスの時間を心配することも、タクシーで追跡する心配もないので、気恥ずかしいそうに戻っ てきたコンパス姫を温かく?迎えて本日の歩きを開始する。15分遅れ。 阪急宝塚駅をぬけ、武庫川に架かるS字の宝来橋を渡り、紅葉ケ丘の住宅地の中をぬけて舗装路をゆっくり歩く。 久しぶりの歩きだというミスBがちょっとしんどそうだ。 「ずっと上までこんな道が続くんですか」とミスB、まさか山の上までこんな舗装路が続いたら山歩きとしては 面白くない。甲子園大学の手前で小休止する。 熱くなってパーカを脱いだコンパス姫、たたんでザックに入れようとしたが、小さいザックを持ってきたためど うたたんでも入らない。体が温まってきたらどこかで脱ぐのはわかっていた筈、どこに収納しようと考えていた んだ。と言っていても始まらず、私のザックに収納することに。 息を整え再び歩きだす。ここから塩尾(えんぺい)寺への登りは更にきつくなる。9時07分、ようやくの思い で塩尾寺に到着する。寺は増改築中と見えて大工さんの姿が見える。2人が御参りしている間に毎朝ここまで歩 いているという老人と喋って情報交換をする。 『東六甲縦走路』の看板を横目に見ながらやっと土の道の登りに入る。デジカメを向けるとポーズをとってくれ るコンパス姫。しかし、雲も厚い上に樹林に覆われた薄暗い山の中では真っ暗で何も写らず失敗(^^ゞ。 山道は最初こそ花崗岩が雨でえぐられた上に、段差の大きな階段がつけられて歩きにくいが、砂山権現あたりか らはほぼ水平道といってもいいほどの快走路(MTBでいうところの)になる。 歩きやすくなるとすぐにお喋りが戻ってくる2人、水平道を左に見送って右の山道をちょっぴり登れば山頂に祠 がある岩倉山の山頂に到着(9時30分)。怪訝な表情でついて来た2人もようやくその理由がわかったようで 山頂で記念撮影。3等三角点は祠の中央前に埋まっている。
岩倉山山頂にて

再び水平道(=東六甲縦走路)に戻り譲葉山(514m)の横を通り小さなアップダウンをこなして砂原山分岐 を右手に見る。『宝塚市最高峰 砂原山 573m』と書かれた立派な案内標識が立てられている。以前は何も 無く知る人ぞ知る分岐だったが、この標識が立てられてから砂原山を往復する人が増えたのだろう、はっきりと した踏跡がついている。 宝塚市の最高地点は砂原山に違いないが、山と呼ぶにはいささか抵抗があって、私自身は北摂の大峰山(552 m)が宝塚の最高峰だと思っている。 いい加減単調な歩きに飽きが来はじめた頃、大谷乗越に出る(10時10分)。ここからはしばらく車道歩きだ。 連続ヘアピンの激下りも歩けばただの急な道、紅葉にはまだ少し早くトロトロと歩いて小笠峠の手前にある小笠 峰登山口に到着する(10時28分)。 ここから小笠峰(490m)までは短いが一気の登りだ。雨が降っていたのだろうか、少し周囲が濡れている。 滑らないように足元に気をつけながら荒れた山道をどんどん登っていく。やはり久しぶりのミスBの足元がヨレ ってきた。もう少しと励ましながらもヨレているところをデジカメに収める。
小笠峠から小笠峰への急登小笠峰到着

10時38分、雑木藪の中といった感じの小笠峰山頂に着く。やはり急登とはいってもゆっくり登って10分程 度の登りだ。山頂とはいっても休めるようなポイントとてなく、写真を撮ったらすぐに移動する。西三ツ辻を越 えたところで本日始めての中高年ハイカー軍団と出会う。こんなマイナーなルートも歩かれるようになったのか と感心する。 東三ツ辻出合を越えると岩場に出る。胸のすくような高度感が広がる。馬の背展望台だ(11時03分)。展望 台と言ったって人工的な構造物はない。自然石の配置が美しい天然のビューポイントである。今しがた歩いてい た岩倉山から大平山へと続く六甲の主稜線が視界を大きく区切っている。紅葉はまだだが岩肌の荒々しさと松の 青さがいかにも六甲山系らしい景観を見せてくれる。
馬の背展望台ポカポカ陽だまり昼食タイム

天気は下り坂との予報であったが、幸いなことに陽がさしてきた。ポカポカと暖かくて気持ちのいい中、昼食タ イムとする。小春日和の尾根筋を吹きぬけるそよ風は少し汗ばんだ体に心地よい。30分ほど休む。 昼食タイムを終えて歩き出す。10分少々で樫ケ峰山頂に着く(11時45分)。地形図には457mとあるが 案内標識には461mとある。雑木に覆われて展望はなく山頂とはわかりにくい。樫ケ峰を過ぎればあとは下っ て終わりだ、と思って歩いているといつの間にか少し右よりのルートを取って下っていることに気付く。
樫ケ峰山頂道を間違えて戻ってきました・・・(-_-)

今日は前回(9月、雪彦山)のようにサバイバルするつもりはない。ところどころ木の幹に赤テープも巻かれて はいるものの、このままいくと西宮ゴルフ場に出そうな気配。真面目に後戻りしてルートの修正をかけ、関電の 巡視路を一気に岩倉橋へ下りきる(12時15分)。 ショート・コースながらもハイカーで賑わう六甲のメイン・ストリートを外せば静かな山歩きが楽しめるしっと りコース、メンバーそれぞれに心地よい疲労を体に感じつつ逆瀬川駅行きのバス停に向かって住宅地の中を歩いた。    2003年11月22日(土)北摂/涼瀧山 (2.5万図 木津、武田尾) 今年最後の三連休は全般に天気がよさそうという予報に能勢天王折り返しでいつものコースを周回、前から気に なっていた表題の山に立ち寄ることにする。 涼瀧山は宝塚北部、長谷にある普光寺を抱くように鎮座する標高323mの無名の低山。名前は普光寺の山号か ら仮称したものである。 昨日とは一転して寒波襲来ということで朝から寒い。ま、例年ならこんなものかも知れない。6時25分、トレ ーニングがてら走り出す。 先週山歩きで1回走るのをサボった影響か体が重たい。向かい風も強いとあってスピードが上らぬまま杉生に到 着、何とか杉生新田、泉郷峠の上りをこなして能勢天王に着く(8時23分)。ここまでくると時雨れている。 じっとしていると寒い。途中、燃えるようなモミジをデジカメに収めたりしながら後川へと下り、木器−千刈貯 水池−宝地ケ鼻と走って長谷の普光寺に着く(9時44分)。
人知れず紅葉(籠坊、能勢天王境の山中にて) 普光寺

摂津国33ヶ所霊場の14番霊場とある。本堂の東側斜面から裏手に回り、ロードをデポして歩き始める。本堂 の裏には小さい溜池が2つあり、東側から池の畔を通って山の中に入る。残念ながら踏跡と呼べるほどの道は見 つけられないものの、何となく道のように見えなくもないところを歩いて寺の東側を南に伸びる尾根に取り付き、 地形なりに歩いて山頂と思しき地点に到達する(10時05分)。 地形図でみると頂上部は広く平坦になっているので、山城の跡でも見つかるかなと期待したが、雑木が密生して いて展望どころか移動も容易でない。登頂プレートの類一切なし、ここまで赤テープも一切なしの静かな山である。 とはいえこのように人里近い里山、山頂に着けばどこからか踏跡が伸びてきているだろうことは過去の経験則か ら想像できること。案の定、北西側に境界杭と古い鉈目を見つける。北西とは意外な気がしたが鉈目を追ってい くことに決める。
323峰山頂(涼瀧山)北西にはこんないい道が・・・

北西に続く境界杭は尾根に沿って北に向きを変える。コンパスを持ってくるのを忘れたが、樹の間から三蔵山と 今井岳が見えるので方角の確認はできる。少し下って小さな登り返しが現れるあたりは雑木の紅葉と足元のシダ の青さが見事に調和した低山ならではの漫ろ歩きの小径、言うことなしの風情が楽しめる。 20分も下ったろうか、山の麓を鉢巻のように取り囲む水平道に出た。入門者向けMTBコースといった道である。 どこまで続くのか確かめて見たい気もしたが、どういうわけか田んぼのあぜ道に出てしまい、小川に架かる小さ な橋を渡って車道に出る(10時33分)。 少し南に歩いたところに『下佐曽利』のバス停が現れた。これはかなりの車道歩きを覚悟しなければならない。 歩くほどに雲の間から太陽が顔をのぞかせるようになってきた。陽が照るとポカポカと気持ちよくなる。20分 かけて普光寺まで戻ると本堂に腰掛けてサンドイッチ・タイム。晩秋の長谷の景色を楽しみながら帰路についた。      (本日の走行距離103km) 2003年11月24日(月)篠山/石山〜西ケ洞山 (2.5万図 篠山) 三連休の最終日。午後から天気が崩れるとの予報にショート・コースに変更、表題の山を訪ねることにする。旧 丹南町、油井−古市−小野原に囲まれた小さな山塊である。西ケ洞山は今月初め、波賀野新田から寺谷山を歩い た時にシャープな姿に惹かれ登ってみたいと思っていた山である。 昼前までは晴れるという予報とは裏腹に朝からドンヨリとした天気、それほど寒くはない中ロードで出発する( 6時30分)。 三連休毎日出かけているものだからさすがに足に疲れが残っている。最近では最も遅い速度で赤坂峠を越えると その後も一向にペースは戻らない。おまけに相野を過ぎたあたりから強い北風に押し戻されるような走りで7時 58分、ようやくという感じで油井の集落に入る。 今日も篠山盆地は丹波霧が発生しているようだ。松尾山の南まで真っ白な霧が流れてきているのが見える。地形 図で現地を確認した後、西ケ奥峠へ向かう道へと走り、途中から北に折れ住吉神社(地形図の鳥居マーク)にロ ードをデポする(8時05分)。 住谷沿いに地形図の破線の道を辿り、石山と西ケ洞山の鞍部に出ようという作戦だ。砂防ダム沿いの破線の道は 実線の道にしてもいいくらいの幅のある林道で歩き易い。4つ目の砂防ダムを越えたあたりで一度ガレガレの道 になるが、またいい道に戻り、やがて『火の用心 No22』の関電の巡視路標識が現れ、谷筋を離れて石山側 の斜面を登っていく。 落葉が十分に堆積した気持ちのいい巡視路で疎らに生える雑木林の紅葉も美しく、こんな身近なところにいい道 があったことに感動しながら登ればNo22の鉄塔に着く(8時22分)。南西に露岩が点在する西ケ洞山の荒 々しい斜面が見える。 巡視路を更に北東方向に歩いて行くと石山からの踏跡に合流する。石山へは登るつもりはなかったのだが、ここ までくれば山頂はすぐそこ、ついでに訪ねてみるのも悪くない。踏跡を右に折れ雑木に覆われた丸い石山山頂に 立つ(8時27分)。
No22鉄塔から西ケ洞山東面石山山頂(すぐ下は採石場)

展望はなく静かな山頂である。正確には現在最も高いところと言った方がいいかも知れない。昔から採石を繰り 返し、今はすっかり山の形が変わってしまった。この山を最初に見た12年前の山頂は削り取られて無い。東側 を覗きこめば数十メートル下に採石場が見える。 風も強く寒くなってきたのでさきほどの分岐に戻りNo23鉄塔まで歩く。鉄塔越しに幾重にも重なった雲海が 見える。巡視路はここで真北に向かって下りていく。西ケ洞山へは南西に向かわねばならない。 踏跡はないが古い鉈目を拾いながら慎重にヤブを漕いで尾根をはずさないように進む。ほぼ正確にトレースでき たようで住谷のどんづまりに出る。小崩壊地になっている。歩きやすそうなところをトラバースして西ケ洞山へ の尾根筋に乗る。村の境界を表す石標が埋まっている。『青』という文字が読める。何のことだろうか。 南西側の切り開きから西ケ洞山北側中腹にアンテナが立っているのが見える。ということは少なくともそこまで は踏跡が続いているということだ。 踏跡が南南西に方向を変えるところで小野原から四斗谷方面のビューポイントが現れる(8時45分)。重厚な 巨体を横たえているのは西寺山。少し休んで先を行く。 きついと思われた登りはさほどでもなくアンテナの下に着く(8時53分)。NHKのケーブルが埋設してある らしい。
ビューポイントから西寺山西ケ洞山山頂からトンガリ山

更に登ること10分、尖峰らしい頂上の匂いがしてきた。9時03分、4等三角点が埋まる山頂に着く。471. 1m。雑木が茂って残念ながら展望は期待できない。北西の切り開きからトンガリ山がその名前どおりの姿を見 せている。 西ケ洞山は南北にピークを持つ双耳峰である。三角点は北峰にある。展望を求めて南峰に移動する。小さな山な のでデジカメで写真を撮りながら移動しても7,8分程度で南峰に着く(9時10分)。 こちらは手前の岩場から抜群の展望が得られる。北には白髪岳、松尾山。北東奥には三嶽を中心とする多紀連山 が幾重にも重なる山々と雲海の彼方に悠然と聳えているのが見える。絶景だ。南峰には中央部に赤い境界杭が埋 まっている。 白いビニール・ヒモと赤いプラ杭が南西に向かって続いている。比較的新しい鉈目の入る踏跡を下っていく。急 な下りを覚悟したがところどころ緩斜面も現れ、気持ちのいい陽だまりハイクといった雰囲気だ。
西ケ洞山南峰からみた篠山盆地方面の雲海快適な小径が南に続く

鉈目を拾って下っているうちに白いビニール・ヒモは見当たらなくなった。が、それに代って木の幹や足元のシ ダに青いペンキを塗った目印が目立つようになる。青ペンキは不来坂の北にある御狩山の登路にもつけられてい たのを思い出す。 南西尾根の先端近くで急激に下るポイントが現れる。ここも展望が開け、立杭の里を包むように紅葉の和田寺山 が横たわっている姿が美しい。 更に青ペンキに導かれて下っていくと、青ペンキを塗った木が左右に分岐するポイントに出る。西ケ奥峠に下り ることを考えれば左だ。強引に鉈で切り開いた直線急下降ルートを下っていく。この先人の切り開きがなかった ら下るのは相当大変だっただろう。 次第に道らしきものが現われ歩きやすくなるが、西ケ奥峠を通る道路が見えてきたところで道が無くなり最後は 草の生い茂る斜面を一気に走り下りて峠に出る(9時34分)。
和田寺山小野原−油井町道峠へピンポイントで下りる。

峠には祠がある。コンクリートで作られた祠で古いものではなさそうだ。『小野原・油井町道』と書かれた標識 が傍に立っている。またどんよりとした雲に覆われて冷たい風が吹いてきた。思いもかけない石山への登山と静 な山歩き。どうやら帰り着くまで雨は大丈夫そうだ。 ゆっくりと油井へ続く町道を下っていく。振り返れば今下ってきた西ケ洞山が堂々と天を突いて聳えている。充 実した山歩きを噛みしめながらロードをデポした住吉神社に戻った。      (本日の走行距離 81km) いつも織田さんと山遊びをされているミセスFさんの寄稿文です
2003年11月2日(日)奥越/荒島岳
 今期中にまだ行ける可能性のある山があれば、できるだけ登っておきたかった。  ということで、今回はツアーを利用させてもらうことにした。ツアーは個人で行くよりも交通費が安い。交通機 関などそこに到達するまでのアプローチが難しいという問題もクリア。私の一番の心配は、団体のリズムに自分が 合わせられるかってこと。最近、全く運動していないので自信はない。という問題を抱えて夫婦で参加した。  荒島岳かあ。出発5日前にツアーの申込をして、それからガイド本を開いた私。標高1,523M。白山が望める。 今の時期はブナの紅葉が美しい。ばっちりじゃん。  1日(土)の夜、バスに乗り込む。まるで気分は夏山、信州行きのときのようにわくわくしている。バスの中で ガイドさんから行程の説明を受ける。今回のコースでは登山口及び途中にも一切トイレはないとのこと。ガイド本、 地図であらかじめ確認したときにそのことには気づいていた。まさかとは思っていたが、やっぱりそーだったんだ。 こいつはのっけから精神的プレッシャーだわ。よって、バスの中ではお茶を飲むのを控えめにした。 北鯖江PAで4時起床。朝食、洗面を済ます。福井ICで降り、途中のコンビニで昼食のお弁当を積み込む作業を ガイドさんがしている間にトイレに行っておく。頭の中は、トイレがとにかく無いというモードに切り替わったま んまの状態だった。  6:00。中出で準備運動をし、なだらかな林道を歩き始める。ちょっと暗い感じだがライトが必要なほどでも ない。そんなに寒くも感じない。30分ほど歩くと休憩だった。衣服の調整をした。ちょっと歩くだけで暑かった。 さらに30分ほど歩いたところで、やっとこれぞ山道という急斜面を登ることになった。ここから1列になる。西 側の斜面を登っているのでなかなか朝日を感じないが、山の上のほうにはもう陽が当たっていた。よく見ると、紅 葉した葉がきらきらと輝いていた。途中、足の踏み場もないような細い崖っぷちを歩いた。こんなに朝早く、しか も睡眠不足のこの身では平衡感覚が全くなく、何度もふらふらと崖のほうへ体が吸い寄せられてしまう。いかん。 いかん。しっかりせねば。たまにぱかっ と開けたところから見えた山は能郷白山だったんだろうか。きれいな山容だった。このあたりからずんずんスピー ドが上がってくる。だんだん列も隙間があいてくるようになった。後ろのグループがだいぶ遅れてきたようだった。 先頭のガイドさんに連絡が入る。もうちょっと進むと平らなところに出るのでそこまで行くとのことだった。が、 ずんずん突き進んでも突き進んでも、一体どこがその平らなところなんだと思うぐらいスピードが増すばかり。さ すがにちょっと休憩したいなあと思うようになってきた。 今日の行程は長い。ガイドさんからも何度も説明があり、がんばって付いて来るように言われていた。10分ほど 休憩したら、すぐ出発だった。どんどん高度を稼いでいく。この辺りのブナ林はもう葉が落ちていて、白い幹だけ を残していた。それにきらきらと朝日が当たってきれいだった。その林間を落ち葉を踏みしめて歩く触感がよかった。 小荒島岳に着いた。目標とする荒島岳が見える。遠い。すごい迫力だった。地図によると、ここから1時間20分 で着くとある。そんな近くには見えない。圧巻だった。先週は荒島岳頂上から冠雪した白山と槍ケ岳が見えたそう だ。それを励みに小荒島を出発する。 9:10シャクナゲ平。時間通りだった。荒島岳へ向かう。いったん下り、また上り、気が付くと激上りの傾斜が 徐々に増してきたようだった。足がだんだん前のグループのペースについていけなくなってきたので、自分のペー スで登ることにする。どうせ、頂上まで一本道だ。これでもか、これでもかというほど激上りが続く。気がふれそ うだった。道がめちゃくちゃ荒れている。ロープ、鎖が出てきた。これがいわゆる鎖ありのところかと思ったが登 りでは使うことはなかった。梯子が出てきた。全身全霊で登った。もう二足歩行が出来なくなっていた。今までか つてこれほどしんどい上りはあっただろうか。北岳の梯子を思い出した。確かにあのときもこれほどしんどい上り はないと思っていた。このことは毎度思っているが、今回は本当に今まで味わったことのない筋肉のフル回転だっ た。これ、いつまで続くんか知らんけど、いつかはぶっ倒れるよ。なんて思いながら。笹の原っぱに出た。頂上は 見えているが、遠い。心地よい風が吹くこの笹の原っぱだけを見ていると、とても気持ちがいい丘って感じなのだ が。この風景、九重に似てるかなあと思いながら。頂上に目を向けると気が遠くなった。下っては上り下っては上 りを繰り返して、やっと前方に掘建て小屋が見えた。頂上だっ!しかし、掘建て小屋?失礼な!荒島大権現の祠で あった。10:10。 頂上では同じツアーで先に着いている人達が写真を撮ったり昼食を摂ったりしていた。私たち二人はぐったりきて いた。写真どころか景色を見る余裕さえも食事を摂る気分にもなれなかった。石の上に座ってぼーっとしていた。 10:40には出発するという。体力が回復するのを待つ時間はなさそうだ。ごはんを食べる気は全く起こらなか った。一口食べるのを想像するだけで、食道の繊毛がさわさわと逆流してきそうだった。魔法瓶に入れてきた湯を 飲んだ。これが一番今のからだに優しい。白湯がこんなにおいしいなんて。かなり体が蝕まれているようだった。 とりあえずウィダーインゼリーを流し込む。時間まで、うつろな目をして過ごした。出発10分前に腰をあげ、写 真を撮り、白山を眺める。気温が高いからか冠雪はない。北アルプスが見える方向に目をやるが、雲で見えない。 明日から天気は下り坂だからだろうか。頂上を後にする。 下り。毎回苦手とする。しかも先ほど登ってきた激上りを今度は下るのだから。気が緩むとずるずると滑っていく。 頼りにならんと分っていながらも、両脇の笹を掴みつつ慎重に降りる。磔の刑になるのは避けられたものの、足を 酷使しているようだった。 シャクナゲ平に着く。ここからは勝原に向かう。ずんずん容赦なく下っていく。足が悲鳴をあげそうだ。どこまで 歩かせるねんっ!12:30。ブナ林のところで休憩。このあたりまで降りてくると紅葉がきれいだった。足がや ばかった。だんだんみんなについていけなくなってきた。遅れを取り始めた。リフト終点に着いた。リフトが動い ていたら、どんなにお金をつんでもいいからリフトに乗りたいと思った。しかし、リフトは動いていなかった。こ こからの眺めはとてもよい。爽やかな風が吹くテラスといった感じだが、足と心肺機能がぼろぼろなので、感情全 くなし。ちょっと休憩時間を取ってくれそうなので、ザックからビニルシートを取り出して、寝転がる。森下洋子 がプリマドンナとして今だに現役なのは、舞台の袖で出番まで寝ていて、体力温存に努めているということをテレ ビで見たので、それにヒントを得て、寝てみた。道行く人がひやかしながら通り過ぎて行ったが、気にしなかった。 ガイドさんが顔を覗き込んで心配していた。13:10ここを出発。列の最後尾から付いていくことにした。ここ からは、冬になるとゲレンデになる。かなり怖いコースだ。勢い余ってコースから飛び出して空に向かってしまい そうだ。上級者向きか?ゲレンデ道はガレていて、かなり歩きにくい。先ほど寝ていたからか体力は少し蘇った。 が、足のほうはこれまでに酷使してきているので、相変わらずぼろぼろだった。足の指が腐ってんじゃないかと思 ぐらいじんじんしてきた。終点が見えてはいるが、気が遠くなるようなジグザグ道をやっと降りて、駐車場に到着。 結局一番ベッタになっていた。疲れていて気が付かなかったが、目の前の山の斜面は一面紅葉していてスケールの 大きさを感じた。 バスが出発し、大野市内へ。車窓より眺めた荒島岳はどっしりとしていて、今あの頂上に本当にいたんだろうかと いう、不思議な心境だった。 今日は夏を思わすような気候だった。暑かった。天気もよかった。 次はどこ登ろうっていつもだったらバスの中で考えるんだけど、疲れ果てていて思考回路が寸断されていた。標高 差1,300Mを1日で一気に上って一気に下りるのは、さすがにしんどかった。今度はもうちょい楽なのにしよ う。ってゆーか、今度はもうちょい鍛えよう。そう心に誓った山行だった。        織田(おりた)さんへのメールはbabrx800@jttk.zaq.ne.jpまで・・・。

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