山を駈ける風になれ2004年 3月号

 
2004年2月8日(日)六甲/有馬〜射場尾根〜最高峰〜東縦走路(2.5万図 宝塚)
厳冬期の裏六甲を走る。9ヶ月ぶりのMTB。『山を駈ける・・』といいながら走りの軽さから最近はロード
ばかり、そのうち「看板に偽りあり」と言われそうだ。しかもこの時季にMTBで走らないといつ走るんだと
いう絶好のお天気、7時32分ゆっくりと出発する。

交通量の多くなったR176を支多田橋で左折、蓬莱峡越えで有馬温泉に向う。スタ−トしてすぐに6kmで
400m上るこの道はなかなか辛い。盤滝出合までは無理をせずに淡々と上り、白水峡あたりからペースを上
げて、わんだガーデンを横目に一気に下って有馬の太古橋に着く(8時17分)。(今は「太閤橋」という名
前に変っている)
有馬温泉(太閤橋)泉源公園

観光客の姿はまばらだ。総合案内所の手前を左折、細い路地の急坂を登る。ロードだとかなりきつい傾斜もM TBだとシッティングのままで軽々と上っていける。くねくね現れる路地を適当に曲がりながら上っているう ち「大坂道」を東に走っている様子(道標には「右 六かう山 すぐ京大坂」と刻まれている)。「すぐ」と は真っ直ぐとのこと。どこかわかるところまで出てみようと橋を渡れば瑞宝寺川だったようで宝泉寺の前に出 てしまった。 温泉で迷路遊びをしている場合ではない。登山道は愛宕山のすぐ北だ。幸い愛宕山公園が旅館越しに見えたの で軌道修正、細い路地を西へ走っていると、「この先急坂45%、泉源公園」と書かれた場所が・・・。どうみて も20%そこそこだが、とりあえずせっかくだから泉源公園に立ち寄る。 白濁した水の底からボコボコと泡が吹き上がっている。どれくらい熱いのかとグローブを脱いで手を突っ込むと 「何や、中途半端に冷たいやんか」 ボコボコ吹き上げているのは底にそういう仕掛けがしてあるみたいだ。外気温は氷点下3℃。本当に熱けりゃ 湯気がもうもうと上がってるわな、と一人納得して公園を出、45%という坂を上り、車道出合を「花の坊」 を左に、「簡保センター」を右に見ながら走ると今度はロープウエイ分岐に出てしまった。 残念ながら手持ちの地形図ではよくわからない。近くにあった有馬温泉案内図をチェック、少し戻って山側に 「太陽と緑の道」、「魚屋道から六甲山頂」という標識を見つける。・・・ふう、何とかこれで本来の目的に取り 掛かることができる(8時45分)。
虫地獄静かな魚屋道の登り

登り口に「虫地獄」「鳥地獄」がある。昔はここから硫黄や炭酸が噴出していたのだろうか。今は枯れてもう 何十年にもなろうかという侘しい佇まいである。 登り始めは射場山の北西麓をジグザグに登っていく。射場山尾根を六甲最高峰の肩越しに登るこの道は「魚屋 (ととや)道」と呼ばれる江戸初期から開かれた道で、灘から海産物を有馬の湯治客に運んだ道でもある。 そのせいかどうか知らないが、しっかりした幅のある走り易い道で乗車率も高く、久しぶりのMTBには優し い道と言える。 ジグザグの登り道を終えると、谷を挟んで灰形山、752山などが見え始める。平坦路をスピードを上げて走 れば、西から回り込んで芦有(道路)が見える地点に(9時10分)。射場山を東から捲く道が合流してくる。 『南無妙法蓮華経』の文字が彫られた石碑が立っている。 射場山へはこの石碑の裏をササヤブ通しに適当に登る。すぐに植林に覆われた薄暗い山頂に着く(690m) (9時16分)。山頂には無線をする人が付けた登頂標があるだけの静かな山だ。5分ほどいたが、じっとし ていると寒いので元来たルートを戻ることにする。適当に登ってきたので完璧に同じルートを戻るのは無理、 結局東を捲く道に下り200mほど辿って石碑の横に戻りつく(9時28分)。
射場山山頂射場山分岐

展望台から射場山吉高神社

再び魚屋道を走る。どこまでも幅のある走り易い道が続く。まだまだと思っているうちに吉高神社分岐に着い た(10時00分)。ふと見上げると六甲最高峰の無線中継塔が間近に見える。 「え、もう山頂まで来たの?」雪が張り付いた石畳の道を登りきると道を挟んで一軒茶屋、そのまま雪が張り 付いた道を滑らないように登って1等三角点の立つ六甲最高峰に立つ(10時06分)。日差しがあって寒く はないが、さすがに山頂は強風が吹き荒れている。
六甲山頂

有馬温泉街で買ったスポーツドリンクを飲もうとすると「無い」・・・射場山の山頂に置き忘れてきたようだ。 ふだんなら忘れることなどあり得ない水だが、これだけ寒いと体が水分を要求しないようだ。 口に頬張ったチョコのベトッとした感触を残したまま下山にかかる(10時20分)。舗装路を走って帰った のではMTBで登ってきた意味がない。カーブNo.113のポイントから東六甲縦走路に入る(10時25分)。
東六甲縦走路を走る大平山山頂直下

クマザサの細い山道をジェットコースターよろしく爆走する。水無山を越え、激坂を下れば船坂峠、更に走り 易くなった道を時々ハイカーに道を譲りながら快調に飛ばす。40分ほどで大平山無線中継塔の下に出ると、 少し舗装路を走って、大谷乗越へ(11時15分)。 また山道に入る。ここからはもうどうにも止まらないハイスピード・シングルトラック、いきなり1km連続 乗車のジェットコースター走り。ハイカーの一団の通過を待って今度は連続1.6kmの爆走、道幅が広いの でサイドに除けながらハイカーを牛蒡抜き、下りの反動で譲葉山、岩倉山を通過、気がつけば砂山権現も通り 過ぎて、塩尾寺への最後の下りだ。 途中、オーバー・スピードでコースアウトも1回あったがご愛嬌、約14kmの山道を走り終えて塩尾寺に着 く(11時40分)。 9ヶ月分のブランクを一気に走ったかのような山走り。今日のコースは道も判りやすいし、難易度的にも初心 者コースといっていいほど。今日のような厳冬期ならハイカーも少ない。体力さえあれば走れる満足のオフロ ード・コースです。   (本日の走行距離 31km) 2004年2月15日(日)篠山/二両池〜高王山(2.5万図 宮田) 高王山は旧西紀町栗柄上の北にある543mの山である。以前から登ろうと考えながらまだ果たせていない山の 一つだ。 午前6時52分、西寄りの強風が吹く中をロードで出発する。春一番が吹いた昨日は暖かかったが、寒冷前線の 通過と共に再び空気が入れ替って冬に逆戻り。とはいえさほど寒くはない。むしろ向い風の強さと、水曜日にギ アを1枚重くして100kmばかりLSD(といっても麻薬ではない)をやったことが災いしたか赤坂峠を近年 記憶が無いほどのスローペースで通過、北六甲台の下りも向い風に押し返されてのろのろペースで下っていく。 それでも藍本を過ぎたあたりから追風基調に変わり、徐々にスピード・アップ。道路脇の気温表示1℃に驚きな がらもいいペースで古市を通過、更にペースアップして県道三和線に入り、30km/h超のスピードをキープ したまま福徳貴寺の坂を上ると快走のまま栗柄峠に到着する(9時09分)。 水分補給をして少し休む。ここから高王山は見えない。取り付きを栗柄上にある二両池に求める。二両池から北 に伸びる破線路の鞍部から高王山に登ろうという作戦だ。二両池着9時20分。去年3月に改修工事を終えた溜 池はきれいに整備されている。
二両池から高王山

改修碑から池越しに高王山が堂々とした山容を見せている。改修碑の横に観音様が祀られている。支度を整えて 観音像の横に立てかけてある木の枝を杖代わりに使わせてもらうことにして出発する。若干重たいがしっかりと したストックだ。 池の東側に遊歩道のようないい道が付けられている。これで間違いなしと安心したのがまずかった。すぐに現れ た分岐を歩きやすそうな左に取る。更に分岐に突き当たったところで地形図を広げてみると最初の分岐を右に行 かなければならなかったことを知る。今更戻る気も無いのでそのまま雑木ヤブの激斜面を登り始める。 地形図で見てもわかるように頂上直登の谷筋は凄い急斜面である。山頂の少し東肩を目指して一歩一歩登る。バ ランスを崩せば後ろに引き戻されそうだ。ようやく登り着いたところは山頂から200mほど東の地点、東の鞍 部からの踏跡を期待したが無い。それでもヤブの密生度はそれほど高くもないことから適当に登って山頂に立つ (9時58分)。
山頂直登の激登り高王山山頂(3等三角点)

頂上直下の北側斜面をシカが2頭東へ駆けて行く。山頂には3等三角点が埋まっている。三角点は南向きだ。測 量ポールに登頂プレートが取り付けてある。展望は無い。樹幹越しに北面にかなり積雪が残る三嶽が見える。 雲が出てきたと思ったら雪が舞ってきた。どうりで寒い筈だ。山頂での滞在もそこそこに南尾根を下ることにす る。東尾根よりはましだが踏跡といえるほどのルートのないヤブ山だ。頂上から5分ほど下ったところで尾根は 南西に振る。
静かな南尾根

更に5分ほど下ったところで地形図の平坦尾根に出る。実際は平坦ではなく少し登り返している。すぐに南東に 方向転換する。時折り樹幹越しに高王山と東の505mが見える。 Ca320mコブを2つ越えると今度は北東へ曲がる。黄色いプラ杭が見える尾根を北東に進み、急斜面を下る と植林帯の間から二両池の水面が光って見える。 一気に植林帯を駆け下って池の周囲の遊歩道に出る(10時40分)。対岸にデポしたロードが見える。舗装路 を歩かずに周回してきた恰好だ。観音様の横にストックを返すと霙に変わった栗柄峠を後に帰路に着いた。 (本日の走行距離113km) 2004年2月21日(土)北摂/牛の子山〜三草山山麓(2.5万図 木津、妙見山) 先週までの寒さとはうって変わりここ2日ほど春の陽気が続いている。今日も穏やかな暖かい1日になるとの予 報に里山の陽だまりランをしようとMTBを引っ張り出す。今日は能勢−猪名川町界の中山峠の南東にある牛の 子山(450.8m)に登り、三草山(564.1m)の東肩を巻いて林道を阿古谷へ走ろうというオフロード 満載コースである。 午前6時32分スタート、すっかりロードに馴染んでしまった体にはMTBの転がり抵抗は重たい。スピード感 の無いまま我慢の舗装路走りを続け、笹尾のコンビニで軽食を調達、杉生に着く(7時57分)。かなり遅いと 思ったがそうでもなさそうだ。 水分補給をしてから県道を中山峠方面に向う。舗装路ばかりではMTBで来た意味が無いので猪名川変電所前で 右に下る林道を走って中山峠南の牛の子山に向う破線路分岐に向うことにする。トラロープを跨いで林道を東に 走る。先々週の六甲のような歩きこまれた山道と違い最近人が歩いた事がない北摂ならではの感触がタイヤを通 して体に伝わってくる。 前方で群れていたトビがいっせいに舞い上がった。そこに横たわっていたのは大きなシカの死骸。死んでからま だ間がないようだ。久しぶりにトビが猛禽類であることを認識する。高圧線を潜ったところで林道は突然背丈を 超すササヤブに変わる。右手に「火の用心(No3)」の関電巡視路が下っているが、進路は直進だ。 背丈を超すササヤブに強引に突っ込んだが、MTBがひっかかり跳ね返される。ササヤブを踏み固めて通りやす くしながらまずは突破、今度はツルとイバラのヤブだ。完全に廃道になった道は獣道よりやっかいだ。 谷筋を流れる川を右に左に時には川床を歩きながら川の北側にどうにか乗れそうなササヤブのシングルトラック を見つけMTBに跨る。足元が見えないのはやっかいだ。道が崩れていたようで川の方へコケる。 苦難のヤブ漕ぎは続く。林道跡と思われる道はやがてササが深くなってまたもや動けなくなる。仕方なく再び川 を渡り返して崩れたヤブの斜面をMTBを投げ上げながらどうにか林道に出る。(8時43分)。ここまで1. 2kmを40分もかかってしまった。
林道のはずがいきなりヤブ下の川を渡って強引に林道に登りました

牛ノ子山方面への山道分岐気持ちのいいSTが続く

一息ついて林道を走り出す。やがて南から舗装路の林道と合流、中山峠の南300mの急カーブ・ポイントを直 進、南東の林道を走っていく。谷沿いの少しガレた道で走りにくいところもあるが、やがて厚い落葉の絨毯に覆 われた雑木林の中の気持ちのいい走りに変わり、登り着いたところが牛の子山南の破線路鞍部(9時10分)。 5差路になっている。東は展望が開けており三草山北麓の山並が広がっている。北に道をとれば牛の子山、青ペ ンキと白テープに導かれるままに山頂に着く(9時17分)。
牛ノ子山南鞍部の峠牛ノ子山山頂(4等三角点)展望なし

雑木に囲まれて展望はない。中央に4等三角点が埋まっている。小さな登頂標が2枚架かっている。雑木林に差 し込む陽光を背に受けながら軽食タイムを摂って元の鞍部に戻る(9時30分)。 鞍部を東へ一気に下る。西の溜池を南に走り、地形図に無い林道を下る。『左 金井道場跡従是二丁』の道標を 右手に見ながら左へカーブし長谷地区へ下る。久しぶりに林道を35km/hで走った。飛ぶような感覚が気持 ちいい。
能勢長谷地区へ下る林道の途中で能勢の棚田

長谷地区は三草山の北に広がる見事な棚田で有名な地区である。しばらく能勢を代表する景観を眺めながらゆっ くりと神山地区へ移動する。今度は三草山と点名上杉(418.7m)の間を上阿古谷へ走るためだ。 『曹洞宗放光山慈眼寺』の東から南へ林道を上る。地形図に無い簡易舗装路や地道の林道が交錯している。『お おさか環状自然歩道』と書かれた道を、お椀を伏せたような三草山を右手に見ながら進んでいくと右に『三草山、 清山寺跡』方面の標識が現れる(10時16分)。
三草山分岐上杉地区へ下る峠

三草山への道を見送って直進、2分ほどで峠に着くと植林帯のシングルトラックを走り下る。このまま下ると上 杉に下ってしまうのですぐに右へ分岐する林道に入る。刈り払われたササの林道を走るとやがてシングルトラッ クに変り、いつの間にか『ゼフィルスの森』に入っている。
三草山の南麓、ゼフィルスの森

てっきり東西に走る2本の地形図の実線路のうちの北側の道を走っていると思っていたのだが、兵庫県と大阪府 の境界尾根を走っていたらしい。 ゼフィルスとはミドリシジミの事。この三草山周辺はミドリシジミの食草であるナラガシワ類の木が多いことで 珍しいヒロオビミドリシジミ、ウラジロミドリシジミなどが棲息している。大阪府が里山保全を含めて保護に乗 り出しているのがこの『ゼフィルスの森』である。ということは今走っているシングルトラックは大阪府内とい うことになる。 それにしても手入れが行き届いた雑木林の林床を快走するのは何とも楽しい。思いもかけない快適山道走りで連 続乗車でガンガン走れる。左手下に林道が見えてきたと思ったら林道終点に合流する(10時44分)。 林道終点付近では数人の人達が作業をしている。里山の手入れだろうか。現在位置を確認して林道を駆け下る。 この道が最初走っていたと思っていた林道のようだ。40km/h近い速度で上阿古谷の集落に到着する(10 時59分)。 暑い。『ふれあいバス 上阿古谷西』バス停のベンチに腰掛けて着替える。20℃近くまで気温が上がっている うだ。朝の冬仕様からすっかり春仕様に衣替え、14日に亡くなった『イル・ピラータ』ことマルコ・パンター ニ(=98年ダブル・ツールを達成したイタリアを代表する自転車レーサー)の追悼をこめてバンダナを頭に巻 くと、向い風をついて再び出発した。 (本日の走行距離 70km)        織田(おりた)さんへのメールはbabrx800@jttk.zaq.ne.jpまで・・・。

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