山を駈ける風になれ2004年 4月号

 
2004年3月7日(日)北摂/黒岩〜布見竜王山(2.5万図 武田尾)
宝塚北部、千刈貯水池の東、布見ケ岳と天狗松の間にわだかまる山々を走る。境野の保与谷池から黒岩一帯に
かけて保与谷公園としてハイキング道が整備されたことは去年2月12日発行の『宝塚てくてく』でチェック
していたが、最近歩かれた『山喜多さん』のレポートでは黒岩東尾根も歩けるようだ。MTBを引っ張り出し
て走り出す(6時58分)。
積雪の木津峠

真冬に戻ったかのような寒さだ。おまけに風も強い。川西能勢口回りで県道を北上する。紫合あたりから吹雪 になるが徐々に降雪も収まり木津で県道を離れ、木津峠越えで上佐曽利に入る(8時20分)。気温−3℃。 自販機で温かい缶紅茶を飲み干し一路南下、境野で西に折れ保与谷公園に着く(8時44分)。保与谷池の東 岸に真新しい柵が施され、綺麗なハイキング道が続いている。池の南岸に立つと、これから登る黒岩と布見竜 王山が見える。
保与谷池から黒岩、布見竜王山を臨む 快適なシングルトラック

ふと気が付くと雪の上に先行者のMTBタイヤ痕がある。昨日の降雪後のものか、それとも今日付けられたも のか、こんな物好きなコースを走るバイカーがいるなんて、一体誰だろう、知っている人かも知れない、など と考えながら池を過ぎ、地形図の破線を突き当たりまで進む。「中央尾根−東尾根分岐」の標識がある (8時57分)。 ここは左折。中央尾根から黒岩を目指す。もともとあった山道を整備したのだろうか、傾斜もきつくなく登り だというのにほとんど全線乗車の涙が出るほど嬉しいコースだ。 ちょっと「押し」上げて中央尾根に乗る。南の312m山の方にも踏跡が続いているが、ちょっと乗車し辛そ うな道だ。
クジラの背(馬の背)これぞMTBの醍醐味(クジラの背にて)

中央尾根を北に進むと「馬の背」と呼ばれる黒っぽい巨大な一枚岩の上に出る。別名「クジラの背」。まさに メルヴィルの『白鯨』を彷彿とさせる光景で、まるでナガスクジラの背に乗っかったかのようである。 ここは一番、登りではあるが、MTBに跨って「クジラの背」の上を走る。胸のすくような快感にスリルも加 わり、これぞ“MTBの醍醐味”を味わう。 一旦登りきってからまた中ほどまで戻り、軽食タイムとする。全般に展望はよいが、特に南東方面、古宝山か ら大峰山方面の眺めは最高だ。
岩が累々とした黒岩山頂直下黒岩山頂

心ゆくまで景色を堪能して黒岩山頂に向う。3分ほどで宝塚市の3級基準点が埋まる黒岩山頂(351.2m) に着く(9時23分)。山頂手前は黒っぽい岩が累々とした岩尾根だが、簡単に登れるので難渋する箇所はない。 すぐ北にある布見竜王山にも訪れることにする。東へ折れ、東尾根と合流するところで北に曲がる。「コース外 」の標識が架かっている。が、コースからはずれても乗車可能な踏跡が続く。布見竜王山はピストンなので手前 のCa340コブにMTBをデポして登る。短い急登をこなせば布見竜王山の山頂に出る (9時33分、367.8m)。
布見竜王山山頂の祠

山頂にはビニールの波板で作られた屋根の下に祠が祀られている。波豆側から参道がのびてきている。灯篭には 「八大竜王」の文字が彫られている。灯篭の作られた年号は文化13年だ。
東尾根もガンガン乗れる保与谷池が眼下に(池との標高差は30mくらい)

もとに戻ってMTBに跨り東尾根を南下する。右へ下っていくハイキング道を見送り踏跡を直進する。先行者の タイヤ痕も同じように続いている。赤土のザレ場をカッ飛び、快調に飛ばすと保与谷池を右下に見ながら公園入 口横に出た(10時04分)。乗車率80%、バイカーには嬉しいコースです。          (本日の走行距離 67km) 2004年3月13日(土)篠山/多紀連山半周回(2.5万図 宮田、村雲) 横浜在住のロード仲間のK氏が帰阪、篠山で昼飯を食べようということでいつもと同じ時間に出発、早めに篠山 に入り、篠山盆地を東へ多紀連山をぐるっと回って藤坂峠―大タワとつないで待ち合わせの時間に合わせて篠山 市街地へ戻りました。 読者の方もよくご存知のルートかとは思いますが、絶好のサイクリング日和、今日は趣向を変えて行程を写真で 紹介することにしましょう。
旧篠山町役場、大正ロマン館。
篠山市内ツーリングはいつもここが起点です
雲部車塚古墳。丹波地方最大の前方後円墳です
鬼坂峠。本庄と垂水をショートカットする道です
鬼坂峠の石仏。ほとんど磨耗して読めません
R173、藤坂分岐。直進すると今話題の丹波町へ行けます
大タワへの激上りが始まる。
朝から蓬莱峡〜有馬越えをやってきた身には辛いものが ある
もうすぐ峠(大タワ)です
大タワ到着。北から強風が吹いてきます。
O2の森の看板を風除けにして休憩です。
波賀野。道標には「右 京い勢、左 な礼xx」(<−読めない) とあります。
京 都、伊勢はわかるのですが、左はいったいどこへいくのでしょう? 

(本日の走行距離144km) 2004年3月20日(土)北摂/友松寺〜田中行者山(2.5万図 木津) 三田市東部、羽束川の西側には無名ながら魅力的な低山が多く眠っているが、今日はまだ訪れたことのない田中 行者山(480m)を南東麓の友松寺から登ることにする。勿論地形図上では無名、山名は兵庫の山の大先達、 多田繁次氏の著作に寄ったものである。 昨日とはうって変ってどんよりとした空模様、6時36分ロードで出発する。無風にも恵まれまずまずのスピー ドを維持、杉生−杉生新田−西峠−後川上と走り継ぎ、8時40分酒井の公民館前に着く。 友松寺は少し戻って集落の中の細い道を山側に上って行けばよいのだが、これが意外と難しく個人のお宅の玄関 先へ上りつくこと3度、4度目にしてようやく迷路を突破して友松寺山門前に辿り着く(8時55分)。
趣のある友松寺山門
質素な山門はいかにも禅宗(曹洞宗)らしい趣のある佇まい、山門前をサクラの木々が覆い、満開の頃はさぞや と思わせるものがある。別に駐車場への車道は付いているが小さな山門をくぐり苔むした石段を上っていくと女 性の先行者が二人、両手に花と水桶を下げている。そうか、今日はお彼岸か、と思いつつ自転車を担いで挨拶を し、境内に上がると住職が檀家の人たちと話をしている。 住職を掴まえ裏山に登る山道を訪ねるとお寺の裏手の墓地から谷沿いに道がついているという。山頂にある行者 像の事を訪ねると、今教えて頂いた山道を登って尾根に出るとすぐとの事、本堂の横に自転車を停めさせてもら い、墓地の横から山道を歩き始める(9時05分)。 植林帯の広い谷筋にははっきりとした山道が続いている。このまま山頂まで導いてくれれば簡単だなと思ってい ると次第に道は無くなり、倒木で埋め尽くされた谷沿いの道を進む事もままならず、左手斜面をトラバース気味 に歩き、続く伐採ポイントで刈り払われた幹や枝と格闘しながら登り、いよいよ谷も源頭近くなれば四つん這い にならないと登れないような激斜面に変るのは毎度おなじみの谷筋歩き、住職の言うように確かに登れるはする が、いささか強烈な登りで9時29分、やっとの思いで尾根に出る。 尾根筋はいい道がついている。雑木に覆われ視界はよくないが、周りの雰囲気からほとんど山頂近くまで登りき ってしまった感じ。それが証拠に西に向って1分と経たないうちにNHKのアンテナの立つCa460ポイント に飛び出した。
Ca460コブにあるNHKのアンテナ
この行者山は東西に小さな3つのピークを持っている。その一番東のピークである。展望はないが、一番切り開 かれているのはここだろうと考え、アンテナの根元に座って軽食休憩を摂る。サンドイッチを頬張り、10分ほ ど休憩した後、次のピークに向う。 2〜3分で2つ目のピークに着く(Ca470m)。人手を加えて平坦にしたのであろう山頂部の中央、アカマ ツの根元に役行者の石像がある。この山の名前の由来になっている行者像である。高さは50センチくらい、と なりに同じくらいの高さの石がある。石室の名残であろうか。落葉に覆い尽くされてはいるが、瓦が散乱してい る。昔は瓦で雨風をしのぐ祠があったのかも知れない。いやそれ以上に戦国時代の砦の跡のような地形である。 役行者像の方は風化による傷みも少なく、錫杖を持つ手も、鉄駄もはっきりと見える。今は酔狂な低山徘徊者し か訪れることのないような山であるが、昔の里人の信仰心の厚さに心打たれるとともにそんな日本人の心はどこ へいってしまったのだろうかと思う。
行者像田中行者山山頂
この2番目のピークを過ぎまた2〜3分で3つ目、一番西の端のピークに着く。標高480m、ここが3つの小 ピークを持つこの山の最高点である。中央部に苔むした岩が小さく頭を出している。ここも展望はない。雑木越 しに見比峠から小野へ下る道路が見える。登頂標などの類は一切ない気持ちのいい山頂である。 当初の予定ではここから更に南西へ畦倉池まで縦走するつもりであったが、山を西へ進むほどにチェーンソーの 音が大きくなってきた。どうやら今日はこの先で大掛りな伐採作業をやっているようだ。 チェーンソーの音を聞きながらでは静かな山歩きもままならない。一旦東のピークまで戻って、鞍部を越え麓の 道路からでも見えるアンテナの立つCa380山を越えて下山することに変更する。 村の赤い境界杭に加え、NHKの白いポールが埋められた山道は広く歩き易い。いっきに下って少し登り返せば Ca380山(10時03分)。『NHK三田羽束川テレビ中継所』と書かれたアンテナが立っている。アンテ ナの東に回れば正面、雑木越しに名峰大船山がその尖峰を悠然と突き上げている。
アンテナ山から下山路を行く(正面は大船山)
落葉スキーを楽しめるほどの急斜面を滑り降りると道路に出た(10時15分)。昔の村の道で、10mほど南 で新しい道と合流するポイントだ。11年前初めてこのエリアを走った時にはまだこの新道が完成していなくて 旧道を走った記憶がある。 クツの中に入った落ち葉や小枝を払ってゆっくりと友松寺に戻る(10時30分)。友松寺の鐘楼の前に設けら れたベンチに腰掛けて一列に並んだ石碑を眺める。宝暦4年の銘が入った大峰山供養塔や明治13年酒井村26 人が奉納した石碑、一番古いものは宝永年間と読めるが殆ど判別できないものなど興味を引くものが多い。 あと2週間もしたら満開のサクラ越しに新緑の衣を纏った大船山を眺めることができるのだろうか。そんなこと を考えながら羽束路をあとにした。          (本日の走行距離 91km) 2004年3月27日(土)北摂/三国ヶ嶽南西尾根縦走(2.5万図 福住・木津・藍本) 三田市の最高峰、三国ヶ嶽をMTBで縦走する。94年4月に一度登っているが、永沢寺側から山頂ピストンを したのみ。今日は以前から一度走りたいと考えていた山頂から南西に伸びるほぼ平坦な尾根を訪れるつもりであ る。走れるのか、ヤブっているのかは行ってのお楽しみ。 ウグイスの美声に起こされて6時15分出発する。若干足に疲れが残っており転がり抵抗の大きいMTBは辛い。 ここ数日の暖かさで宝塚市内でもサクラが7−8分の咲きを見せている。 川西能勢口回りで県道を北上、笹尾のコンビニで食料を調達、杉生で水分補給(7時40分)し、杉生新田まで 来るとまだウメが満開だ。サザンカがまだ咲いているかと思えば日当たりのよいところではコバノミツバツツジ が咲いていたりと、この時季北摂は賑やかである。 西峠を一気に下って後川上へ(8時14分)。再び水分補給を摂って後川奥から永沢寺に抜ける林道を走り、永 沢寺を右手に見ながら乙原へ向うバス道を上る。 三国ヶ嶽への登路は峠の最高部を左手に入ったらいいのだが、峠の一つ手前のカーブのところにも山道に入れそ うなポイントを見つけ(8時53分)強引にMTBを担いで登ると植林帯の中に山道が付いている。いきなり乗 車可能な道の出現に喜びながら進むと左手から三田・篠山境界の山道が合流、ササの深い小さなコブを越えると 峠からの山道に合流する。
峠の一つ手前のカーブから山道に入る地形図の破線の道を行く
ここからは10年前に訪れたことのある道、地形図の破線路だ。この10年間で随分人が訪れるようになったと みえ、テープやペンキがうるさいほどに付けられていて、もともと迷うような道ではないのに何でこんなに印を 付けるかなあと思ってしまう。 おかげで境界尾根を一気に頂上へ登る分岐を見過ごし、破線路どおりに一旦南東に振って広い尾根に出、北東に 方向転換して山頂に着く(9時20分)。
随分賑やかになった三国ヶ嶽山頂
697.7m、山頂も随分と賑やかになった。『三田市最高峰』のプレートやいろんな山の会の登頂標が架けら れている。以前は角の欠けた三角点の横にはげた紅白の測量ポールが倒れていただけの頂上だったのだが・・・。 変らないのは展望がないことくらいか。 そんなことを思いながら10分ほど軽食休憩を摂り、食後の運動?に天狗岩を訪ねてみることにする。天狗岩は 山頂の東約300mの地点にある。地形図では標高650mのところに岩マークが付いているところだ。
天狗岩から多紀連山の眺め天狗岩から三国ヶ嶽
天狗岩から662山天狗岩から南の展望(大船山、羽束山が見える)
天狗岩方面へも赤テープが付けられている。南へ走るのでMTBは山頂にデポして東へ急坂を下る。天狗岩へは 5−6分の距離である。天狗岩は岩肌に低木が茂っており、山頂方向からでは絵になる写真が撮れない。 しかし岩の上からの眺望は抜群、後川の高嶽(574m)から西に続く尾根の向こうに堂々たる多紀連山の姿が 臨める。南には大船山をはじめとする羽束川流域の山々が広がって見え、何ともいえない長閑な風景を臨むこと ができる。天狗岩とすぐ西側に大きく壁のように立ちはだかる三国ヶ嶽の間を抜ける風に流されるように1羽の 鳥が飛び去って行く。 また、5−6分ほどかけて三国ヶ嶽山頂に戻る(9時50分)。ようやく晴間が広がり気温が上がってきた。南 へ続く踏跡をMTBで駆け下る。いきなり200mほど連続乗車できる“いい径”である。 地形なりに下ってしまうと南の662山には行かない。磁石で方向を確認して少し東へ振り、モミの大木のある ところを南に下って大きなヌタ場のある鞍部に出る(10時04分)。この辺が道が判然としないところだ。 と思っていると「頂上まで150m」の標識が整備された尾根道に出た。何だもっと東に振れば明確な道が付い ていたのか。
頂上南を下ったところにあるモミの大木三国ヶ嶽と662山の鞍部
(写真右奥に大きなヌタ場がある)
662山へも乗車可能な小径が続いている。快適にペダルを回していると662山を通り過ぎ下りにかかってい くではないか。期待はしていたが、ここまで乗車率が高いと嬉しくなってしまう。小さなアップダウンを繰り返 しながらも“いい径”は続く。途中で東へ下っていく関電の巡視路を見送りNo20の鉄塔が立つCa630m コブに(10時28分)。暑くなってきたのでウインドブレーカーを脱ぎ半袖になる。
662山から南へ続く快走路No20鉄塔(Ca630m)
ここで進路を西に取る。巡視路を行くことにする。南西尾根へも踏跡程度の道は付いているが乗車となると断然 巡視路だ。南西尾根だと多分差桐峠まで押しながら下っていくことになりそうだ。巡視路方向はいきなり400 m連続乗車のシングルトラック、最後はちょっと急斜面過ぎてMTBもろとも滑り落ちるオマケ付き。 鞍部に下りついて上り返したところがNo21鉄塔の立つCa590山(10時46分)。ここは西に峰ケ畠の 全貌が臨める絶好のビューポイント。南西の千丈寺山越しに三田から吉川方面の住宅地が広がっているのが見える。
No21鉄塔切り開きから峰ケ畠を臨む千丈寺山もよく見えます
No21鉄塔は伐採尾根を少し下ったところ。高度感を楽しみながら鉄塔の足元をくぐりNo22鉄塔への巡視 路に入る。ここも連続200m乗車の快走路、やがて小刻みなジグザグ道に変り、「押し」が多くなってNo2 2鉄塔が立つ枝尾根に出る(10時58分)。北から黒川谷を吹きぬける風が冷たい。 高圧線はこの先峰ケ畠斜面を這い上がっている。巡視路はバス道目掛けてガレた谷を下って行く。落ち葉の絨毯 の下に苔むしたガレ、という道はマウンテンバイカー泣かせだ。時折りバス道を走る車のエンジン音から道の位 置を判断しながら下っていく。 と、突然目の位置よりも高いところを一台の車が通り過ぎていった。谷川よりもかなり高いところを道は走って いたのだ。水量の多い谷川を渡り、MTBを担いでバス道に出る(11時15分)。 道の真ん中近くに座ってクツの中に入った葉っぱは小枝を払う。こんな時にバスが来たらクツを持って逃げなき ゃいけないななどと考えていると本当にバスが来た。1日に数本しかないバスに出会うなんて何て確率だ。 なかなか充実の山走りだった。今下ってきた山を仰ぎ、水分をたっぷりと補給した後、すっかり暖かくなった道 を乙原へと向けてかっ飛ばした。          (本日の走行距離 104km)        織田(おりた)さんへのメールはbabrx800@jttk.zaq.ne.jpまで・・・。

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