山を駈ける風になれ2005年 6月号

 
2005年5月3日(火)淡河・吉川/貝吹山+武士山(2.5万図 有馬、三田、藍本) 
淡河から吉川にかけて広がる丘陵地帯を南北に縦断する企画。北神戸の帝釈山系と旧今田町の虚空蔵山、和田寺
山等篠山南西部の山々との間に広がる丘陵地帯はこれまでほとんど走ったことがない。
それは吉川には登山の対象になる山がないからである。その上この丘陵地帯、ゴルフ場ばかりで楽しくはない。
しかしながら、コースのとりようで昔ながらの淡河、吉川の風景を楽しめる筈。おおまかな計画を立てて5時4
0分出発する。
勿論今日はロードである。3日前とは違い今朝は少し冷え込んでいる。気温9℃の赤坂峠を半袖ジャージ1枚で
上るのは少し寒い。体が温まらぬまま天上橋まで下り左折、吉尾で再び左折して深谷の峠を越え、好徳小前に着
く(6時32分)。

まずはここから北西約3kmのところにある貝吹山(300m)を目指す。貝吹山とその周辺一帯は標高300
mの等高線が閉じている吉川町の最高地点である(正確には貝吹山は神戸市北区淡河長大字神影村字西ノ岡)。
短いが急なアップダウンをこなすと石峯寺(しゃくぶじ)に着く(6時43分)。651年(白雉2年)法道仙
人開基と言われる古刹で、孝徳天皇の勅願寺として栄え、中世には1里四方の寺領に持ち多くの僧や学侶を養っ
ていたという由緒あるお寺である。
寺号は岩嶺山。北西にある貝吹山を含めこの寺を3方から囲むように迫る山域一帯を岩嶺山と呼んでいたことに
由来するものらしい。
石峯寺本堂吉川町最高点から貝吹山

さて、直接貝吹山に登ったのでは面白みに欠けるので、国の重文である三重の塔の東の尾根裾に取り付を求めれ ば上手い具合に木の根を利用した自然の階段があり、山道が奥まで続いている。288mコブを越え、これはい いぞとばかりに歩いていると突然目の前が開け、ゴルフ場に飛び出してしまった(7時00分)。 7番グリーンを挟んで向いがCa300m山の一部のようである。私の手持ちの地形図ではここまでゴルフ場が 拡張されていない時のものなので(何しろ山陽自動車道も無い)、面喰いつつもそんな事もあるかな、という感 じ。とりあえずCa300m山に登って、吉川町最高点到達ということにする。 貝吹山はなだらかに広がるグリーンの南西方向にそこだけが島のように浮かんで見える。当初計画していた尾根 通しの歩きは断念、元来た道を戻って石峯寺境内に降り、寺の裏の溜池から南に水路に沿って回りこみ、地形を 判断して登るともう一段上にも同じような水路がある。水路に沿って更に西へ回り込むと頂上へ向う参道に合流 する。
貝吹山山頂直下の祠

参道を辿って山頂へ。山頂直下には祠がある。石碑に『文政9年(1826) 石上町 源左エ門』と施主の名が刻まれてい る。祠の右から更に登ると給水施設のような建物が建っている。300.07mの三角点は発見できず(7時43分)。 貝吹山で随分時間をとってしまった。とはいえまだ午前8時前、時間に十分余裕はある。さて、吉川町縦走に戻 ることとしよう。 好徳小前まで戻り、県道を東に走る。弓ノ木交差点を左折、淡河町神田から豊岡に抜ける。短い直線路ながらM AX62km/hが出る坂を一気に下ると市野瀬へ(8時25分)。金会東で再び北へ。 こんどは標高差90mの上りだ。丘陵地帯が広がる吉川町は長い上り下りはないが、ほとんど平坦地がなく、小 刻みにアップダウンが連続する。石畳の激坂は無いものの景色もいいし、のどかだし、プロ・ツアーのフランド ル1周のようなコースだ。よし、吉川町を“兵庫のフランドル”と呼ぶことにしよう(と言ってたらロードレー サーに跨った兄ちゃんが颯爽と坂道を上って行った)。 ようやくの思いで吉川JCT下まで上り、今度は暫く下り一本とカッ飛んでいたら、右前方から大型トレーラー が道いっぱいを使って左折、下りついたボトムで曲がり終わるのを待って、だらだらと上りはじめる。 再び下って畑枝で右折、またもや上りに転じる。左右にゴルフ場を見ながら徐々に標高を上げていく。次に向う のは吉川町北部の最高地点、武士山(むしやま)だ。 テクノパークへの分岐を見送り、ライオンズゴルフ場の間の細い道を北上すると野呂谷地区に着く。この光背の 丘陵地一帯が武士山である。武士山とは珍しい名前だが、『播磨 山の地名を歩く』(播磨地名研究会編)によ ると田んぼの害虫の駆除と村々の悪霊払いをするために行われた「虫送り」の行事に由来する名前という。 野呂谷BSの背後に見えている丘が三角点のある武士山(247.4m)だが、もともとこの山一帯を指す名前 なら本当の最高点を踏んでおきたい。そのまま北上すれば、舞鶴道を眼下に見下ろす、変形四ツ辻に出る。ここ を左折、小さな峠部の左手斜面の上が標高277m武士山最高点である(9時05分)。 斜面を登って山の中に入ってみたがアカマツの枯れ枝が足に引っ掛かる何も無いただのヤブである。再び道路に 戻り周回コースで西から三角点のある武士山を目指す。
武士山最高点は左手の斜面の上武士山三角点はここにあります(左下)

地形図では道路の鞍部、崖マークの南側の少し離れたところに三角点があるが、実際は道路から三角点の方に簡 易舗装路が付いている。終点部にはこれまた何かの施設が建っている。三角点は建物の西側の草地の中に四方を 石で守られて鎮座している。三等である。 南西方向に目をやればどこまでも続く吉川の丘陵地帯が広がっている。北には虚空蔵山の南の山が三角錐の山容 をみせている。 交通量も少ないし、アップダウンの好きなサイクリストにとっては距離に応じてコースもいろいろ設定できる面 白いコースかも知れない。土曜日の足の疲れが残っている身にとっては少々ハードなコースだった。なんだか南 寄りの風も強くなってきたようだ。来た道を2kmほど戻り、テクノパークの中を走りいつもの三田市街地を通 って家路についた。   (本日の走行距離 81km) 2005年5月14日(土)今田・社/城山稲荷+北山(2.5万図 比延)  福知山線の脱線事故の影響で今、阪急を使って通勤している。電車の冷房でよく風邪をひくのでJRでは注意し ていたのだが、油断をしたか、阪急の冷房にやられて風邪をひき、水曜頃までは絶不調。なんとか盛り返したも のの当初予定コースを大幅に短縮して、上記コースに変更する。 今日目指す北山は旧今田町の和田寺山の西、西光寺山の南に位置する標高551.9mの山。社町の最高峰であ る。山頂に清水寺のある御嶽山は標高約540m。若干北山の方が高い。(社町の最高地点は西光寺山南西尾根 の約630m。またこの尾根の先には618.2mの三角点もあるが、どちらも西光寺山の尾根の一部であり、 最高峰とはいえない) さて、講釈はそれくらいにして、5時27分ロードで出発。日の出が早くなると共に目覚めが早くなるのは喜ん でいい事なのかどうなのか。とりあえずサイクリングにとってはよさそうだ。今朝も快晴、気温9℃と肌寒い赤 坂峠をまずまずのスピードで通過、6時51分に古市に到着する快走の勢いを持続し、7時15分登山口に決め ていた城山稲荷に到着する。
奉納タンク?義民 市原清兵衛の碑

城山神社と大きく書かれたタンクの前に着く。奉納タンクとは珍しい。横に「義民 市原清兵衛」の碑が建って いる。旱魃による農民の窮状を救うべく、寛政12年(1800年)酒造出稼ぎの解禁を江戸に直訴し、農民救 済に命を捧げた、市原村の清兵衛を讃えたものである。 更に進むと城山神社の鳥居が現れ、そこから城山の頂上まで赤い鳥居と階段が続いている。7−8分で拝殿が建 つ城山の頂上に着く。黄色い鳥居が目につく。 城山稲荷は永禄元年(1558年)波多野秀治の武将、小野原右京勝政が稲荷を城内に勧進して豊穣を祈願した ことに始まり、以降戦勝祈願の神や徴兵忌避の神、戦後は商売繁盛の神として信仰を集めている。
城山神社の鳥居 
ここから山頂まで赤い鳥居と階段が続く
城山稲荷本殿

さて、そんな事よりこの山から西へ北山まで尾根通しに縦走を考えていたので、数ヶ所あたりをつけてみたが、 どうも上手くいかない。この時季では葉も生い茂り、難渋しそうなのであきらめて、一旦山を下り、田植えをし ている地元の人に聞いてみたが、尾根にも道はないという。 仕方なく、市原の交差点まで戻り、南西に伸びる林道から関電の巡視路を辿って頂上を目指す事にする。
麗しの巡視路・・・
このまま山頂まで案内してくれるのか・・・
No89鉄塔からの眺め

林道を上っていくと間もなく右手に「火の用心」の巡視路入り口に着く(7時45分)。登り口こそ荒れてはい るが、すぐに気持ちのいい山道に変わり、10分ほどでNo90の鉄塔、更に10分でNo89鉄塔に着く。 ここで巡視路は北に下っていく。鉄塔西側のセメントで固められたよう壁を攀じ登り奥へと侵入を試みたが、ヤ ブで道らしきものがなく、諦めて、巡視路を北へと下り、小さな沢沿いに強引に登り社町との境界尾根に登る (8時15分)。 境界尾根ははっきりとした踏跡が付いている。すぐに498標高点を通過、道は西南西へと方向を転じる。50 0mほど進めばCa510コブに着く。地形なりに進めばそのまま南の尾根を下ってしまいそうになる。切り開 きはわかりにくいが、よく見れば北山山頂へ続く踏跡が西に続いている。一旦下って登り返せば北山山頂に飛び 出す(8時40分)。
北山山頂 三等三角点

雑木ヤブに囲まれた狭い山頂で、中央部に三等三角点が埋まっている。切り開きは北の神山峠に向って続いてい る。R372を走る車の音が聞こえてくる。狭い頂上で暫く休んでから下山にかかる。町界尾根とはいいながら、 界標の一つもなく、ともすれば消えてしまいがちな道である。 ピストンは嫌いだが、振り返るとどこから来たのか判らないくらい。ある意味新鮮なのでよしとするか。案の定、 少しづつ違うルートをとっている。それでも何とか踏跡を辿っていたようで、何とか498標高点のところまで 戻ってくると、No89鉄塔への分岐を確認し、只越坂へと下るコースをとる。 途中から雑木が生い茂り、腰をかがめて潜らなければならない箇所が増えてくる。獣道に迷いこんだかと錯覚し そうだがやがて只越坂に下りつく。 林道を700mほど戻ればロードをデポした「火の用心」の登山口(9時35分)。林道にどっかり座って休憩する。 今日もいい山歩きができた。さて、どこから帰るか。一旦今田支所近くまで戻ってコンビニで軽食を調達して腹 ごしらえ。エネルギー補給ができたところで東条川沿いに南下する。梅木峠を越え、丘陵地帯を抜けると大川瀬 ダム湖。西岸は昔走った事があるので、走った事がない東岸を走る。
大川瀬ダム湖にて

景色を楽しみながら大川瀬に下りつくと、そのまま吉川町へ。気がつくと持っていた地形図からはみ出している。 ゴルフ場が多いことから吉川はあまり走った事が無い。途中で細い道に入ったためどこを走っているのかわから なくなる。 “日本のフランドル”(と私が勝手に命名した)吉川は丘陵地帯ながら、ときどきとんでもない激坂が現れるの で要注意だ。とりあえず、集落の中の電柱を見ると「ブシヤマ」の文字が。 今月3日に走った武士山の西側にいるようだが、どの道を通ればこの前走った道に出るかわからない。ここと見 当をつけたところを走れば他人の家に行き当たる事3度。全く洒落にならない状態でおとなしく南下を続ければ 富岡へ。 県道を東へ走り先日武士山への上りで通った畑枝のバス停を通過。なんとか軌道修正は完了したようだ。あとは 三田市街方面を目指し、ダラダラ坂を上って高原病院前へ。もうここからはよく知っている道なので問題はなし。 しかし、気まぐれで帰路を変更してとんでもない目に遭ってしまった。おかげで85km程度のツーリングの筈 が100kmを超えてしまった。   (本日の走行距離102km) 2005年5月24日(火)能勢/三草山南東尾根(2.5万図 妙見山)  平日に休みを取るのは気持ちのいいものだ。朝から慌しく出勤するサラリーマン達を横目に、車の流れとも逆行 して緑濃い山へロードレーサーを走らせる快感はやった者にしかわからないものがある。 昨夜の雷雨もすっかり上がり、朝から快晴の予感。5時42分、仕度を整えてのんびりと走り出す。今日の目的 地は三草山から南東に伸びる府県界尾根。4等三角点のある上杉という山を中心とした尾根を歩くことにする。 空気が入れ替わったのか少し肌寒い。川西能勢口回りで県道を北上、紫合から下阿古谷、上阿古谷と走り、峠の 上り口で右に折れ、木喰仏が安置されているという毘沙門堂へ立ち寄る(6時45分)。今日はコースも短く寄 り道をする余裕がある。
毘沙門堂

ノアザミが咲き乱れる農道を少し山の中に入ったところに毘沙門堂はある。お堂には鍵が掛けられていて中には 入れない。閉じられた格子戸越しに覗くものの暗くてよくわからない。猪名川には木喰上人が晩年滞在したこと もあり、東光寺を始めとしてあちこちに木喰仏が残っている。久しぶりの木喰仏との対面かなわず、先を行く。 ワインディングの峠を上り詰めたら府県境。能勢は上杉地区に入る。稲荷坂への手前、道路が大きく右カーブす るところから農道に入り、ゆるい谷に沿って大きく西へカーブする簡易舗装の道を忠実に上っていくと尾根筋を 正面に見て行き止まりになる(7時15分)。
上杉地区の風景

その先は草深い山道に変わる。すぐに道は二手に分かれる。右の道は幅があり歩きやすそうだが、北の神山地区 へ抜ける道。左の背丈を超すササヤブに覆われた谷筋沿いの道を行く。地形図ではかなりの傾斜の谷に見えるが、 実際歩くとそんなに急ではない。 しかし、昨夜の雨でササヤブ道は“瑞々しい”状態。すぐに頭からバケツで水を浴びたかのような全身ずぶ濡れ に。靴の中まで浸水し気持ち悪い。手にしていた地形図もびしょびしょだ。ずぶ濡れヤブ漕ぎは5−6分で終わ り、『ゼフィルスの森』に入る。
ゼフィルスの森Ca440山から高岳

登り口から10分ほどで府県界尾根に達する。ゼフィルスの森は手入れされて気持ちのいい小径が続いているが、 そのまま辿ると去年2月にMTBで走ったコ−スに合流してしまう。府県界の境界杭を目印に、地形図を乾かし ながら尾根を東に辿る。 まずはCa440mピークに到着(7時30分)。能勢側は植林帯、猪名川側は雑木ヤブである。樹幹から展望 が広がる。高岳、剣尾山、横尾山・・・北摂の名峰勢揃いである。少し西に目をやると大野山まで見えるではな いか。早朝から贅沢な展望に満足する。 あまり長居をしていては行程が消化できない。先へ進む。府県界尾根が東から南へ曲がるあたりは去年の台風の 影響か、倒木地帯になっていて尾根を外さないように回りこむと、またしっかりした切り開きに変わる。
上杉の杉

さしたるアップダウンもないまま山頂付近が伐採されてすっきりした上杉(418.7m)に着く(7時43分)。 4等三角点は頂上より南東側に少し下ったところにあるようだが、切った木の幹や枝が当たり一面埋め尽くして いて結局どこにあるのかわからずじまい。 あきらめて先を行く。登り返してCa400mを過ぎたところから谷沿いに下って府道へ下る(8時05分)。 レーシングタイツはようやく乾いたようだ。まだ8時過ぎだ。1日が有効につかえて嬉しい気分。久しぶりの能 勢南部の山々との対面を楽しみながらゆっくりとデポ地に向った。   (本日の走行距離 71km)     織田(おりた)さんへのメールはbabrx800@jttk.zaq.ne.jpまで・・・。

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