山を駈ける風になれ2005年 9月号
2005年8月6日(土)家島/城山、飯盛山(2.5万図 真浦)
午後から所用で姫路へ出かけるので、ついでに家島へのツーリングを思い立つ。
いわゆる山歩きの対象になるような山はないが、真浦港からすぐのところに城主の居館跡が城山公園として整備
されているようなので、上手く巡れば12時までには姫路につけそうだ。
5時24分、ロードで出発。とにかく蒸し暑い。赤坂峠にある道路脇の気温表示は25℃を示している。まだ、
6時前だというのに。とにかく太陽が顔を出す前にどこまで距離を稼げるかが、その後の行程を左右することに
なりそうだ。
最初の1時間で26km、次の1時間で28km走って7時半には高砂市に入り、R250に乗る。ここからは
強い日差しとやたらと多い信号でストップ・アンド・ゴーの繰り返しとなり、ペースダウンを余儀なくされる。
飾磨港を8時50分に出る船に乗ればいいので、急ぐ必要はないが、さりとてそうのんびりもしていられない。
8時15分を過ぎる。そろそろ標識が出る頃かと思いながら走っていると、「姫路港」左折の標識。3年前小豆
島へ渡った時に通った道と違うことは覚えていたが、東側からはこの道が近道なのだろうと多寡をくくって走っ
ていくと、中島埠頭へ出てしまった。
対岸にフェリーが泊まっている。まずい、あっちか・・・。途中からパスできそうな道もなさそうだし、元の道
へ戻り、R436交差点で南に折れ、飾磨のフェリーターミナルに到着する(8時30分)。
“高速いえしま”の乗船券売り場を求めてターミナルの中を探すも見つからない。売店のおじさんに訊けば、入
り口の柱の後ろに券売機があるという。こんな“盲点”みたいなところに置くなよ、と一人ぼやきつつ切符を買
って、自販機で飲み物を買い、乗り場に移動する。
乗り場ではちょうど家島からの船が着いたところ。全員降りるのを待って、自転車をごろごろ押しながら桟橋を
渡り、船員に「自転車はどこに置いたらいいですかねえ」と訊ねる。車、バイクは家島に渡れないことは事前に
インターネットで調べていたので、自転車も少々不安。手荷物扱いで何とかならないかなと思いながら訊けば、
「運転室の前にでも停めて下さい」とあっさりOK(勿論手荷物料金は払った)。
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デッキにくくりつけて乗船OK |
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かくして、運転室の前のデッキにロープでくくりつけ、冷房の効いた客室へ滑り込む。ジャスト8時50分。
25分間の船旅スタート。乗り込んだ船は私を含めて乗客は僅かに7名。軽かったからというわけでもないだろ
うが、9時12分に真浦港へ到着。ロープをほどいて桟橋に降り立つ。家島本島初上陸。兵庫県下84番目の市
町村訪問(平成の合併が始まる前、91市町村ベースでカウント。自転車ツーリングで訪れたものに限る)である。
まずは、家島上陸記念に島内案内地図の前で写真を撮り、城山へのハイキングコースを確認する。“どんがめっ
さん”というカメの形をした岩の横から登れるようである。“どんがめっさん”はすぐに見つかった。何しろ島
内案内地図から直線距離で30mも離れていないのである。
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島内観光案内図 | どんがめっさん・・・亀に見えるかな |
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飛鳥の巨石遺跡を連想させるが、こちらは全くの自然石である。主人の帰りを待ち続けた亀が石になったとの伝
説を持つこの岩は、水天宮として祀られている。脇に石段があって、民家の横をジグザグに登っていけば、やが
て蝉時雨の山道となって大師堂に着く(9時24分)。ここが中世の苦瓜助五郎本道の居館跡、城山の山頂であ
る。すぐに登りきれるのは標高僅かに65mだから。
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真浦の眺め | 大師堂 |
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一息ついてから遊歩道を北に歩く。広場に出る。沖合いをいく船が見える。ここが飯盛山(61.8m)か。じ
りじりと暑いだけなので、すぐに坂道を下り、分岐のところで休んでいる老人をつかまえて訊けば、このあたり
一帯を飯盛山というそうな。「暑いのにご苦労さんな事で・・・」と言われる。違いない・・・。
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飯盛山頂上広場 |
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ぐるっと周回して戻ろうかと思ったが、舗装路歩きはつまらないので、来た道を引き返し、“どんがめっさん”
の横へ下る(9時38分)。山歩き終了。
舟の出航時刻は10時50分。20分前に桟橋に戻ってくるとして、あと小1時間ある。島内観光でもするとし
よう。完全ポタリング・モードになって宮地区方面へ走る。造船所のある真浦と漁船が並ぶ宮。目と鼻の先にあ
って好対照を成しているのが面白い。
砂浜で海水浴を楽しんでいる家族を横目に走る。この季節はやっぱり海か。宮地区を抜けると天神鼻、海に向っ
て開いた家島神社が現れる(9時47分)。
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漁船が並ぶ宮地区 | 家島神社石灯籠 |
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菅原道真が大宰府に流される途中立ち寄った辺りに建てられた神社という。神社の森は“天満霊樹”といって原
生林になっている。散歩でやってきた話好きの老人に捕まる。こちらも暑いのであまり移動もしたくないし、適
当に相槌を打っていると乗船時間が迫ってきた。なんとか話の切れ目を見つけて挨拶して船着場へ戻る。結局島
の南側へは回れずじまいで船に乗り込む(10時40分)。
行きと違って帰りはほぼ満席。乗客はみなお互い顔なじみのようだ。まさに島民の“生活の足”といったところ。
微笑ましく思いつつ旅行気分を味わっているとすぐに姫路港(飾磨港)に到着(11時15分)。あっという間
の小さな島旅であった。
(今回の走行距離185km)
2005年8月26日(金)宝塚−兎原個人的T.T.(2.5万図 宝塚、兎原他多数)
せっかくピークをはずして夏休みを取ったというのに、台風の接近等で天気が不安定、気を揉む日々が続いてい
たが、台風も小ぶりで関東方面へ行ってしまい、朝から絶好の天気が望めそう。どーんと走りに行く事にする。
午前5時28分、いつもより心持ち涼しげな空気の中、ロードで出発する。台風一過で風が気になったが、それ
ほどでもなく、まずまずいいタイムで赤坂峠をクリアする。
「よし、今日は栗柄峠までTTをやってみることにするか」
TT=タイム・トライアルである。ツール風に言うと CONTRE−LA−MONTRE INDIVIDU
EL (コントルラモントル・アンディヴィデュエル。個人タイム・トライアル)ということになるのだが、個
人的に個人TTをやっているので“個人的TT”といった方が正確だろう。というわけでデジカメはバッグの奥
底に沈める。
タイム・トライアルとはいっても秒まで計測したのでは、ストレスの元、なによりも信号無視をしてしまいそう
なので、分単位でいくことにする。こうすれば、結構気楽に走れる。
天上橋−道場間は快走ロード。最初こそ30km/h台前半で走っていたが、後半は40km/h台中盤までス
ピードをあげる。調子に乗って走っていると突然喉の渇きを覚える。そういえば出掛けに水を飲んでくるのを忘
れた。
気になりだすと益々水を飲みたくなる。いつもは古市まで水分を摂らないが、とてもそんなところまで持ちそう
にない。たまらず三輪交差点(三田)で自販機の前に自転車を停め、スポーツ・ドリンクを一気飲みする。う〜
ん、2分はロスしたかな。
改めて走りだす。いつものツーリング・モードに戻る。6時53分古市に到着。この時季にしては特に早くも遅
くもないスピードだ。ここでも休んでしっかり水分を摂る。
篠山盆地に入る。無風からやや追い風気味な風にも助けられて宮田を通過した頃には栗柄峠2時間07分ペース
にまで戻してきた。これまでの自己記録は昨年5月の2時間04分、気温が違うので単純比較はできないが、こ
の時は230km走っているので、とても及びそうにはない。
それでもいいペースを守って走れている。福徳貴寺前の坂をハイペースで上りきって谷中分水界の説明板が立っ
ている栗柄峠を目指す。
7時33分、30km/h台を維持したまま栗柄峠に到着する。所要時間2時間05分。自己記録に1分及ばず。
かなり暑くなってきた。当初予定では、このあと鼓峠から本郷、藤坂峠と多岐連山を周回して帰るつもりでいた
が、自己記録に1分差まで詰めたこともあって、兎原までタイム・トライアル区間を延長することにする。兎原
までは69.5km、これまでの記録は2時間31分だ。
まずはゆっくり目に鼓峠をクリア、本郷までは思いっきり飛ばす。兎原までは下り基調ながら上り返しも何度か
現れるが、下りの反動で上りきれる。のんびり走っているミニバイクをパスする。前方にR9分岐の標識が見え
てきた。7時59分、兎原到着。2時間31分、自己タイか。
帰りは東周り。瑞穂町方面へ向う。ここからはしばらく向い風と闘いながらの走りが続く。和田でR173に合
流すると一路南下。板坂トンネルを越え、今日一番の天王峠を上りきるともうヘロヘロ。泉郷峠を上る頃には殆
ど止まりそうなスピード、本当に足のある時以外はタイム・トライアルをするもんじゃないと改めて実感。
(今回の走行距離148km)
2005年8月28日(日)箕面/堂屋敷〜天上ケ岳縦走(2.5万図 広根)
F代と箕面連山をMTBで走る。MTBで走るのは4ヶ月ぶり、F代と走るのは8ヶ月ぶりだ。暑かった今年の
夏もようやく峠を越えたか朝晩は涼しくなってきた。
午前7時、川西能勢口で待合せ、道がすいていたとかでF代は既に車からMTBを降ろし組立て中、挨拶もそこ
そこにリア・タイヤをはめて走り出す(7時05分)。話は走りながら。F代はツーリング自体7ヶ月ぶりとか。
ウォーミング・アップを兼ねてゆっくりと余野川沿いを北上する。
五月山連山の西側を走るこの国道(R423)は、連山が日差しを遮ってくれるので結構涼しい。おまけに伏尾
を過ぎると両側に山が迫り、渓谷沿いの森林浴+マイナスイオン・コースに変る。空気が美味しいとF代。ロー
ディーが2人追い抜いて行く。
今度は対抗車線を下ってきた。挨拶をしてもらったF代、仲間と認めてくれたような気がして嬉しい、と感想を
洩らす。単なる会釈なのだが、誰しも初心者の時は嬉しいものである。そうこうしているうちに金石橋に到着す
る(8時04分)。
一息入れて高山に向う。部分的に斜度のきついところは出てくるが短いからと元気付け(になっているかな)る。
F代の凄いところはどんなにヘロヘロになっても下りて「押さ」ないことだ。その努力の甲斐?あり、高山の集
落に(8時25分)。
休憩を兼ねて切支丹禁止の高札場を案内する。
「え、ここで“こうさつ”をやっていたんですか?」
と驚くF代。“高札”を“絞殺”と勘違いしたらしい。そんなアホな・・・。
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高山へはあと少し | 箕面ダムに到着 |
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頑張って上ってきたご褒美、ここからは暫く下りが続く。箕面川ダムまでの下りである。これまでの最高速度を
更新したとはしゃぐF代。
ご褒美のあとは、再び苦行の上りが待っている。いきなりの急坂出現でギア・チェンジが間に合わずF代足を着
きそうになる。途中休憩を入れながらゆっくりと上る。それでもペダルを回していればピークに到達するという
もの、明治の森記念公園の横を通り、道は下りはじめる。
天上ケ岳へは少し下って、地形図の破線のハイキング・コースを行けばいいのだが、せっかく上ってきたのに下
って登り返すのは面白くない。おまけにちょうどよさげなところに林道入り口がある。ここからなら高低差20
mほどで、天上ケ岳へ続く枝尾根に乗れそうだ。
というわけで、「関係者以外立入禁止」の札が下がるロープをくぐって進入すれば、どうも先には菜園場がある
ようで、おじさんが作業をしている。こんなところに個人の所有地?いずれにしても見咎められればまずい。F
代を促して撤退する。
仕方がない。6月に登った堂屋敷山頂直下を走る関電の巡視路を使うことにする。500mほどバック、「火の
用心」の標識の横から、堂屋敷山頂真北の鉄塔まで標高差50m、一気にMTBを担ぎ上げる。ここには2基の
鉄塔が並んで立っている。
F代のMTBも担ぎ上げて本人を待つ。
「もう目の前が真っ白で、かなりヤバイっす」
マジで顔が“死んで”いる。下り始めればすぐに“復活”するのは、これまでの山歩きで承知しているので、と
にかく休憩を入れて、水分補給を十分に摂るよう勧める。
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堂屋敷直下の鉄塔 ・・・MTBは先着。F代の到着を待つ | ようやく被写体に応じられるまでに復活 |
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落ち着いたところで、山頂直下を東西に水平に走る巡視路を西に走りだす。100mほど西に同じように2基の
鉄塔が立っている。天上ケ岳に向うハイキング・コースへは、鉄塔手前を左に分岐する細い踏跡を行くとよさそ
うだ。
クモの巣に悲鳴を上げながらも踏跡は水平で乗車可能。やがてフェンスで囲われたさきほどのおじさんの菜園場
の裏を通って、ベンチの設置されたハイキング・コースに合流する(9時52分)。軌道修正完了。
F代もかなり復活、山道を走る図、の被写体になれるまでに戻った。
天上ケ岳目指して豪快なシングル・トラックの下りが始まる。乗車率はほぼ100%、下りの反動で天上ケ岳ピ
ークに着く(10時08分)。MTBをデポして南にある役行者坐像を訪ねる。南に大阪平野の展望が開けるコ
ブが役行者を祀っている所。
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もう、どうにも止まりません | 役行者の墓所だそうな・・・ |
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傍には、『この山頂は役の行者神変大菩薩が文武天皇の御代大宝元年(西暦701年)6月7日に昇天せられた
墓所であります。古来修験道の霊地、山伏の聖域につき清浄を保つよう留意御協下さい』と麓にある瀧安寺の説
明板が立っている。
「ここに埋まっているんですかね」
「さあ・・・」
半分伝説のような人物だ。どこで死んだかまでは知らない。像の横の石碑?を見て、「総て梵字で書いてあるな
んて珍しいですよね。」とF代、「島田さんがいたら翻訳してくれるんだけどな」と返す。私はというと役行者
よりも『サルを山に帰すための実験中に付き立入禁止』の立て札の方が気になる。
元のピークに戻る。北西方向に展望が開けている。目の前に大きく盛り上がるのは堂屋敷である。あの山を越え
てやってきたのだと説明する。
谷から吹き上げてくる風が涼しい。わずか500mの山なのに下界の暑さが嘘のように感じられる。
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あの山(堂屋敷)を越えてやってきました (天上ケ岳山頂にて) | もうどうにも止まりません(第2幕) |
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再びMTBに跨る。ここからのコースは言う事なし。30km/hで走り抜けられる“笑いが止まらない”快走
山道。慎重派のF代は超スローで段差をクリアしている。トライアルバイクやないんやから・・・。
あっという間に分岐に着く。自然研究路2号、と3号の分岐だ。MTBには3号路(左)の方がよさそうだ。更
にかっ飛ばすとまたもや分岐。ここはハイカーのおばちゃん達の勧めを受けて右へ。
F代が階段下りにチャレンジして転倒したようだが、元気に箕面自然教室に到着(10時57分)。山道走りは
これにて終了だ。ロードバイクに乗った人や、MTBで舗装路を上がってきた人達が沢山休憩している。F代の
顔に山道をこなした充実感が溢れている。
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コケても元気に走りましょう |
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よく頑張ったあとは“ご褒美”。箕面駅前まで一気の舗装路ダウンヒル。道路脇の縁石の上にいるサルにビビリ
ながら駆け下るF代であった。
(本日の走行距離 57km)
織田(おりた)さんへのメールはbabrx800@jttk.zaq.ne.jpまで・・・。
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