山を駈ける風になれ2005年 12月号

 
2005年11月3日(木)六甲/行者山(2.5万図 宝塚) 
行者山は阪急今津線逆瀬川駅の西約2.5kmにある標高415mの山。ハイキングマップにもルートが一切
記されていないこの山には以前から興味を持っていたが、わが家から近すぎることが災いしてか、訪れる機会
が無いままでいた。

そんな折、地元のコミュニティー誌に、この山にハイキングコースを整備している人の記事が紹介され、続報
で整備が完了(しかも4コースも)したという記事を目にするに及び、これは整備された方に敬意を表して一
度登らねば、とMTBを引っ張り出す。

6時12分、薄暗い中を出発する。晴の特異日だというのに今にも雨が降り出しそうな天気。お蔭で気温は1
5℃と暖かい。逆瀬川駅近くの自販機で水分調達を行い、そこからはひたすらの上り。20分かかってエデン
の園の前に到着する(6時41分)。
風邪薬を飲んで出てきた影響か、必要以上に汗をかく。スポーツドリンクを一口含み、一本北の筋に入り、東
端に進むとゆずり葉台コースの入り口。
ゆずりは台コース入り口

ダブルトラックの簡易舗装路が山に向って続いている。正面に譲葉山と行者山が見える。道はやがて地道の林 道となり、やがて六甲全山縦走路分岐に至る(6時58分)。 ここで既に標高365m、山頂までは標高差にして僅か50mだ。分岐を直進すればすぐに行者山への標識が 現れ、すぐに山頂に着く(7時06分)。
東六甲縦走路分岐行者山山頂

頂上には山名標が架けられ、そばにケルンもある。雑木に包まれて展望は無い。自宅を出て午前7時過ぎに山 頂に立てる環境というのはある意味素晴らしいことかも知れないなどと思いながら、朝の空気を胸いっぱい吸 い込む。 しばらく休んでから東へ山道を走る。乗車率ほぼ100%のシングルトラック。山頂部分を北からぐるっと回 り込んだ形で、山頂部東の展望ポイントに出る(7時20分)。甲山の向こうに大阪平野が一望できる絶景が 広がっている。
麗しのシングルトラック山頂東の展望ポイント

すぐ東に見えるコブが“行者山東観峰”だろう。“整備”とは言っても、もとからあった山道を整備しただけ なので、無理に付けた階段もなく、MTBにとってはこの上も無い極上のシングルトラックとなっている。
行者山東観峰

少し下って、ザレた岩場を担ぎ上げれば東観峰(7時28分)。標高383mと書かれた山名標、登山記帳箱 がある。名前のとおりここも抜群の展望である。紅葉の始まりかけた六甲の山々が美しい。
東観峰から行者山を振り返る紅葉始まる六甲

下山は逆瀬台6丁目コースへ。気持ちよく下っていると、下から散歩の人が上がってくる。挨拶を交わして通 り過ぎようとすると、「この先の崖を下りていかれるのですか?」と訊かれるが、既に半分走りかけていたの で「ええ」とだけ返事はして走り出したものの、半分不安が。確かに地形図にはどこから行っても崖マークが 付いている。ま、なるようになるさ。 心配は杞憂に終わったようだ。一部トラロープが垂らしてあるポイントも現れるが、大したこともなく小学校 の裏に出る(7時55分)。下山してもまだ8時前、1日が有効に使える。久しぶりの山走りに風邪も治った か。   (本日の走行距離 21km) 2005年11月5日(土)北摂/深山〜籠坊紅葉巡り(2.5万図 埴生、福住他)  紅葉深まる秋の北摂を楽しむ。 いつもは知らず知らずの間に時計と競争しているトレーニング・コース、当たり前のように走っているけれど、 これだけ身近なところに豊かな自然が広がっているのは贅沢な事。今日はのんびり走って、そんな美しい北摂 の秋の風景を写真で綴ってみたい。 朝から快晴、気持ちよく泉郷峠を越え、羽束川沿いに天王に向うと鮮やかな紅葉が目に飛び込んでくる。
羽束川上流(天王付近)にて

天王から北摂最高峰、深山に上がります。雨量レーダーはお色直し中でしたが、山頂はいつもの風景。北尾根 の雑木林もいい感じです。
快晴の深山山頂(深山宮)雑木林の紅葉(深山北尾根)

そしてここに上ってきたのはこれを見るため。園部、亀岡方面に素晴らしい雲海が広がっています。中央の山 は胎金寺山です。
園部方面の雲海(中央の山は胎金寺山)

深山から籠坊方面に下ります。見事なイチョウの木が見えてきました。籠坊稲荷のイチョウです。
籠坊稲荷の公孫樹

  渓山荘の前まで下ってきました。ここのイチョウも雰囲気が好きなんですが、黄葉にはあと一歩でした。
籠坊稲荷の公孫樹

  (本日の走行距離114km) 2005年11月12日(土)篠山/槙ケ峰山塊縦走(2.5万図 篠山)  第27回ヤブ山歩き。雲海と紅葉、秋本番の丹波路をたっぷり楽しもうという本日は、篠山盆地の南西部に三 角形定規形に広がる槙ケ峰山塊を東へ縦走しようという企画。4年前の納山会でも登った山だが、あの時はシ ョートコースで西へ下った。 本日の参加メンバーは4人。一昨日、由布岳、久住山系登山から帰ってきたばかりで最初からテンションの高 いミセスFとクールダウンばっちりの旦那FのF夫妻、ほぼ2年ぶりは弓の名手ミスB、そしてメンバー1の 元気娘トレックF代という面々。 昨夜の雨も上がり、すっきりいい天気になるかと思われたが、北に向うほどにどんより重たい空模様、9時1 7分に篠山口駅に着くとF夫妻がお待ちかね。挨拶もそこそこに出発する。 歩き初めこそ少し肌寒かったが次第に体も温まり、登山口の宇土観音に到着する(9時50分)。境内中央の 大イチョウはまだ黄葉していなかったが、本堂の背後のモミジは見事に紅葉している。ミスBの最新鋭デジカ メで一同記念写真。
紅葉が美しい宇土観音

境内でわいわい言ってると、われわれを参拝者と思ったお婆さん(住職のお母さん、今年90歳という)がや って来て弘誓寺(宇土観音の正式名)の故事来歴を語り始める。何せ1,300年以上の歴史を持つお寺だけ になかなか大変だ。ありがたいお話が終わった頃にはすっかり体も冷えてしまったが、槙ケ峰一帯に僧坊が立 ち並んでいたという往時を偲びながら登山道に入る(10時10分)。 朝方まで降っていた雨の影響で滑りやすくなった33箇所参拝道を注意しながら登っていくと、やがて山頂に 向う尾根筋に乗り、10時52分槙ケ峰山頂に到着する。山頂には槙ケ峰神社の祠が祀られている。ここが東 峰である。せっかくだから三角点のある西峰にも足を伸ばし、景色を堪能して縦走路に戻る(11時15分)。
槙ケ峰東峰山頂(槙ケ峰神社の祠)

しばらくははっきりとした踏跡が続いている。松葉が堆積したふかふかの絨毯ロードである。進路が北東に変 わったところで右に分岐が現れるが、そのまま直進すればCa440コブに着く(11時28分)。 道なりに北北西の枝尾根に入り込まないようにと思っていたが、枝尾根には踏跡は無く、主稜線をはずさない ように歩けば、399標高点の北300mポイントに着く(11時50分)。はっきりとした道とヤブが交互 に現れ、最近お子ちゃまコースが多かった当会も久しぶりに本格ヤブだと、誰からともなくそうした声があが る。
399山方面へ向う明確な山道

ここまで上手くトレースしてきたが、ここでミスコース。樹幹越しにえらく高い山が見える。とんでもない方 向に向っているのではないかと、“コンパス担当大臣”ミセスFに方向を確認すれば(何のことはない私以下、 全員コンパスを忘れ、かろうじて持っていたのがミセスF)、南だという。399標高点の北東の枝尾根を南 に下りかけているようだ。ここは一旦大きく下って東の山に登らなければならないところだ。 事前に地形図で一番気を付けなければならないところとマークしていたところだ。だが、谷を渡って東の山に 取り付く道はどこにあるのか。一旦、バックしながら東へ渡るポイントを探すことにする。先頭を歩いていた F代が 「これですかねえ」 とそれらしい分岐を見つける。間違いない。 「F代、クリーン・ヒットや。」 降り立ったところには南北に道の跡が残っている。近くには湿原のような浅い池がある。岩崎と真南条の集落 を結ぶ峠道の名残か。しかし歩かれなくなって久しい道はぬかるんでいるばかりである(12時10分)。
岩崎と真南条をつなぐ道(湿地帯がある)

踏跡が判然としない斜面を適当に登って主稜線に再び立つ(12時20分)。すぐにCa390コブに着く。 ここからは急に歩きやすい山道に変わり歩行が捗る。1時間くらい前からずっと腹が減ったといい続けていた F代は列の後に後退し、いつもは列の最後尾を歩くミスBがすぐ後を淡々と歩いている。 Ca400の分岐も難なく過ごし、最後の谷山(401m標高点)への登りにかかったところでF代が復活、 土塁の跡を何段か過ごして、見覚えのある谷山山頂に到着する(12時54分)。 1月積雪の中を登って以来だが、まだ記憶は鮮明に残っている。あの時はとんでもない“ボブスレー・コース” を逆走して一気に山頂に着いたものである。ここまでくればあとの道はわかっている。各自喉を潤したところ で、北に枝尾根を下る。 四季山と愛宕神社を祀った野中の集落が見渡せるビューポイントを過ぎたあたりを左に曲がれば法福寺に下り る道が付いていたが、と探しながら下るが見つからない。そうこうしているうちに目の前に“ボブスレー・コ ース”が現れる。 何だ、この山には1月に登ったコースの他にも“ボブスレー・コース”があったのか。ここまで下って来てい ることだし、一気に下山出来るので、ま、いいかと下り始める。後ろでは未体験のコースに悲鳴が上がってい る。 “全身ブレーキ、へっぴり腰”のF代に“右へ左へ幹にしがみつきながらフラフラ千鳥足”のミセスF(酔っ 払いか)。ミスBも一人クールにこけている。うちのメンバーはヤブには強いが、どうも激下りに弱い。それ でも、 「ここを整備してソリに乗ったらボブスレーできそうですね」 なんて言っている。やれるものならやってみれば。私はごめんこうむるけど…。
ボブスレー・コース?を下る

わいわい言っているうちに何とか“下界”に(13時20分)。よっぽど足に来たか、F代、イノシシ除けの 柵に足を引っ掛けてつんのめる。法福寺前の田んぼの横に下りてきた。久しぶりに舗装路に戻ってきたという 感じです、とはこれまたF代。 今日はヤブの連続に加えて、最後にボブスレーのおまけ付きという盛り沢山な内容。充実感か疲労感かはたま た放心状態なのか、いろんな表情が入り混じったメンバーを導いて、篠山の町へグルメに向った。    2005年11月13日(日)能勢/水宇古城山〜妙見山、奥の院(2.5万図 妙見山)  秋の能勢路を行くシリーズ第3弾は、能勢妙見山を中心とした山域を走ることに。 東京では木枯らし1号が吹いたいう。ここ北摂も放射冷却でこの秋一番の冷え込みとなった。今日は一段と 紅葉が美しいことだろうと6時11分出発する。 まずは、川西能勢口から猪名川を渡り、R423を余野川沿いに走る。道路の付け替え工事で一部新しくな った道を通り、金石橋の交差点に着く(7時11分)。ここを左折、出世大黒天の前を通って妙見山頂を目 指す。 いきなり急坂の連続、昨日のヤブ山歩きが堪えるところだが、ギアを39×24に落としてゆっくり上れば、 そう辛くも無い。対向車線を色白の兄ちゃんがスポーツ・タイプの車をタイヤをきしませながら駆け下りて くる。朝っぱらから騒々しい迷惑な輩だ。力の無い奴に限って車の性能に自分の力を同化させたがる。 そんなこともそのうち忘れ淡々と上っていると標高500mを超え、天台山の手前で右手に眺望が広がり、 気がつけば光明山の山麓を巻いて走っている。 まず、今日最初の立ち寄りポイントは水宇古城山だ。先日新版(といっても3年前に発行されたものだが) の2.5万分の一地形図『妙見山』を見ていると光明山の北約1kmのところに三角点マークが新しく付い ているのに気が付き、調べてみれば、点名『水宇古城山』という事を知る。名前からして山城の存在を窺わ せる。地形を見ても砦の跡のようである。 地形図では山の方に向って途中まで破線の道が付いている。光明山への登山口を過ぎて6〜70m行ったと ころに破線路はあるようだ。慎重にゆっくり走りながら探すが無い。気が付けば、妙見山参道分岐の手前ま で来てしまったようである。 一旦道路を外れて、何かの施設の前を通り、東に歩けば、ほぼ東に水宇古城山が見える。朝日を浴びてなか なかいい雰囲気を漂わせている。
水宇古城山

見当をつけたところで、来た道を戻っていくと、何のことはない、破線路分岐は光明山の登山口と同じとこ ろだ。10mほど光明山方面へ登ると、左に山道が分岐している。そのまま進むとNo17鉄塔。ここの眺 めもなかなかである。鴻応山の向こう、亀岡盆地は深い雲海に覆われているのが見える。   鉄塔の下を潜って斜面を下っていく。また山道が現れる。鞍部まで下り、そこから山道を離れ、斜面を登る と水宇古城山山頂に着く(7時58分)。 雑木が生い茂って展望は無いが、山頂部分は平坦で、山城の跡であることは間違いないようだ。砦にしては 結構規模が大きい。東の端に落ち葉に埋もれた4等三角点を発見する(527.04m)。かなりマニアな 山行をしている人もいるようで登頂標が1枚架かっている。
No17鉄塔から水宇古城山へ向う
写真右奥は鴻応山。雲海も
山城跡の気配残す水宇古城山山頂

頂上部をしばらく探索してもとの道に戻り(8時10分)、妙見山方面へ向う。府道4号線を野間口方面に 下る予定だったが、ついでに妙見山にも上ることに。思ったより上りが長く後悔しないでもなかったが、結 局道路に戻ってから10分後には妙見山三角点の横に立つ(8時20分)。 いつの間にか、『三角点こちら』の標識がうるさいほど立てられ、三角点の横には『三角点こちら』の標識 と柵が張り巡らされ、『柵内立入禁止』の標識が立っている。
能勢妙見山もついでに訪問

“三角点の場所は教えてやるから、むやみに寺の敷地内を歩き回るのは止めてくれ”といわんばかり。おか げでせっかくのブナ林も柵で隔てられて興醒めだ。そうこうしていると、『三角点こちら』の標識に導かれ てカップルがやってくるも、結局「三角点って何だ」とかいいながら戻っていく。 この標識は、結局わけのわからない人間まで呼び込んでしまっている。俗世間から離れた人の考えることは 理解し難い。 さて、妙見山をあとにする。妙見口まで下り、R423を柚原まで走って左折、長い下りの後だらだら上り 返して堀越峠に着く(8時55分)。ここから南へ向う林道は幅の広い地道だったと記憶していたが、何時 の間にか整備され舗装路になっている。 ま、ロードなので舗装路であることは幸いである。このまま妙見奥の院分岐まで舗装路を走り、最後の山道 の一登りは押して鞍部に到着する(9時07分)。
堀越峠
南へ伸びる林道もすっかり舗装されている
妙見奥の院と点名奥の院を結ぶ峠

ここを訪れるのは12年ぶりの事である。12年前は何の整備もされていない地道の林道だったが、今はモ トクロス・バイクの進入を防ぐためだろうか、擬木柵が付けられ、歩行者のみ通行可能なようにしている。 妙見奥の院は右(西)だが、今日は点名『奥の院』を訪ねて来たので左(東)へ。 人の手で付けられた明確な山道が続いている。登り口の時点で既に標高500mあるので、山頂との標高差 は40m、5−6分の距離である。山道が奥の院を巻くようになり出すところから山に取り付けば一投足で 奥の院山頂に着く(9時14分)。
監視所跡が残る奥の院山頂

山頂には直径5mくらいのレンガ造りの円形の建造物がある。深さは2mくらい。錆びた鉄製の梯子が架け られている。それとは別に内側に2箇所鉄製の手すりのようなものがはめ込まれている。 監視所の跡らしいが、ここに入って何を監視していたのだろう。今でこそ樹木に覆われ、鬱蒼とした森だが、 戦時中は野山に木が無く、敵機襲来を一早く知ることができたのだろうか。ところで三角点はこの監視所跡 から2mばかり西の山頂隅に埋まっている。4等である。 6―7分かけてさきほどの鞍部に戻り、ロードを担いで林道を下る。いつからシクロクロスになったのか。 2kmほど歩いたところで、舗装路の林道大原奥の院線に出る。あ、妙見奥の院で監視所の事を訊いたらわ かったかも知れない、とこの時気がつくがあとの祭り。 紅葉美しい能勢の山里をゆっくり流しながら走っているうちにそんなこともすっかり忘れる。気が付くのは 遅いが、忘れるのは早い。頭の中も秋風が吹いているようだ。   (本日の走行距離 76km) 織田(おりた)さんへのメールはbabrx800@jttk.zaq.ne.jpまで・・・。

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